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なぜ、MMTは論争になるのか?(平中良平著、 Kindle版)は、現代貨幣理論がなぜ論争になるのか、採るべき財政政策は何かのまとめ

なぜ、MMTは論争になるのか?(平中良平著、 Kindle版)は、現代貨幣理論がなぜ論争になるのか、採るべき財政政策は何かのまとめ

なぜ、MMTは論争になるのか?(平中良平著、 Kindle版)は、現代貨幣理論がなぜ論争になるのか、採るべき財政政策は何かを簡単にまとめています。MMTが主張する貨幣論が、今まで教えられてきたそれと非常に異なることによる混乱を整理しています。

『なぜ、MMTは論争になるのか?』は、平中良平さんが著したKindle版書き下ろしです。

著者がMMTを理解していく過程を、MMTに対する誤解の解説を含めてまとめています。

Amazon販売ページによると、著者は東京の郊外で不動産業を営んで、約10年。

以前から興味のあった経済分野で執筆をしようと思い、Kindleで出版したとのこと。

Kindleは、プロの作家やジャーナリスト以外にも、上梓の道を開いた点が画期的ですね。

私は紙の書籍を上梓していますが、KindleもMMT関連書籍もまだ書いたことはありません。

その意味で、平中良平さんの上梓は、大変刺激と言うか励みになります。

本書は2022年9月22日現在、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

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従前は財政破綻論者の言い分しか聞いていなかった

本書『なぜ、MMTは論争になるのか?』は、MMTがこれまでのお金の流れについての認識をひっくり返すもののため、多くの人の反発を買っていることから言及しています。

著者は、自らの経験を振り返っています。

もともと私は日本は借金が1000兆円以上あるからいずれ破綻する、と信じていました。しかし、面白いことが起きました。2012年頃からギリシャがデフォルトする かもしれない、とニュースで騒がれはじめたました。そして、ギリシャよりも債務の多 い日本がデフォルトするかもしれない、としきりに言われました。ところが日本の経済破綻はまるで起こりませんでした。それが何年も続いたのです。
それまでは、いわゆる財政破綻論者の言い分しか聞いていなかったと気づき、他の意見もと興味を持ち、紆余曲折を経てMMTのほうが既存の貨幣論と比べて 説得力があり、現実と照らし合わせて整合性があると考えるに至りました。

これは私も実によくわかります。

私は、そんなに経済、それも財政問題はわからない、というより恥ずかしながら興味もあまりなかったのですが、そんな私でも覚えている限り、21世紀がはじまった2002年には、「財政破綻」「ハイパーインフレ」という話は、インタビューの仕事をしているときに出てきていました。

「ハイパーインフレか。おー、これは面白いことになるぞ」

私はどうせ持たざる者なので、無責任にハプニングをどこか興味本位で待っていましたが、いつまでたってもハイパーインフレなんて起きやしませんでした。

「どんどん円安になるから、ドルを買っておいた方がいい」

なんて話もあって買ったこともありましたが、むしろ下がったのですぐに損切りしました。

要するに、一部の煽り屋経済評論家たちに騙されたのです。

以来、そういう話には懐疑的・批判的だったわけですが、のちに、財政破綻はしない、というMMTの話を聞き、ストンと胸に落ちました。

日本の財政が破綻することはないとする学者や評論家に耳を傾けはじめた

さて、著者は、なぜ日本はギリシャよりもGDPと比較した債務が多いのに、破綻しないのかに疑問を持ったそうです。

それに答えて説明しようとする新聞記事がほとんどなかったからです。

もしかしたら、債務とGDPの比率にあまりにこだわりすぎていたのかもしれない。

そんな疑問が著者自身にも、そして日本経済を語っていた言論の場に対しても感じるようになったそうです。

そして、今まで自分は、日本は財政破綻すると論じる人の意見しか聞いていないことに気づいたそうです。

そこで、当時はまだ MMTという言葉が日本では普及していなかったので、日本の財政が破綻することはないとする学者や評論家に耳を傾けはじめたといいます。

私は、MMTが話題になり始めた2019年頃は、まだ特別な関心をもったわけではありませんでした。

2020年でしたか、流行していた家系図づくりを行ったことがきっかけです。

父方の曽祖父の叔父が、大童信太夫という仙台藩の重臣の命で、川村家から武家の高橋家に養子に入った和喜次(後の高橋是清)のお世話役をつとめたばかりか、配偶者も高橋家出身であることを知りました。

