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『母になりたい』は、ハラーマン・ストライフ症候群の女性が、手術を繰り返しながら生き、結婚し、子どもを生み育てる話です。

『母になりたい』は、ハラーマン・ストライフ症候群の女性が、手術を繰り返しながら生き、結婚し、子どもを生み育てる話です。

『母になりたい』は、ハラーマン・ストライフ症候群の女性が、手術を繰り返しながら生き、結婚し、子どもを生み育てる話です。『難病が教えてくれたこと8~失われてゆく記憶~』(なかのゆみ著、笠倉出版社)に収載されています。

ハラーマン・ストライフ症候群は、身体と頭蓋の構造、そして毛髪の伸長に関係する疾患です。

低身長や発育不全、小眼球、薄い頭髪や体毛、白内障や緑内障による視力の低下など、先天性の症例を特徴とし、眼・下顎・顔症候群(oculo-mandibulo-facial syndrome)ともよばれます。

原因となる遺伝子異常はわかっていません。


「低身長や発育不全」であるがゆえに、子ども時代だけでなく、成人してからも生きづらさは続きます。

たとえば、女性なら妊娠。

体が大人のそれになっていないと、子宮も大きくならないので、十分に赤ちゃんが大きくならないから子どもを産めないとか。

まさに、それをテーマとしたのが、今回ご紹介する『母になりたい』です。

ハラーマン・ストライフ症候群の疾患を生まれながらに持って生まれた女性が、相手の両親の反対を受けながらも結婚しますが、妊娠出産を巡る葛藤。

結論を述べると出産するのですが、その苦労や周囲の心配とリスク、そして中傷を丹念に描いています。

『難病が教えてくれたこと8~失われてゆく記憶~』(なかのゆみ著、笠倉出版社)に収載されています。

本書は2023年1月19日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

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やってみなきゃ、わからない

扉には、「愛する夫の子どもを生みたい!!」というサブタイトルと、主人公の夫婦が描かれています。

そして、ハラーマン・ストライフ症候群の当事者女性は帽子を被っています。

夫の名は洋平、ハラーマン・ストライフ症候群の妻の名は名美です。

洋平は、名美との結婚を自分の両親に告白しますが、両親は反対します。

「あの子と結婚したいだと!?冗談だろ!?洋平!!子供の頃の同級生で仲が良いだけだろ。結婚相手はほかにいくらでもいるだろ」

「お母さんも反対よ!!相手が名美ちゃんなんて。名美ちゃんに子どもが作れるの。それ以前に普通に暮らしていけるの」

いきなり毒親ぶり全開です。

いや、別に難病や障害のある人と結婚することに反対したからではありません。

子供の人生は子供のものであり、いちいち反対することが、相手にかかわらず毒親なのです。

ましてや、「子どもが作れるの」は論外。

お前に何の関係がある、という話です。

子どもが出来ても、それは夫婦の子どもであり、この両親の所有物ではありません。

勘違いすんなよ。

洋平は、ここは頑張りました。

「子供の頃から、何でも言うことを聞いてきたけど、結婚だけは好きな人と一緒になるからね!!」

何でも言うことを聞いてきたということは、やっぱり子どもを支配したがる毒親だったんですな。

「お母さん、そんな結婚認めないわ」

「認めてくれなくっていいよ。オレ、アパート借りてここから出ていくよ」

すばらしいことです。

「洋平、頭を冷やしなさい」

冷やすのはどっちだ!

