いらない保険生命保険会社が知られたくない「本当の話」(後田亨/永田宏著、講談社+α新書) は、医療保険加入の「無駄」を説いています。保険商品にお勧めのものはないとして、「保険のプロほど保険には入らない」と述べています。
その保険、本当に必要ですか?
これが本書のテーマです。
『いらない保険生命保険会社が知られたくない「本当の話」』は、後田亨さんと永田宏さんによって、講談社+α新書から上梓されています。
この記事は、Kindle版をもとにご紹介しています。
私は昔、損害保険会社の東京海上火災で仕事をしていて、『生命保険のウソ・ホント』という本も出したことがありますから、保険業界の仕組みも、保険商品もある程度はわかります。
その一方で、保険契約者として、たびたび多額の保険金を支払っていただいた経験もあるので、本書の書かれていることはよくわかるし、一方で、それでも保険に入りたい人の気持もわかります。
私の場合は、損保でしたが、保険を売っていたときにお客様から言われたのは、「保険はお守りみたいなものだから」ということなんですね。
入っておけば気持ちが落ち着くという。
ただ、お守りとして妥当な価格なのかどうかというのは、保険とは一体何なのかを正しく知ることにょって判断したほうがいいと思うのです。
それには、本書は大変ためになります。
医療保険、がん保険のからくり、介護保険などについての説明が書かれています。
共済や、妥当な死亡保険の保険金額なども言及されています。
本書は2023年3月8日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
民間保険におすすめはない!
本書にはこう書かれています。
民間保険におすすめはない!
後に書くように、世の中には私のような不運の罰ゲームを消化するような人生もありますから、保険は全く無意味とはいえないと思います。
ただ、マスで見ると、そういうことになりますね。
なぜなら、保険会社は慈善事業ではありません。
宝くじと同じです。
宝くじは、掛け金すべてが還元されるわけではありません。
胴元の取り分の割合を控除率といい、宝くじの場合は控除率が約55%になります。
つまり、宝くじを買った人に対しては、実は半分も返ってこないのです。
保険も同じで、保険会社の取り分というのがあります。
私が働いていた東京海上という会社は、私の頃は人気ナンバーワン企業でしたが、それはなぜかといえば、給料が高いからです。
その金はどこからでているんだ、といえば、当然顧客の支払う保険料です。
損保会社は株式会社ですからね。
お金をかけた研修、きれいなオフィスとデスク、その点では居心地の良い会社でしたよ。
でも、それって、保険料なんですよね、財源は。
本書は、医療保険はどうしても入らなければならない保険ではないといいます。
なぜなら、国民皆保険制度が確立している我が国の医療費は、健康保険で1~3割の支払いでいい。
しかも、高額医療還付制度があるので、多額の支払いがあると、一定額以上は戻ってくる。
さらに、高額療養費の現物支給という制度を利用すれば、そもそも多額の支払いの必要がなく、自己負担限度額までとなります。
ざっというと、手術などして50万ぐらいかかっても、サラリーマンなら15万円。
高額医療還付で、15万円払っても後で7~8万円戻る。つまり実質的な支払いは7~8万円。
そもそも高額療養費の現物支給を使えば、最初からその7~8万円の支払いで済む。
そういうことです。
あ、今の具体的な数字は、イメージで掴んでいただく仮のものですよ。
医療保険に加入するお金があるなら、そういう時の支払いに貯めておけばいいわけです。
手術給付金がつく保険もありますが、腹腔鏡や内視鏡などの技術が発達して、開腹の割合が減ってきているから、そんなにたくさんはもらえない。
しかも、入院日数も減ってきていると本書では言います。
でも保険て、終身などはとくにそうですが、加入時の保障がずっとつづくわけですよね。
10年後には、医学医療はさらに進化して、保証内容自体が陳腐化してしまうかもしれませんよ。
本書にもこう書かれています。
あとひっかかるのは、高度先進医療の特約でしょうね。
医療保険、がん保険には、高度先進医療が何百万かかってもそれを賄うための特約があります。
本書では、それについて「一種の人体実験」だといいます。
つまり、高度先進医療自体を否定しています。
ただ、がん4期だった村野武範さんが、それで救命されたり、樹木希林さんが延命されたりなど、無意味なものともいいきれません。
私の考えですが、本書にも書かれているように、都道府県民共済など、より安い掛け金の商品にも高度先進医療は保障されているので、そちらに切り替えるといいかも知れませんね。
都道府県民共済は、1口2000円程度で、年度の終わりに、会計を明らかにして、余った分は加入者に戻してくれますよ。