そこから、高橋是清といういままでは歴史上の偉人の一人に過ぎなかった人が、急に身近な存在に思え、その仕事を調べると、MMTに結びついたわけです。

『高橋是清 遺訓と回想: 私の生い立ちとチャンスのつかみ方 Kindle版』(高橋是清、大正昭和史研究会翻訳)は、回想を収録
『高橋是清 遺訓と回想: 私の生い立ちとチャンスのつかみ方 Kindle版』(高橋是清、大正昭和史研究会翻訳)は、回想を収録しています。絵師の庶子から武家に養子に迎えられ、留学、日銀総裁、60歳過ぎてからの政界入り、6度の大蔵大臣就任などを経験しています。

日本は、積極財政が成功した実績があります。

1931年に大蔵大臣に就任した高橋是清は、濱口内閣の緊縮財政で疲弊しきったデフレの日本経済に対して、財政出動を行いました。

金本位制を廃止して通貨発行のタガをはずし、軍事予算増額や景気対策を目的とした公共事業など予算を増やしました。

これによって日本は、世界的な恐慌からいち早く復活を遂げたのです。

これはまさに、現在話題のMMT(現代貨幣論)を90年も前に実践していたことになります。

高橋是清が、日本のケインジアンといわれる所以です。

麻生太郎副総裁だって、野に下っていた頃言ってるでしょう。

高橋是清は、1円も増税しないでデフレ不況から脱却したと。

日銀に向かって、「金を刷れ」と。ジャんじゃん刷れと。俺が使ううと。
「俺が使うんだから黙って刷れ」と。
こうやって、彼(高橋是清)は、「政府がドンドンお金を使う」という事をやって、今で言う「財政出動」というのですが、それをやって、道路を作ります、港を作ります。雇用を増やします。とバンバンやって、結果として、世界は、日本が一番早く、デフレ不況の脱却に成功したと。
褒めざるを得ない結果を出したわけです。
お答えしておきますが、この人は1円も増税していないからね。増税してないんだよ!

ま、残念ながら、麻生太郎さん自身は「平成の是清」にはなれなかった。

麻生太郎財務大臣の変節が改めて問われています。れいわ新選組若者勝手連が野党時代の麻生太郎氏の財政出動を評価する発言投稿
麻生太郎財務大臣の変節が改めて問われています。れいわ新選組若者勝手連が野党時代の麻生太郎氏の財政出動を評価する発言を振り返っています。今から90年前、時の大蔵大臣だった高橋是清が、財政出動して世界的不況からいち早く脱出したことを語っています。

財務省の言いなりになって、自分からそれを放棄してしまったわけですが。

MMTは「日本の財政は健全」という意見を体系化した内容

著者は、「財政破綻論を言う人が答えていない疑問を、日本の財政は健全だとする人がしっかりと答えてい」たことに気づいたといいます。

まず、日本の国債は日本円建てなんだから、デフォルトしようがないこと。それは、確かにその通りだと思いました。日本の中央銀行である日銀が発行している 日本円で計上している債務がいくら積みあがろうと債務超過が起こるはずがない。まして、日本国債はほとんどが日本国内で消化されており、日本政府の借金は日本国民が政府に貸している資産である。そういう意味で財政破綻は、 少なくともデフォルトという意味では起こりようがない。これは、かなりわかりやすいと感じたポイントです。

ギリシャがデフォルト(財政破綻)したのは、GDPの1.6倍の債務を、外国の通貨で持っていたことにあると。

財政破綻は、巨大な対外債務が原因で起きることが多い。

しかし、日本はデフレであり、対外債務が非常に少ない国であることも知ったといいます。

そして、MMTという言葉が使われるようになり、著者には以前から「日本の財政は健全である」と言っていた人たちの意見を体系化したような内容だと感じたそうです。

2011年の東日本大震災では、1000年に1度の大地震と大津波で、物流は止まり、原発事故で電力供給能力も著しく低下。

日本の生産性そのものがガタ落ちしました。

その上で44.3兆円の新規国債を発行しましたが、はたして国内でハイパーインフレは発生したでしょうか。

財政破綻したでしょうか。

円は大暴落したでしょうか。

実際には、2011年度インフレ率コアCPIはデフレを示し、5日後には投機家の円買いが進み、1ドル=76円25銭という戦後最高値を更新。

同年10月末には、現在まで破られていない円の史上最高値75円32銭を記録しました。

まあつまり、あれだけの一大事でも円の信用は落ちなかったし、財政破綻もインフレもなかったということです。

現在、円安といわれていますが、これは円の信用が落ちたためのものではありません。

消費者物価の上昇も、石油や天然ガス、小麦やトウモロコシなど輸入品の値段が上がっているからで、純粋に国内要因だけを反映した物価指数であるGDPデフレータでは、依然としてデフレは続いています。

