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アスペルガー症候群の苦労と苦悩を漫画化した『心が読めない』(なかのゆみ著)は、『難病が教えてくれたこと』第3巻に収録

アスペルガー症候群の苦労と苦悩を漫画化した『心が読めない』(なかのゆみ著)は、『難病が教えてくれたこと』第3巻に収録

アスペルガー症候群の苦労と苦悩を漫画化した『心が読めない』(なかのゆみ著)は、『難病が教えてくれたこと』第3巻に収録されています。アスペルガー症候群の頻度は10000人に91人といわれ、原因となる遺伝子は見つかっていないそうです。

『心が読めない』は、アスペルガー症候群の苦労と苦悩を、漫画で描いたものです。

『難病が教えてくれたこと~あなたの身近にいる闘病者たち~』第3巻に収録されています。

本書は、家庭サスペンスシリーズと名付けられています。

この記事は、Kindle版をもとにご紹介しています。

アスペルガー症候群というのは、知能や言語能力など知的な障害のない高機能自閉症のことです。

などが見られ、周囲からは、自己中心的な人、空気が読めない人と思われてしまうことがあります。

言葉は、辞書に書かれているとおりに認識するので、言葉の裏の「ホンネ」は読みません。

日本のような、ダブスタや“阿吽の呼吸”に満ちた文化は、さぞ生きづらいことでしょう。

いつも同じ行動パターンで生活していることが多く、急に予定を変更したり、今行っている作業を変更することで、脳内が混乱することがあります。

前頭葉のはたらきに障害があるため、他人の身になって考えることも苦手です。

ただし、その「生真面目さ」から、決まった課題を与えられたり、ルールがはっきりしている環境だったりと、パターン化した活動において高い成果を上げることがあります。

また、「勉強ができる」としても、コンスタントに優秀ではなく、科目によって得手不得手がはっきりした「まだらな秀才」であることが少なくありません。

一部に誤解があるのですが、少なくとも、アスペルガー症候群=天才、という単純なものではないのです。

アスペルガー症候群の頻度は10000人に91人(イギリス自閉症協会の報告)といわれ、自閉症の遺伝子は見つかっていないそうです。

以前、『マンガでわかる もしかしてアスペルガー!?~大人の発達障害と向き合う~ Kindle版』(司馬理英子著)をご紹介したことがあります。

『マンガでわかる もしかしてアスペルガー!?~大人の発達障害と向き合う~ Kindle版』はアスペルガー症候群について解説
『マンガでわかる もしかしてアスペルガー!?~大人の発達障害と向き合う~ Kindle版』はアスペルガー症候群について解説して書籍です。精神科医の司馬理英子さんによって、孤立型、受動型、積極奇異型の特徴を明確に分けて紹介しています。