後に書きますが、私はコロナになった時、都民共済から支払っていただけましたよ。
損保使いまくりの私も医療保険は……
保険というと、大きく分けて、火災保険や自動車保険などのモノ保険と、生命保険や医療保険などのヒトへの保険があります。
以前は、前者を損害保険会社、後者を生命保険会社が売っていました。
損保についての話は、『保険屋本格派』に詳しい。
今もそうですが、ただし、以前のような棲み分けははっきりしていません。
それは、新種というジャンルを、損保も生保も売れるからです。
本書が問題にしているのは、ヒト対象の医療保険(がん保険含む)や介護保険です。
では、それ以外の保険も、すべて本書の指摘が当てはまるか、つまり社会的なセーフティーネットがあるかというと、それはそうでもないので、他の保険については、どうなのかなという気がします。
たとえば、火災保険。
持ち家であれ借家であれ、これに入らない人はたぶんいないと思います。
しかし、火災の確率は、その家系で200年~400年に1度なんて言われています。
だったら、これも必要ないんでしょうか。
いえいえ、かりに、自分で火災を出さなかったとしても、隣家の火災で自分の家が燃えてしまうかも知れません。
その場合、火元の家には、損賠賠償責任は発生しないことになっています。
つまり、火災の場合には、自分が火元になろうが、もらい火だろうが、火災になったら自分で家を修理するなり建て直すなりしなければなりません。
また、借家人賠責という特約をつけると、借家で火を出した場合の責任も担保してくれます。
火災保険の場合は、対象は火災だけではないですからね。
たとえば、借家で誤ってガラスを割ってしまったとして、何もなければ退去するときに敷金から引かれますが、借家人賠責に入っていれば保険で直してくれます。
持ち家の場合も、台風や雪で屋根が壊れた、樋が壊れた、外壁に穴があいて雨漏りがした、という場合は保険が使えます。
私は、火災の経験者なので、火災保険や借家人賠責のありがたみを知っています。
全部で1000万円以上は出していただきました。
自動車保険も、慰謝料や治療費など意外とかかりますから、後遺症など全く残らないちょっとした接触事故でも、100万単位のお金がかかります。
実は、私は対人も対物も経験者です。
死亡事故や、重度後遺症なら桁違いになりますから、これも必要だと思います。
では、傷害保険はどうか。
私どもでは、これまた不幸にも火災によって保険金をいただいています。
そんなお金よりも、家族の健康のほうがよほどだいじなんですが、まあ起きてしまったことはともかくとして、医療費については、本書のとおりです。
それほど心配はいりません。
しかし、怪我の場合には、後遺障害という問題があります。
手足が不自由になる、日常生活を送るのが困難になる。
こういう場合には、規定によって、数百万の後遺障害保険金が支払われます。
ほとんどの人はそうならないでしょう。
でも、ならないという保証はない。確率ゼロはない。
どうするかは、ほんと、価値観の問題です。
本書の著者は、そんなものいらない、というでしょう。
しかし、私は、火災保険も、傷害保険も、生涯保険料を払い続けるよりもずっと多い金額の保険金を受け取った経験がありますから、経験上「いらない」とはいえません。
さらにいえば、自動車保険も保険を使ったことがありますから。
まあ、多くの人が、保険は入るただけで支払いは受けたことがないでしょうから、入った保険を片っ端から利用する私の運の悪さは、きわめてレアケースの少数派だと思いますが、まあそういうケースも実際にあるんですよ、ということです。
もっとも、そんな私ですら、本書の眼目である医療保険は1度しか使ったことはありません。
「1度」というのは都民共済ですけどね。
私も元保険屋さんですから、本書のような考えを以前から持っているので、民間の医療保険は入っていません。
コロナの自宅療養を、2022年9月25日までは「入院」扱いにしてくれていたのですが、ギリギリ2022年9月24日にコロナの診断がついたため、1週間分、「入院」保険金を56000円支払っていただきました。
損保なら使いまくりの私ですら、医療保険はそんな程度ですから、たしかに本書のいわれることは、私の実際の経験から見ても説得力はあります。
ご自身が運の良い人間かそうでないか、よくお考えの上、本書を読まれて保険の見直しをされてはいかがでしょうか。
以上、いらない保険生命保険会社が知られたくない「本当の話」(後田亨/永田宏著、講談社+α新書) は、医療保険加入の「無駄」を説く、でした。
いらない保険 生命保険会社が知られたくない「本当の話」 (講談社+α新書) – 後田亨, 永田宏
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