プライマリーバランス黒字化の危険性

後半は、MMTの説明が書かれています。

MMTで理解すべきことは2つだけ。

  1. お金とは、銀行が紙に書くだけで誕生する。(信用創造)
  2. お金とは誰かが借金をすることで、この世に誕生する。

その上で、「プライマリーバランス黒字化の危険性」を述べています。

お金とは誰かの借金ではじまるのに、借金を返したらお金はなくなってしまう。

消費増税で国民からは消費の意欲がなくなってしまう。

今のような不況でのPB黒字化は、お金の総量を日本の市場から消滅させているだけです、と懸念を示します。

そして、政府は財政破綻しないことを解説しています。

主流派経済学が疑問視されている

主流派経済学というのは、要するにMMTの立場に立たない経済学、ということです。

その主流派経済学について、「経済学の信用が揺らぎつつある」問題点を指摘しています。

そして、インフレは悪いことではない、ということも述べています。

日銀は政府と、インフレ率2%という目標を定めています。

岸田文雄総理は、26日の政府答弁で「MMTは採用しない」と述べたことが話題なっています。では、その答弁は実態に即しているか
岸田文雄総理は、26日の政府答弁で「MMTは採用しない」と述べたことが話題なっています。しかし、その答弁自体正しいのか。MMTは現代貨幣理「理論」であり、「政策」や「イデオロギー」は、それをいかなる価値に使うかという話で全く別ものだからです。

インフレが止まらなくなる、という反対意見に著者は、「インフレが過剰になったら政府がやめればいいのです。車のドライバーがスピードを出しすぎていたらブレーキを少し踏むのと変わりません。」とたしなめています。

ハイパーインフレについての懸念に対しては、こう答えています。

今の日本のGDPは500兆円ほどですね。これは、約500兆円ほどのお金が1年間に日本で使われていることを意味します。そしてインフレ率 が100%、つまり商品やサービスの値段が2倍になるには、もう500兆円お金を増やして1000兆円にして、しかも流通させなければいけません。
お気づきだと思いますが、財政出動とは公共投資なども含めて5兆円とか10兆円といったレベルです。多く増やしたとして、15兆円や20兆円といった程度です。
とてもじゃないが、ハイパーインフレになりようがありません。そして、仮に500兆円をあらたにマネーサプライに追加しても、使われるかどうかは別の話です。おそら く、今の日本でもし500兆円のお金を誕生させても、受け皿がなくて使い道がなく大したインフレにはならないと思われます。

本書は、さらに少子化の問題にも論を広げています。

少子化だから経済が成長しない、という意見はたしかにあります。

著者は、「経済が成長しないから、子どもが生まれないかもしれないのです」として、そのためにも積極財政を待望しています。

MMTと税金の関係

MMTは、お金を自由に刷れるのだから税金がいらないだろう、という愚論もなかなか消えません。

著者は、その反論も行い、税金の6つの目的を枚挙。

税収は財源としてはそれほど意味をなさない、という結論です。

  1. 経済圏における通貨定着のため
  2. 貧富の差を解消
  3. オフショア化の防止
  4. インフレ率の抑制
  5. 国民に安心を与えるため
  6. “いざという時”のため

私も、その点し以下を何度も書いてきました。

  1. インフレ抑制
  2. ……MMTによる国債発行のコントロールはインフレ率による

  3. 格差の是正
  4. ……累進課税によって富裕層と中流層・貧困層との格差を広げないようにする。そもそも富裕層にとっての税は、同額であっても中流層・貧困層よりも犠牲が少ない

  5. 円の通貨としての価値を担保する
  6. ……納税義務を貨幣(円)で果たすことで、その貨幣に価値(需要)が生まれる

  7. 社会秩序を守るために利用する
  8. ……お酒やタバコに税金をかけることで、需要をコントロールすることができる

いずれにしても、税金は財源ではないが、別の役割があるということです。

……ということで、色々ご紹介しましたが、論より証拠で本書を読まれることをお勧めします。

以上、なぜ、MMTは論争になるのか?(平中良平著、 Kindle版)は、現代貨幣理論がなぜ論争になるのか、採るべき財政政策は何かのまとめ、でした。


なぜ、MMTは論争になるのか? – 平中 良平


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