こちらは、教科書的にアスペルガー症候群の症状やタイプなどを解説しています。

今回の『心が読めない』は、実際にアスペルガー症候群である子弟とその親の側から、苦労と苦悩を具体的なエピソードで描くストーリーです。

本作は2022年12月30日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

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マイナス思考にならない環境づくりが大切

アスペルガー症候群は、小学5年生の片桐純一です。

「僕は、美名ちゃんのことが知りたいです。家族のことや、体重、身長。なんでも知りたいです」

クラスの子がからかいます。

「美名の体重は105kgだよ」

「ありがとうございます」

女の子が質問します。

「片桐くん。美名ちゃんの、どこが好きなの?」

「幼稚園の時、僕の誕生日にタンポポをくれました。3月30日の夕方4時頃です。南公園で咲いていた10本のタンポポで、長さは10cmから12cmです」

警察の供述調書じゃあるまいし。

事実ではなくて、その時の気持ちを聞いているのに。

女の子は呆れてしまいました。

給食では、偏食もさることながら、その言い分が振るっています。

「片桐くん。シチュー好きでしょ。どうして食べないの」

「お母さんのシチューは具が大きいけど、このシチューは小さすぎます。ルーの味も変です」

「それは、わがままというのよ。食べなさい!!」

「家ではF食品のルーなのに。これは違います!!それに小山先生。香水をつけてるから、近くに来られるととても嫌です!!」

「いつもと違う」と、拒絶反応を起こすわけですね。

それにしても、香水の件はまずいですよね。

先生も人間だから、へそを曲げるでしょう。

宿題を忘れた時は……やんちゃな北村くん。

「北村くん。漢字の宿題、プリント忘れてきちゃったの?」

「はい、うちの犬がプリント食べちゃったんです」

「ハハハ」

「じゃあ、片桐くんもそうなの?」

「僕は犬を飼っていません。ちなみに犬は、紙を食べません」

「ったく、冗談が通じない奴だな」

国語の時間。

「片桐くんは漢字が得意だから、黒板に書いてください。片桐くんにどんな感じを書いてほしいですか」

「はい。レモン」

「ゆううつ」「キリン」「バラ」……

片桐純一は、全部書いていきます。

「片桐くん、すごいね。漢字検定試験、受けてみたら」

「はい、僕は漢字検定試験受けます。僕は文字のカーブの形にうっとりします。もっと書きます」

「変わった子」は、横並びの好きな日本人の集団において、いじめの対象になります。

本人は、学校に行きたくないと言い出します。

家で、楽器のキーボードを練習すると。

不登校の口実ですと、実際には練習なんかしないものですが、何時間でも集中して練習するのもアスペルガー症候群にありがちな話です。

そして、上達ぶりが素晴らしく、親なのにほけぼれするほどです。

母親は、純一をメンタルクリニックに連れていきます。

「純一くんは多動性障害じゃないですよ」

「先生の体重は何キロで身長は何センチですか」

まだ言ってる。

「71kgで175cmだよ。……人と目を見て話さないところや、仕草、食べず嫌い、友達を作れない、知能に問題がなく見た目は普通ですね。……アスペルガー症候群です。アスペルガー症候群は、自閉症の一つのタイプで、脳の発達障害です」

「えーつ、自閉症!!」

「一見、自閉症に見えない自閉症といっていいでしょう」

「そうですか。治りますか」

「残念ですが治りません。なるべく長所を見つけて、褒めてください。この病気は、真面目で規則を頑なに守ります。曖昧なことを言うと、本人は意味がつかめないので、具体的に言ってください。『ゴミをゴミ袋に入れて台所の床を雑巾で拭いてください』と言えば、やってくれます」

「あ、そうですか。『ちょっとその辺を片付けてよ』って言ってもわからなかったんですね。だから学校でも、掃除ができなかったのね」

「ルールをきちんと作ってあげると、本人も助かります」

「純一は普通学級に行ってるんですが、イジメがあるようです。特殊学級(←漫画のママ)のほうがいいのでしょうか」

「この病気(←漫画のママ)は個人差があります。純一くんは特殊学級(←漫画のママ)に行って、好きなことに集中するほうがいいかもしれません」

んー、これは前回の、高次脳機能障害を描いた『消えた記憶』でも指摘したのですが、言葉の使い方に間違いがあります。

『消えた記憶』は、交通事故の後遺症で高次脳機能障害になった夫を妻が支え、夫は障碍を残しながらも新しい職場に社会復帰する話
『消えた記憶』は、交通事故の後遺症で高次脳機能障害になった夫を妻が支え、夫は障碍を残しながらも新しい職場に社会復帰する話です。『難病が教えてくれたこと8~失われてゆく記憶~』(なかのゆみ著、笠倉出版社)に収載されています。

作品の内容は良いので、残念ですね。

「特殊学級」ではなく「支援学級」、「病気」ではなく「障害」です。

医師は続けます。

「アスペルガー症候群は300人に1人いるといわれます。この病気(←漫画のママ)の人たちは、ソムリエになったり、弁護士やプログラマー、音楽家、医師、管制官、官僚、役人、NASAにも多くいるようです。軽度の人は、ビル・ゲイツやニュートン、アインシュタインなど有名です。男子に多い病気(←漫画のママ)ですね」

