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『その「1錠」が脳をダメにする薬剤師が教える薬の害がわかる本』は薬の副作用や検査のデメリットを強調し自然治癒力を提唱

『その「1錠」が脳をダメにする薬剤師が教える薬の害がわかる本』は薬の副作用や検査のデメリットを強調し自然治癒力を提唱

『その「1錠」が脳をダメにする薬剤師が教える薬の害がわかる本』は、薬の副作用や検査のデメリットを強調し自然治癒力で治せといいます。では、どうすれば治癒力が免疫力が向上してどのくらいで薬や治療の効果を上回るかは明らかにしていません。

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自然治癒力で治せと言うが……

『その「1錠」が脳をダメにする薬剤師が教える薬の害がわかる本』(宇多川久美子著、SBクリエイティブ)は、薬に依存しすぎる現代に警鐘を鳴らしています。

たとえば、製薬会社CMの「効いたよね、早めの○○♪」のように、早期発見ならぬ早期投薬の刷り込みがあります。

しかし、薬剤師が著者である本書は、「薬の常識の9割は、ウソ」「早めの処方」が依存をつくると述べています。

みなさんは現在、服用している薬はありますか。

それは、どうしても必要なものですか。

つい、薬さえ飲めば万事解決、と思ってしまいますよね。

まるで、お守りのように。

しかし、本当のお守りには、薬のような副作用はありません。

しかも、そもそも薬に本質的な改善や解決ができるのか、ということも指摘しています。

たとえば、痛み止に含まれる鎮痛成分。

痛みを軽くする作用があるだけで、痛みのもとを除くわけではありません。

痛みのもと……。解熱鎮痛剤を常用していると、頭痛の起こる頻度は増え痛みが強くなるといいます。

つまり、物事には原因があって結果があるのですから、その原点を探しましょう、ということです。

そして、薬には大きなお金が動きます。

人の弱みにつけ込む悪事にもつながりかねません。

そもそも薬ですらありませんが、抗がんをうたう健康食品は、エビデンスもないのに大金を稼ぎ、法律違反の宣伝文句で逮捕されることもありました。

ここまでは、なるほどと思います。

では、どうすればいいのか。

そこで筆者は、安易に薬に依存するのではなく、自らの自然治癒力を高めることにもっと目を向けるべきだと説いています。

うーん。

ここで大きく脱力しました。

そりゃ、自分の治癒力や免疫力ですべて解決すれば問題ありません。

ですが、そうではないから薬があるわけで、ただ「薬は害だからだめだ」では解決になりません。

要するに著者は医療行為を否定している

自然治癒力なる言葉の実態は、実は成り行き任せということに過ぎません。

症状によっては、医療で手当できる機会の損失につながる場合もあるので、一概にいいこととはいえないのです。

それこそ本書は、結論について本質的に疑問符が付きます。

ピロリ菌

たとえば筆者は、胃ガンのリスクを抑えるためにピロリ菌を除菌し、そのせいで食道がんのリスクを高めることを指摘します。

つまり、除菌に反対していますが、私は理解できません。

ピロリ菌のリスクは、胃がんだけでなく慢性胃炎、十二指腸潰瘍、悪性リンパ腫などとの関係もわかっており、除菌のメリットははっきりしています。

除菌することで、確かに胃液が逆流することはありますが、そんなことははじめからわかっているので、除菌の際は当然逆流対策の薬も処方されます。

逆流は通常一時的ですが、ピロリ菌に傷害されることは慢性的ですから、全くリスクの次元が違うのではないでしょうか。

著者は、除菌よりも免疫システムを上げる事を勧めていますが、では具体的に何をして、数値にしてどのくらいの免疫力アップがあれば除菌のメリットを上回るかは証明していません。

これはいくらなんでも無責任ではないでしょうか。

CT検査

CT検査については、日本は欧米諸国と比べても医療被曝の高い国であり、ガンの発症のリスクを高めているといいます。

CTスキャンによって、放射線被爆があることは確かです。

しかし、これもリスクとベネフィットの関係で、放射線被爆によるがん発症のリスクよりも、病気を発見するメリットのほうが明らかに大きいから行っているのです。

そもそもがん発症のリスクについても、原発事故のときも言われましたが、放射線を一瞬浴びたからといって、その瞬間に将来のがん発症が決定するわけではありません。

人間の体は、常に細胞を修復したり新しい細胞に変わったりするので、そのシステムに耐えられる範囲なら「我慢」はできますが、たとえば長い間慢性的に傷害するような場合は、それだけがんのリスクは高くなります。