一人暮らしとなった洋平に、名美が尋ねます。

「洋ちゃんは、私のどこがいいの」

「強くて優しいところかな。オレが小3の時、怪我した猫を抱いてたら声をかけてくれただろう。」

「うん。洋ちゃん、公園で泣いてたね」

目から血を流している猫を抱いている洋平が、「お母さんが公園へ捨ててこい」と言ったといいます。

名美は、自分のお年玉貯金で動物病院に連れていき、猫を飼っていいか自分の母親に頼んで見ると言いました。

名美は、自分の母親に頼みこみます。

「この猫片目が見えない野良猫よ」

「私だって右目が見えないわ。左目だって0.3よ。でも生きてるじゃない」

「え、そんなに目が悪かったの」と、洋平は驚きます。

「うん、病気のせいよ。ハラーマン・ストライフ症候群というの。原因不明らしいわ。体力もないし、すぐ疲れるから、せめて明るく元気にしてようと思っているのよ」と名美。

そのときから、洋平は名美のことが好きになったという。

「その言葉だけで嬉しいわ。でも私、だんだん目が悪くなっているのよ」

「オレは名美ちゃんと、いつもいっしょにいたいんだよ。毎日その笑顔が見たいんだよ。たとえ失明しても、名美ちゃんは笑顔でいてくれると思うよ」

ということで、2人は結婚します。

式に、洋平の両親は出てきません。

愚かな両親です。

「私は式なんてあげなくていいと言ったんだけど、洋ちゃんが『一生に一度だし、名美ちゃんの両親に花嫁姿を見せてあげないとダメだ』って言うから」

「あちらの両親が出席してくれないのは残念だけど、こんな日が来るなんて嬉しいよ」と名美の両親。

式が始まり、名美の慎重が低いことに、出席者は驚きます。

1年後、名美は妊娠。

もし、ネット掲示板で取り沙汰されたら大炎上するでしょうね。

子どもができない人の嫉妬と、誰かに居丈高にお説教したいうだつの上がらない大衆が黙ってないでしょう。

名美の両親も「だめよ」と反対します。

ただし、こちらは、名美の身体と生命をあんじてのことです。

「心臓や肺、消化器系の機能も人より弱いのよ。わかってるでしょ。孫より娘の命のほうが大切よ」

「病院の先生や洋ちゃんにも同じことを言われたわ。でも、子供がほしいってわがままなことなの?私に奇跡が起きたのよ。『産んでもいい』と言ってくれる病院を探すわ。やってみなきゃ、わからないじゃない」

「もし、生まれる子に障害があったらどうするの?」

「私だって障碍を持ってるわ。お母さん、私が生まれてがっかりしたの?」

そう言われると、母親は何も言えません。

夫婦の間でも、同じようなやり取りの結果、受け入れてくれそうな病院を1ヶ月にわたって探しました。

「今、妊娠17週目です。あちこちの病院で出産することを断られました。何があっても訴えたりしません。助けてください」

「身長120センチでは子宮も小さすぎます。限界を超えたら子宮が破裂します」

名美は、その時は帝王切開で対応してください、やるだけやってダメなら諦めます、と食い下がります。

あまりの熱意に、医師が折れて了承。

妊娠中、静かにしていると、洋平の母親が様子を見に来て、妊娠していると知ると、中絶しろと力尽くで名美を引っ張り、名美はその勢いでテーブルに腕をぶつけて骨折してしまいますが、赤ちゃんのため、麻酔を使わずに治療を受けます。

もちろん、洋平の母親のことは一切言いません。

それにしても、名美は妊婦なのに体重が増えません。

子宮が大きくなって内蔵を圧迫しているため、食べても吐いてしまうのです。

医師は、アイスでもいいから口に入れるよう指導。

子宮収縮抑制剤の点滴をうち、なんとか30週までお腹の中で頑張れるように処置しました。

お腹の中の子どもは男の子。

名美の体が小さいのでおさまりが悪いのか、逆子だといいます。

それでも、お腹の中で動いているのを見ると、名美も洋平も、無事生まれてほしいと願わずにはいられません。

限界まで頑張り、帝王切開で出産。

1520gで生まれた赤ちゃんは、羊水が入ったままの仮死産でしたが、自発呼吸をはじめて危機は脱しました。

退院後、名美は薬の後遺症で緑内障の手術をしました。

出産後、名美夫妻は名美の実家で過ごすことに。

半年後、洋平は両親に、息子の写真を送ります。

私だったら、送らないけどな(笑)