「300人に1人って、とっても多い病気ですね。じゃあなぜ、特殊学級(←漫画のママ)なんですか」

「他人の気持ちが理解できない反面、他人が自分をどう考えているか非常に敏感なので、嫌われるのを恐れ、不安定な関係にしがみつきます。多くの人が不登校の経験があります。それなら、理解してくれる学級でポジティブに勉強できる方がいいと思います」

「でも、すぐれた人達が多いんですね」

「さあ、それはどうでしょう。大人になって強迫性障害、不安障害などの合併率が極めて高くなることもあります。その人達の多くは、虐待の被害者だったことが最近わかってきました。純一くんがマイナス思考にならない環境づくりが大切です。嘘をつけない裏表のない正直で真面目なところを伸ばしてやってください」

それ以来、家ではスケジュール表を作り、純一には余計な神経を使わせて混乱させないコミュニケーションを両親は心がけました。

そして、母親は、笑顔や、人とあった時に「こんにちは」と挨拶する訓練をさせます。

うまくできたからといって、うっかり頭を撫でると、純一は混乱します。

運動もさせるようにしました。

2学期からは、同じ小学校の支援学級に移ることにしました。

純一はイキイキとしています。

パズルもすぐにできました。

そして、中学に進学。

両親は、高校に行かせるかどうか考えます。

大検も視野に入れます。

合唱コンクールでは、キーボードのスキルを生かして、ピアノを演奏。

生徒や保護者を驚かせます。

普通学級時代の同級生とWデートすることになりましたが、1人が都合が悪くなってこれなくなったものの、例によって純一は、雪の降る寒いところを朝から晩まで待って肺炎になってしまいました。

それでも気持ちに裏表がないので、決して人を恨むことはありません。

人の気持ちがわからないことはありますが、このように恨みつらみを根に持つこともないのです。

そして、走り高跳びの大会では、見事に優勝しました。

両親が、医師のアドバイスを守って、純一の「裏表のない正直で真面目なところを伸ばしてや」ったことで、よい結果が出ているのです。

まあ、実際にはなかなかこうはうまくいかないかもしれませんが、障害を多くの人に理解してもらいたいので、アスペルガー症候群の子弟をもつ親御さんだけでなく、そうでない人にもぜひ本書はお読みいただきたいと思います。

知らないから理解を助けてもらうために

『難病が教えてくれたこと』(なかのゆみ、笠倉出版社)は、全17冊にわたって難病や障害と向き合う家族を描いた短編マンガ集です。

『難病が教えてくれたこと』(なかのゆみ、笠倉出版社)は、全17冊にわたって難病や障害と向き合う家族を描いた短編マンガ集
『難病が教えてくれたこと』(なかのゆみ、笠倉出版社)は、全17冊にわたって難病や障害と向き合う家族を描いた短編マンガ集です。人間はいつ誰がそうなるかわからないし、そうなってもおかしくない。そんな厳しい人生の偶然を考えさせてくれます。

全17冊にわたり、認定されている難病、まだ認定されていない難病、そして障害などと向き合う家族の話を描いています。

一話完結で、1冊あたり3~5話が収録されています。

本書が話題にしたものだけでも、これだけあるのです。

世の中には、この何倍も難病や障害があります。

知らないばかりにその人を誤解していた、ということもあるので、こうした物語は理解を助けてくれます。

全17巻で完結と言わず、続編に期待したいと思います。

以上、アスペルガー症候群の苦労と苦悩を漫画化した『心が読めない』(なかのゆみ著)は、『難病が教えてくれたこと』第3巻に収録、でした。


難病が教えてくれたこと ~あなたの身近にいる闘病者たち~ 3巻 (家庭サスペンス) – なかのゆみ

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