あっと驚く科学の数字(数から科学を読む研究会著、講談社)は、サイエンスライター、サイエンスコミュニケーター7名による科学ネタの話をまとめたものです。『最新宇宙論から生命の不思議まで』というサブタイトルの通り、“知的な居酒屋ネタ”といった趣です。
『あっと驚く科学の数字』は、数から科学を読む研究会が著者として、講談社から上梓されたブルーバックスです。
ブルーバックスというのは、講談社が、自然科学や科学技術の話題を一般読者向けに解説・啓蒙している新書のシリーズ名です。
1963年創刊で、Wikiによると2022年時点でシリーズの数は2200点を超えるそうですから、大変な実績ですね。
本書はその一冊です。
数字を使ったタイトルが並ぶ
本書『あっと驚く科学の数字 最新宇宙論から生命の不思議まで』はタイトル通り、化学、医学、宇宙物理学などで解明された、地球や人についての様々な話を、科学ライターの執筆と諸分野の研究者の協力により、数字を導入として紹介しています。
何しろ、著者名の「数から科学を読む研究会」とは、日々奮闘するサイエンスライター、サイエンスコミュニケーター7名が、本書のために結成した会だそうです。
科学技術の最前線、研究の意義や面白さを読者にわかりやすく伝えるべく、“知的な居酒屋ネタ”のような構成で、わかりやすく科学の不思議が数字を使ってまとめられています。
本書の目次を見ていくと、数字を使ったタイトルが並んでいます。
「宇宙の地平線」までの距離は470億、
宇宙全体で観測可能な物質の割合は4.9%、
太陽の中心を出た光が地球に届くまで1000万年、
地球上の生物の種類は174万種、
最後の氷河期が終わったのが1万年前、
日本人が一生の間に排泄する糞便の量は5トン、
蘇生可能な最低体温の記録は13.7度、
人間の体内に住んでいる細菌の数は600兆……
など。
といっても、トリビア的に数字を知ってもらえばそれでいいという紹介の仕方ではありません。
あくまでも数字は導入で、中の文章は関連する話題についてじっくり書いています。
日本人が一生の間に排泄する糞便の量は5トン
たとえば、「日本人が一生の間に排泄する糞便の量は5トン」というのは、日本人の1日あたりの排便は約200グラムであり、80年生きるとしてその合計が5トンという話です。
これは戦前の400グラムを下回っているそうです。
なぜそれほど少なくなったのか。戦前の日本人は、1日平均30グラムの食物繊維を摂っていたのに、現代はその半分の15グラムしか摂っていないのだそうです。
この数字は欧米人の80~120グラムに近づいており、食生活の欧米化の影響を見て取れると著者はいいます。
何の栄養にもならない不消化物の食物繊維が、健康上多くの利点を持つという説は、ウガンダ人の排便量が470グラムと欧米人に比べて多いことがわかり、また欧米人に比べて、大腸がんや糖尿病、肥満、胆石、痔、便秘などが少ないことがわかったこと(1974年)に始まっているといいます。
また、日本人は腸が長いといわれてきましたが、つい最近の2013年に、日本人、アメリカ人650人ずつを大腸3D-CT検査で調べた結果、日本人の平均が154.7センチ、アメリカ人が158.2センチで、実は大差なかったという新しい説も紹介しています。
人間の体内に住んでいる細菌の数は600兆
「人間の体内に住んでいる細菌の数は600兆」というタイトルも興味を引きました。
よくいわれるのが、人間の細胞の数は約60兆という数字ですが、ちょうどその10倍もの細菌が体内に住み着いているわけですね。
「腸内フローラ」サプリメントで自閉症や糖尿病は予防できる?
最近は、腸内フローラという言葉が、検索キーワードとして急上昇するほど、腸内細菌が注目されています。
人間の健康を司るのは実は腸である、という話ですね。
その腸内細菌は、指紋のように個人を特定すらできるのではないかと思われるほど人によって様々で、どんな要因でその人の持つ腸内細菌が最終的に決まるのかは、まだわかっていないそうです。
このように本書は、数字だけでなく、中の読み物自体が、既説、新説を織り交ぜ紹介されているのです。
科学は「わからないこと」があるから存在する
ところで、私がこの『あっと驚く科学の数字 最新宇宙論から生命の不思議まで』を知ったのは、『日刊ゲンダイ』(6月8日付)に出ていた森永卓郎さんのレビューでした。
森永卓郎さんの着眼点は、私はいつも理解を助けられています。
そこで、今回も森永卓郎さんの価値観なら共鳴するところがあるだろうと思い、本書を読んでみました。
『優雅な暮らしにおカネは要らない』必要なのは教養と生きがい
森永卓郎氏は、具体的に同書のどこが面白かったかを書いています。
森永卓郎さんは、このことをもって「何という訳の分からなさだろう。でも、科学はこうだから楽しいのだ。森羅万象すべてが分かってしまったら、科学する心など、吹き飛んでしまうだろう。」と述べています。
要するに、科学は、「ここまではわかっている」という既知の大系ですが、別の言い方をすると、「わからないこと」があるからこそ科学は存在する、ということもいえるわけです。
森永卓郎さんは、本書の内容について、居酒屋でのネタにすることを奨めています。
酒席での話題。引き出しを増やして、たまにはこうした話で周囲を「ほーっ」と思わせるのもいいかもしれませんね。
以上、あっと驚く科学の数字(数から科学を読む研究会著、講談社)は、サイエンスライター、サイエンスコミュニケーター7名による科学ネタ、でした。
あっと驚く科学の数字 最新宇宙論から生命の不思議まで (ブルーバックス) – 数から科学を読む研究会
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