愚かな両親はまず、洋平が名美の実家で暮らしていることについて、「洋平は婿養子になったのか」などとくだらないことを心配しています。

もう、気は確かですか、と。

そんなことどうだっていいし、もしそうならどうなんだという話です。

お前ら、旧家か、皇室か。

ありふれた大衆が、民法が変わったのに「〇〇家」にこだわって滑稽です。

もし、この夫婦に子どもがいなかったり、娘だけだったりしたらどうなのか。

洋平が息子であるばかりに、道端に転がっている犬の糞のごとくありふれた姓まで守れと押し付けるのか、この親はどこまで息子に枷をはめるのだ、と思います。

「洋平の息子よ、かわいい。洋平、まさか婿養子になったんじゃないわよね」

「孫の姓は碓井だ。子育てで同居しているだけだろう。結婚を反対したんだ。会いに行く訳にはいかないな」

まだ父親の方が、わかっていますね。

筋通せよ、猛毒母。

4年後。

名美母子は公園を散歩しています。

息子の勇輝は、公園の缶を拾っています。

すると、あろうことか、そこに猛毒母がー。

「みっともない、小遣い稼ぎなの?」

うっ、こいつ挨拶もせずにまた……

「あ、お義母さん。おばあちゃんよ、お父さんのお母さん」

「こんにちは。ゴミを片付けると、みんなほめてくれるよ。家に帰って、ゴミの日に分けて出すんだよ」

「えっ、ゴミ拾いをしてたの?」

「おばあちゃんは何が好きなの?ママと一緒に夕飯作るから、食べていってね」

マンガでは、息子が、名美と義母の距離を縮めてくれてハッピーエンドとしています。

ま、私的には、こういう母親は生涯許してはならないと思いますので、結末だけチョッと不満です(笑)

希望を簡単に諦める必要はない、という話

今回の話は、荒唐無稽な創作ではありません。

ハラーマン・ストライフ症候群と戦いながら、「子どもを生みたい」と熱望する34歳の女性の話がテレビに取り上げられ、話題になりました。

輝く命Ⅱ ~衝撃の運命と家族の愛~ :テレビ東京

とはいえ、人によってコンデションその他の事情がありますから、すべてのハラーマン・ストライフ症候群の女性が子どもを埋めるというわけではないし、もちろん子どもを産まなければならないというわけでもありません。

ただ、希望を簡単に諦める必要はない、という話です。

『難病が教えてくれたこと』(なかのゆみ、笠倉出版社)は、全17冊にわたって難病や障害と向き合う家族を描いた短編マンガ集です。

『難病が教えてくれたこと』(なかのゆみ、笠倉出版社)は、全17冊にわたって難病や障害と向き合う家族を描いた短編マンガ集
『難病が教えてくれたこと』(なかのゆみ、笠倉出版社)は、全17冊にわたって難病や障害と向き合う家族を描いた短編マンガ集です。人間はいつ誰がそうなるかわからないし、そうなってもおかしくない。そんな厳しい人生の偶然を考えさせてくれます。

全17冊にわたり、認定されている難病、まだ認定されていない難病、そして障害などと向き合う家族の話を描いています。

一話完結で、1冊あたり3~5話が収録されています。

本書が話題にしたものだけでも、これだけあるのです。

世の中には、この何倍も難病や障害があります。

知らないばかりにその人を誤解していた、ということもあるので、こうした物語は理解を助けてくれます。

全17巻で完結と言わず、続編に期待したいと思います。

以上、『母になりたい』は、ハラーマン・ストライフ症候群の女性が、手術を繰り返しながら生き、結婚し、子どもを生み育てる話です。でした。


難病が教えてくれたこと8~失われてゆく記憶~ (家庭サスペンス) – なかのゆみ

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