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「子どもを殺してください」という親たち(押川剛著/鈴木マサカズ画、新潮社)は、精神障害者移送サービス業を描いています

「子どもを殺してください」という親たち(押川剛著/鈴木マサカズ画、新潮社)は、精神障害者移送サービス業を描いています

「子どもを殺してください」という親たち(押川剛著/鈴木マサカズ画、新潮社)は、精神障害者移送サービス業を描いています。統合失調症などの子弟を、説得で病院に移送するサービスを日本で初めて創始。移送後の自立・就労支援にも携わっています。

本書は、2015年に上梓された同名のノンフィクションを漫画化したものです。

全11巻です。

5巻までは、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

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“説得”による「精神障害者移送サービス」

『「子どもを殺してください」という親たち』は、押川剛さんの原作ノンフィクションを鈴木マサカズさんが漫画化し、新潮社から出版されています。

押川剛さんは、警備会社を創業しましたが、統合失調症に苦しんでいた従業員やその家族に何もしてあげられなかった経験から、“説得”による「精神障害者移送サービス」を日本で初めて創始したそうです。

移送するだけでなく、その後の自立・就労支援にも携わるそうです。

「精神障害者」としていますが、マンガに登場するのは発達障害ではなく、家庭生活で親から追い詰められてそうなった「心の生活習慣病」とでもいうべき状態の人々です。

統合失調症、アルコール依存症、自己愛性人格障害、パニック障害、鬱病など、長年の歪んだ生活で精神を病み、世間と切れ、ときには暴力も伴う子弟の扱いに困った両親が、病院への移送を押川剛さんに依頼します。

押川剛さんは、警察や病院、役所への相談なども立会い、子弟の入院や、自立・就労するまでのサポートを行っています。

結論を述べますが、全話、両親に原因がある話ばかりです。

例外なく毒親であり、世間体を気にして子どもファーストではない人たちです。

子どもは追い詰められてそうなっているのに、親はそう考えず、手に負えなくなったら「殺してくれ」とまで相談するのです。

「弁護士になれ」と追い詰められて統合失調症になった第1話

本書第1巻は、冒頭から「犯罪の質」と著者の仕事について言及しています。

殺人事件摘発件数のうち、被疑者と被害者の関係が親族間である割合は全体の55.0%。
未成年者の殺人事件は約10年前とくらべて減少傾向にあるが
家族を被害者とする殺人事件は増加しており全体の約半数を占めている

重度の統合失調症やうつ病
強迫症やパニック症といった精神疾患

不登校や無就労などのひきこもり
薬物やアルコールなどの物質使用障害

ギャンブル・ネット・ゲームなどへの嗜癖
ストーカー DV 性犯罪

精神科医療とのつながりを必要としながら
適切な対応がとられていない子供たち

そういった子供をもつ親からの依頼で
対象者を説得し医療につなげる

それが(株)トキワ精神保健事務所の業務である

そして以降は、著者の押川剛さんが経験した「精神科医療とのつながりを必要としながら適切な対応がとられていない子供たち」の実態を描いています。

たとえば、第1話。

いきなり、全裸でバットスイングをする21歳の青年が登場します。

相談に来た母親の左頬には、傷にあてるガーゼとテープが。

青年は法学部に入れる成績だったものの、受験を前にして成績が急降下。

法学部には入れませんでした。

青年の両親は弁護士のエリート一家。

青年の将来は弁護士と、両親から決めつけられていました。

他学部に入学した直後、大学を休んだので母親が部屋を除くと、青年は教科書を逆さまに読んでいました。

そして、突然「これからは中国だっ!!」と叫び、そのまま大学は休学。

この時点で、心療内科では統合失調症の診断が下っていました。

突然「歌手になる」と言い出して金髪に染め、母親に何百枚もの写真を撮らせたり、数十万もするサンドバッグを購入させ、それを殴っている姿をわざと見せつけたりしました。

母親は、身の危険を感じて包丁をタオルで包み、引き出してのお気に隠して寝たものの、翌朝にはタオルを外した状態でテーブルの上においてあったことも。

そして、ついにはバットで飼い猫を撲殺。

病院に移送するのは、あくまでも青年の意志で言ってもらいたいとする押川剛さんは、母親には狂器となり得るものを隠すように指示して、当日はスタッフに様子をビデオカメラで撮影させます。

今後の治療や人間関係の構築など、あらゆる状況に備えて、対象者とその一部始終を記録します。

押川剛さんは、青年を呼び捨てにして上下関係を示します。

すると、青年は押川剛さんに大人しく従いました。

しかし、3ヶ月入院しても状況は改善せず。

押川剛さんは一軒家を借り、青年や境遇の似た若者を受け入れ共同生活させました。

すると、青年は脱走。

押川剛さんは、行く先が両親の住んでいた家だとすぐにわかり、先回りして待ち伏せます。

そもそも、そこには両親はすでに住んでおらず、青年を恐れ、青年とは暮らせないと引っ越していました。

その後、青年は就職したものの、職場で暴行事件を起こして逮捕。

押川剛さんが身元引受人になって執行猶予となったものの、すぐに再犯して実刑となってしまいました。

青年は、出所して精神科病院へ移るも妄想を口にするようになり、両親は1度も面会に来ないそうです。

本書に登場する毒親は実はあなたかもしれない

毒親について話題にすると、多くの親は、自分とは関係ない特別な「鬼畜」とレッテルを貼ります。

では自分はそうではないのかというと、子どもに暴力を振るっても「それは愛情があるからだ」、進学でプレッシャーをかけていても「子供の将来をあんじているからだ」と言い張ります。

しかし、その「愛情」は、自分の思いどおりにさせたいという自分への「愛情」ではないのですか。

「将来をあんじている」のは、子供に対してではなく、自分の外聞ではないのですか。

もちろん、客観的に明明白白な虐待はだめですが、かりにそれとは違っていたとしても、親ファーストの親子関係の結果は、本書に出てくるような問題につながるのです。

つまり、子を追い詰める毒親かどうかには、明確な線引などなく、親なら誰でも間違えばそうなり得るのです。

その覚悟をもって本書を読むと、自分の心へのリアリティはいっそうましてくるでしょう。

以上、「子どもを殺してください」という親たち(押川剛著/鈴木マサカズ画、新潮社)は、精神障害者移送サービス業を描いています、でした。


「子供を殺してください」という親たち 1巻: バンチコミックス – 押川剛, 鈴木マサカズ


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