じゃりン子チエ【新訂版】(はるき悦巳著、 双葉社)は、1978年~1997年まで19年にわたって週刊誌に連載された漫画の単行本です。2020年6月時点で累計発行部数は3000万部を突破しているとされ、舞台やアニメ化もされているおなじみの作品です。
『じゃりン子チエ』は、はるき悦巳さんが、『漫画アクション』(双葉社)で1978年10月12日号~1997年8月19日号まで約19年間にわたって連載した漫画です(全786話)。
アニメ化、映画化、舞台化、パチンコキャラクター化などもされました。
本書は、その単行本の新訂版です。
この記事では、そのKindle版をもとにご紹介いたします。
AmazonKindleUnlimitedで、全76巻が2023年1月24日現在、読み放題リストに入っています。
懐かしいですね。
学生時代、『漫画アクション』は毎週買って、通学途中の電車の中で読んでいました。
このブログでは、同誌に連載していた、他の漫画の単行本もご紹介しました。
『クレヨンしんちゃん』(臼井儀人作、双葉社)は、今更ご説明の必要ない大人が5歳児に振り回されている諧謔のです。
現在は、元スタッフによって『新クレヨンしんちゃん』と改題し、『まんがタウン』(双葉社)で連載中です。
『かりあげクン』(植田まさし著、双葉社)は、平凡なサラリーマンのいたずら、皮肉、意趣返しなどコミカルに描く4コマ漫画です。
刈り上げている以外、これといった特徴もなく、エリートでもないサラリーマンが、皮肉や嫌味も込めたコミカルな振る舞いや仕返しでおなじみの4コマ漫画です。
『夫婦漫才』(「ごめん下さい」改題、山上たつひこ、フリースタイル)は、若夫婦と老けた母の掛け合い漫才的日常生活を描いた漫画です。
自宅をベースに、そのご近所の人も時々登場する、シチュエーションコメディといわれるタイプの喜劇漫画です。
さて、本作『じゃりン子チエ』のあらすじです。
大阪市の「頓馬区西萩」という架空の街を舞台に、仕事をしない父・竹本テツと、代わり、自分でホルモン焼き屋を切り盛りする元気な女の子・チエ。いったんは分かれて暮らすヨシ江、短気で口よりも手が先に出てしまうテツの母・菊、婿養子でテツの言いなりになっているテツの父親・おジィなどを中心に、個性豊かな人々の生活を描いています。
物語は、全786話ありますが、チエが小学5年生(1978年)のまま、進級もしないし舞台となる年もかわりません。
1話、もしくは数話単位でひとつのストーリーが、時間軸的には、いわゆるパラレルに展開します。
物語にはよくあるパターンですよね。
そのわりには、別居していたテツ夫妻がよりを戻したり、まあいろいろ出来事はあるんですけどね。
子供らしゅうしとったら生きていけん
本作は、最初は連載ではなく単発で掲載され、好評だったので連載になったそうです。
物語は、冒頭に書いたようにパラレルワールドですが、第2巻の4話目で、別居していたヨシ江が戻ってきています。
この記事では、全786話の中の、記念すべき第1話の『チエちゃん登場の巻』を振り返ってみます。
YouTubeでは、ほぼ原作通りにアニメ化されたものもアップされていますね。
著作権的なことはわかりませんが……(汗)
テツが、おジィに仕入れの金を求めているシーンから始まります。
「ほんまです。ほんまに、チエ、病気で寝込んでますねん。それで、ワシに明日の仕入れの金、もろてきてくれって……」
「しかし、この前もお前、そんなこと言うて、金持ち逃げ……」
「お父はん。昔の話はやめてくれ」
「ついこの前やけど。とにかく金は渡す。しかし、これが最後やど。もし、この前みたいなことになったら、ワシ、もう知らんど」
きっと、おジィの「最後」は、「パラレル」に何度もあったんでしょうね。
結局、カネを渡してしまいます。
ここの一家は、おジィと菊がホルモン屋を経営し、テツが支店のような形でやっている……はずですが、実際には娘のチエが調理・接客・会計のすべてを行っています。
おジィが戻ると、菊が尋ねます。
「テツ、何しに来ましてん」
「仕入れのカネ、取りに来たんや。チエが病気で寝込んどるそうやで」
「病気なあ……。この前は、チエが死んだゆうてましたで。それであんさん、まさかテツに、金渡たんやおまへんやろな」
「しゃあないやろ。テツがそないに云うてるんやから」
「ドアホ~。テツにカネわたしてどうするのや」
いや、そう思ったら、菊も、おジィとテツの直接交渉をさせなければよかったのでは?
