まんがでわかる偉人伝 日本を動かした312人(よだひでき著、ブティック社)は、タイトル通り歴史に名を残す312人の功績を漫画化しました。この記事では、その中で、農村復興や報徳思想で知られている二宮尊徳(金次郎)の話をご紹介します。
まんがでわかる偉人伝 日本を動かした312人(よだひでき著、ブティック社)は、多岐にわたる人選でその生涯と功績を漫画化しています。
どのような人がとりあげられているかは後述しますが、その中の何人かは、すでに他の書籍でご紹介しているので、今回は二宮尊徳(金次郎)をご紹介します、
二宮尊徳(金次郎)といえば、薪を担いで本を読む銅像が有名です。
二宮 尊徳の言葉
道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である。 pic.twitter.com/BelDg4gPbw— アマデウス (@GyyARm5pyYHddh0) May 23, 2024
真面目に、けなげに勉強する姿は、まさにその人生を象徴しています。
二宮尊徳(金次郎)は、日本の歴史的な人物で、農村復興や報徳思想で知られています。
「報徳思想」というのは、宗教の教えと農業の実践を組み合わせた、豊かに生きるための知恵です。
至誠・勤労・分度・推譲の4つの考え方で構成されており、要するに私利私欲に溺れず、利他の精神で社会へ貢献することを重視しています。
二宮尊徳の思想は、経営者にも影響を与え、のちの豊田佐吉や松下幸之助、稲盛和夫などがその信奉者となりました。
お札になった近代日本経済の父とされる渋沢栄一も、尊徳の教えに影響を受け、実践しました。
では、詳しく見ていきます。
小さな努力を積み重ねて大きな収穫に結びつく
今日の格言!
積少為大(せきしょういだい)
「毎日毎日の小さな努力の積み重ねが大きな成果につながる」二宮金次郎(尊徳) pic.twitter.com/nBop5mrhkl
— 渡邊正秀 (@fUlv5sgcbn87282) June 14, 2024
二宮尊徳(金次郎)は、1787年9月4日に、相模国足柄上郡栢山村(現在の神奈川県小田原市栢山)で生まれました。
両親を早くに亡くして兄弟別れ別れに引き取られ、やっと家を買って暮らせると思ったときは弟を亡くすなど、家庭的には不遇でした、
幼少期から薪売りなどで家計を支え、苦境を乗り越えて成長しました。
しかし、個人の労働力などたかが知れていますから、金次郎は「力仕事だけじゃだめだ。これからは学問をシなければ」と決意。
働きながら、寸暇を惜しんで勉強しました。
薪を担ぎながら「大学」という本を読む銅像は、その頃の姿です。
夜も火を焚いて勉学に勤しんでいたのですが、養親は、金次郎が勉強するのが嫌いで、書物を読んでいると、灯りの油がもったいないと言って禁じました。
すると、金次郎は、農家から一掴みの油菜をもらい、土手で育てて花を咲かせ、油屋さんで油に変えてもらい油代を捻出しました。
松の苗を安価で買い取って土手に植え、松並木に育てたこともあります。
今も、酒匂川(静岡と神奈川を流れる川)の土手の松並木として有名です。
また、田植えで余った稲を利用し、荒れ地を開墾して米を収穫。
荒れ地を開墾して穫れた作物は、7年間は年貢としておさめなくてもよかったので、金次郎はその米をもとにして二宮家を立て直しました。
金次郎の好きな言葉は、「小を積んで大を為す」(積小為大)
未来を信じて、小さな努力をこつこつと積み重ねていけば、いずれは大きな収穫や発展に結びつく。
大きな目標を達成するためには、まず小さなことを怠らずに努力することが大切、ということです。
貧乏で親もいない金次郎にはピッタリの教えでした。
26歳のときには、小田原藩の家老、服部十郎兵衛のもとで働くことに。
子どもの世話係ですが、藩の学校に送り迎えしながら、教室の外で授業を聞き耳を立て、ちゃっかり自分も勉強していました。
その服部家は、実は借金だらけのため、財政を立て直してほしいと相談を受けた金次郎は、5年で借金を返済し、さらに300両をのこしました。
その手法は、「報徳仕法」として全国に広まりました。
金次郎は以来、財政再建人として活躍。
小田原藩の大久保忠真は、領内の立て直しを依頼し、桜町という評判の悪い町を復興させました。
それだけでなく、凶作を予想して、別の作物を植えさせて地域の人々を飢えから救うこともありました。
このように、生涯で600もの村や地域の復興を行い、多くの人々を支えたといわれています。
「金次郎」は、その頃「尊徳」を名乗るようになったと言われています。
卑弥呼から手塚治虫まで
本書の「312人」は、様々な分野の人が含まれています。
一部をご紹介すると、卑弥呼や聖徳太子など古代の国を治めた人々、紫式部や菅原道真など今風にいうと「文化人」、最澄、空海、法然、親鸞、日蓮など大乗仏教の開祖、源頼朝や義経、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康などの武将、さらに近代では西郷隆盛、福沢諭吉、吉田茂、湯川秀樹、手塚治虫などが紹介されています。
偉人と言っても人間なので、欠点や失敗もありますが、漫画は312人の「功績」にフォーカスしています。
さすがに、312人全員をストーリーで追うことは紙数が間に合わなかったようで、二宮尊徳(金次郎)のように、漫画でその生涯を描いているパターンと、文章で簡単に紹介しているパターンとがあります。
社会の教科書では追いきれなかった、偉人の人物像を駆け足ですが描いているので、現役の生徒や児童だけでなく、大人でも十分読み応えがあります。
また機会があれば、他の人についてもご紹介できればと思っています。
薪を担いで本を読む銅像、みなさんのお住いの町にはありますか。