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まんがで名作渋沢栄一の論語と算盤(田伊りょうき/加地伸行、角川まんが学習シリーズ)は、論語から商業道徳の論理を提唱する

まんがで名作渋沢栄一の論語と算盤(田伊りょうき/加地伸行、角川まんが学習シリーズ)は、論語から商業道徳の論理を提唱する

まんがで名作渋沢栄一の論語と算盤(田伊りょうき/加地伸行、角川まんが学習シリーズ)をご紹介します。新しい1万円札の顔に選ばれた、日本の「資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一は、中国の古典『論語』を学び、「正しくお金をもうけて社会のために使う」ことを説いたといわれています。(文中敬称略)

新しい1万円札、私はまだ手にしたことはありませんが、ぼちぼちATMでも出始めているみたいですね。


新しい1万円札の顔にも選ばれたこの方は、どんな功績を残したのか、ご存じですか。

渋沢栄一(しぶさわ えいいち、1840年3月16日~1931年11月11日)は、幕末の幕臣であり、明治~大正初期の大蔵官僚であり、実業家です。

第一国立銀行、東京証券取引所、東京海上、王子製紙、日本郵船、帝国ホテル、キリンビール、サッポロビールなど、500あまりの企業の設立に携わり、日本資本主義の父と呼ばれています。

渋沢栄一は幕末にパリ万博に幕府代表として参加し、そこで証券取引所や銀行の仕組みを見て感銘を受け、日本に帰国後、証券取引所と銀行の仕組みを導入して普及。

現在、当たり前に存在する日本の経済の仕組みを導入した人物です。

新しい一万円札には、肖像がホログラムで動くデザインが採用されています。

中国の古典『論語』を学び、個人の利益の追求ではなく、「みんなの得になる社会をつくるにはどうするべきか」を考え実践した人物です。

本書の原作である『論語と算盤』は、渋沢栄一が執筆した代表的な書籍です。

この本は、儒学の「論語」と商業の「算盤」を組み合わせて、商業道徳の論理を提唱しています。

全10章からなり、道徳と利益、公益と経営のバランスを考えるビジネスの教養として、多くの経営者に影響を与えています。

本書『渋沢栄一の論語と算盤』は、『論語と算盤』から合計20の論語が、現代を舞台にしたストーリー仕立てのまんがで紹介されています。

本書が伝えたいことは、「正しくお金をもうけて社会のために使う、そして何より人を思いやり行動する」ことの大切さということです。

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『論語と算盤』から合計20の論語が登場

舞台は、町の喫茶店。

オーナー夫婦に、小学生の娘と息子、そして店には常連客である大学教員が主な登場人物です。

その教員と、主に小学生の息子の会話に、『論語と算盤』から合計20の論語が出てきます。

勉強や、野球や、店の経営など、日常的な悩み事が話題になるたびに、関連する論語を教員が教える、という展開です。

論語とは、中国の思想家孔子と、その高弟たちの言行を記録した書物です。

孔子の死後に弟子たちがまとめたもので、儒教の経典の一つとされています。

この書籍は人の生きる道や考え方、道徳について語り、現代のビジネスマンでも参考にする人が多いといわれています。

論語には、「仁・義・礼・智・信」という五徳(または五常)が登場し、人々が目指すべき価値観を示しています。

特に重要視されたのが「仁」で、孔子の思想の核とも言えるものです。

老荘思想については、以前、ご紹介しました。


本書に出てきた20の論語のうち、主なものをご紹介します。

・論語と算盤は、甚だしく遠くして甚だしく近いものである
論語は人々の行動指針を提供し、算盤は経済活動を支える道具となるため、両者は遠く離れているように見えても、実際には近い存在であると述べています。道徳と実務、知識と実践の結びつきを強調しており、私たちが学びと行動を統合することの重要性を示しています。

・その富をなす根源は何かといえば、仁義道徳。正しい道理の上にできた富でなければ、その富は完全に永続することができぬ。
仁義道徳の仁は他人に対する思いやりと善意を意味し、義は正義や道徳的な行動を指します。道徳は個人や社会全体の行動規範を示すものです。
正しい道理の上にできた富とは、倫理的な手段で得られた富を指します。つまり、法律や倫理に適った方法で富を築くことが重要であり、その富は永続的であるとされています。逆に、不正な手段で得た富は長続きせず、持続性がないとされています。
この言葉は、私たちが富を追求する際に、倫理的な原則を守り、正しい方法で行動することの重要性を強調しています。

・蟹穴主義
「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」という主義で、自分の身の丈に合ったことを知り、具体的には、自分ができることや得意なことを極め、社会に貢献することを喜びとし、身の丈に満足しながら努力する姿勢を指します。自己認識と謙虚さを大切にすることで、競争社会でも自分を見失わないこと、という教えです。

・士魂商才
武士の精神と商人としての抜け目ない才能を併せ持っていることを指します。具体的には、「士魂」は武士の精神を意味し、「商才」は商売の才能を指します。この言葉は、実業家や商人にとって理想的な心構えを表しています。和魂漢才をもじってできた語とされています。

・真に理財に長ずる人は、よく集むると同時によく散ずるようでなくてはならぬ。
「よく集むる」とは、お金を上手に稼ぐことを指します。これは理財に長じる人の基本的な能力です。「よく散ずる」 とは、お金を適切に使うことを意味します。つまり、お金を善用することが重要であり、単に集めるだけではなく、使い方も考慮する必要があるという教えです。

・人間には如何に円くとも、どこかに角がなければならぬ。
人は年をとれば、自然と丸くなりますが、それだけでは人格として不十分です。自分の大切な信念のために戦う姿勢や、他人の頼みを断る勇気も持つべきであると教えています。

「中庸」の教えで「お金」も「利他」も両立させる

ことほどさように、老荘思想の教えのひとつは、「中庸」です。

つまり、相反する概念のどちらにも偏らないということ。

今回の場合は、「金儲け」と「人のためになる」ことの「中庸」ということです。

このブログでは再三書いていますが、お金を稼ぐことを、まるで卑しいことのように罵る「美学」が日本人の一部にはありますが、それは本当に「美しい」のか、ということです。

一昨日ご紹介した、二宮尊徳(金次郎)も、「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」と言っています。

渋沢栄一は、論語を使って、お金オンリーにも走らず、キレイ事で自己満足もせず、社会の役に立ちながらお金を稼ごうと戒めているわけです。

さて、その教えを肝に命じて、これからの日本の経済は良い方に変わっていくでしょうか。キャッシュレス社会では、あまり効果はないかな?


まんがで名作 渋沢栄一の論語と算盤 (角川まんが学習シリーズ) – 田伊 りょうき, 加地 伸行

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