おジィはテツに甘く、菊はおジィに甘い構造ですね。
チエから電話が来たので、菊は事情は話さず、「今日は仕入れの金は都合つかんから、とりあえず今日の材料持ってやらすから」とだけ答えます。
そして、おジィに材料を届けさせます。
「チエ。テツの奴、どうしたんや」
「さあ、うち知らん。昨日は帰らんかった」
「ワシ、あいつに仕入れ金渡したんやけど」
「そら、あかんわ。テツ、カネ持ったらもうバクチに決まってる」
「チエ、そのテツゆうのはやめんか。あんな奴でも、お前のお父さんやないか」
「お父はんと思うからテツゆうねん。近所のもんはクズテツゆうとる」
「きついなあ。チエも近頃、口が悪うなったな。もうちょっと子どもらしゅうせんと」
「子供らしゅうしとったら生きていけん。家庭環境が悪いねん。テツあんなにしたんは、おジィのしつけが悪かったんと違うか」
「すんまへん。……わし、帰る」
「ゆっくりしていって。まだまだ言いたいことあるんや」
「ワシ、忙しい。さいならー」
「気の弱いおジィや。しかし、テツのヤツ、どこでバクチ打っとるんやろ」
博打場で、テツは「インケツや、イカサマや」と騒いでいます。
胴元は、後にお好み焼き屋「堅気屋」を営む百合根光三。
若い衆をたきつけ、揉めます。
その間も、店を切り盛りするチエ。
同級生の小林マサルが、腰巾着のタカシとやってきます。
「チエ、また宿題忘れたやろ。これで5回目やど」
「マサル、チエのアホはなおるやろか」
「そら無理や。オヤジのテツがこれ(頭の付近で指を回す)やもん」
「マサル、さえてるー」
「こら、ええかげんにせんかい」と丸太ん棒を抱えるチエ。
マサルは、丸太ん棒でビビりますが、一応強がって「なぐれるもんなら、やぐってみい」と言います。
で、チエは本当にポカンといきます。
要するに、マサルはチエが好きで、かつかまってちゃんなんですね。
そうしているうちに、スボンを脱がされ、シャツがボロボロのテツが帰ってきます。
手を出すチエ。
「なんや、この手は」
「仕入れのカネや。昨日おジィからもらったやろ」
「ワシ、何のことかわからんなあ」
そこで、チエはテツにもポカリ。
「チエ。なんかの間違いや。おジィは時々おかしなるんや」
「おばあはんも云うとったぞ」
「おばぁ、なお悪い。あんなもうろくババアの死にぞこない」
すると、菊がのれんをくぐり入ってきます。
「テツ~。もいっぺん、ゆうてみい~」
「あ~、ままや。僕のママがいてはる。ママー」
「気持ち悪いわい」と、テツをどつく菊。
「おとうはん、助けてくれ、ワシ、殺される」
「もうあかん。ワシじゃ、止まらん」
「チエ~」
「うち知らん。大人の話や」
部屋で菊がコンコンとテツを説教しているうちに、チエは店で売上の計算中。
「これをおばあさんに渡すんやけど、半分もろとこ。ウチのへそくりや。隠してあるところに手を伸ばし、
「だいふ溜まったなあ。あの親や、今からきっちり貯金しとかんと。しかし、ウチがお嫁に行ったら、テツどうして生きて行くんやろ……」
部屋の中からは、ポクポクポクと、まるで木魚を叩くような、テツをどつく音が聞こえています。
登場人物が全員集まって記念写真を撮るエンディング
ストーリーは、1話、もしくは数話単位でひとつのストーリーが、時間軸的には、いわゆるパラレルに展開と描きましたが、そういう物語の場合、最終回も何か「終わり」を告げる展開にはならないものです。
『じゃりン子チエ』もそうです。
ネタバレしますが、最終回は、登場人物が全員集まって記念写真を撮って終わります。
何年か後に、また復活しても、同じメンバーが同じ設定で登場できます。
誰も老病死・離別などしていません。
たぶん、復活してもそういうストーリーは出てこないと思います。
十年一日、なんていいますが、パラレルワールドですから、実は一日すら先にはならず、また同じところで新しいストーリーになるんですよね。
私自身は、大阪は仕事で行ったきりで、目的場所と宿、あとはせいぜい食事の店に寄っただけで、住んだことはもちろん、観光も行ったことはありませんが、吉本新喜劇などを見ると、ああ、大阪の雰囲気というのはこういうものかもしれないか、と思いました。
そして、冒頭にも描きましたが、読んだのが大学生の頃でしたので、その当時を思い出す、すなわちノスタルジーに浸れましたね。
みなさんも、いかがですか。
以上、じゃりン子チエ【新訂版】(はるき悦巳著、 双葉社)は、1978年~1997年まで19年にわたって週刊誌に連載された漫画の単行本、でした。