つまり、CTを何度も繰り返せば、後者になりえる可能性はないわけではありませんが、1度の照射で、そうなるわけではなく、1度の照射でそうなり得る数値なら医学的には成立しないでしょう。

だったら、フライトが仕事である飛行機のパイロットや客室乗務員、商用で何十回も国内外を往復するビジネスマンの方が、CTを年に1~2回照射するよりも放射線の照射量は多いのではないでしょうか。

PET(陽電子放射断層撮影)

著者は、ペットにもケチを付けています。

PET(陽電子放射断層撮影)検査がは、ブドウ糖に類似した物質と放射性物質を合わせた薬剤を、糖分の好きなガン細胞が取り込む性質を利用しガンの位置を調べるもの。

著者は、ガン細胞の栄養素は糖質で、かえってガンを喜ばせているといいます。

これも、えーっと呆れ、笑い転げました。

そりゃ、そのときはガンは「糖が来た」と喜ぶのかもしれません。

でも、そのときだけですよ。

一時的に喜ばせてしまうことよりも、それによって元の場所がわかるメリットのほうが当然大きいでしょう。

そもそも、そこで「ブドウ糖に類似した物質と放射性物質を合わせた薬剤」を投与しなくても、人間は血糖値ゼロにはできませんから、どっちみち日常的にガンは糖分を得ているのです。

この方、本当に薬剤師なのか、というより、高等学校の理科を学んだのか、疑問が生じました。

だって、別に医療従事者でなくてもわかることなのに、突っ込んでもらうためのネタとしてわざと書いているとしか思えないじゃないですか。

健康診断

著者は健康診断も否定しています。

放っておいても良い病気まで見つけて処置することや、細かい数字を気にするストレス等のデメリットを指摘していますが、一方で早期発見のメリット、というより早期発見が絶対必要なものには触れていません。

どこまで検査するかにもよりますが、たとえば目の検査、具体的には緑内障ですが、これは健康診断で指摘されなかったらおそらく手遅れになります。

なぜかといえば、視野が欠損しても、人間は両目があるため視野を補えたり、これまでの経験から見えなくても見えるような錯覚を起こしたりしているので、自覚症状が出るまで進行に気づかないからです。

そして、ある意味がん治療よりも厄介です。

がん治療では全体で6割は生還できるといわれていますが、失った視神経はもとに戻らない、要するに緑内障は100%悪くなるだけの不治の病なのです。

うつ病の薬

うつ病のスクリについては、『精神科の薬は危険!』『うつ病は薬を飲んでも治らない!』『薬なんか飲むからおかしくなる!』なんてよくいわれますが、本書の著者も、薬は害があるから、薬なしで治せといいます。

いや、だからそれで治ったら苦労ないし、治らないから薬を使うんじゃないですか。

うつ病の人だって、好きで薬を飲んでいるわけではないでしょう。

少しでも、部分的な解決でも「よりまし」を目指しているわけですから、具体的な対策もない人が、しかも薬剤師のくせに、ただ「害があるからやめろ」は、これまた無責任な話だと思います。

医学・医療の享受することが最短で病を治す手段

それにしても、今の医学・医療は、ともすれば否定する意見が脚光を浴びる傾向があります。

投薬、がん治療、健康診断……

医学・医療自体が絶対ではないし、ドクハラ、誤診などの落ち度もあります。

そこで、その悪い部分だけを見るのではなく、施術そのもの、もしくは医学・医療全体を否定してしまうセンセーショナルな方向にシフトしてしまうことが往々にしてあります。

私は、それは残念なことだと思います。

医学・医療が多くの生命を救い、健康に寄与してきた面は否定しようがありませんし、抗がん剤のように賛否がわかれる治療にしても、伊達や酔狂で行っているわけではありません。

治療・検査にしろ、投薬にしろ、患者自身の事情にうまく合わせ、副作用を最小限に抑えてメリットを享受することこそ、最短で病を治す手段のはずです。

そのためには、つまらない医療否定本に右往左往せず、自分自身も病気を治すために前向きな提案や質問などを担当医に行い、治療の道筋や、医師との信頼関係をしっかり確立することが大切です。

本書に限らず、医学・医療を否定する書籍や論陣はありますが、著者の意図はどうあれ、否定の論調をうのみにするのではなく、是々非々で前向きな方向で役立てたらいいのではないかと思います。

以上、『その「1錠」が脳をダメにする薬剤師が教える薬の害がわかる本』は薬の副作用や検査のデメリットを強調し自然治癒力を提唱、でした。


その「1錠」が脳をダメにする 薬剤師が教える 薬の害がわかる本 (SB新書) – 宇多川 久美子


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