ケトン体が人類を救う~糖質制限でなぜ健康になるのか~(宗田哲男著、光文社新書)は産婦人科医が実証済みの糖質制限の勧めです。カロリー、脂質、コレステロールなどに関する誤解を解き、ケトン体が糖尿病、認知症、がんなどに有効であるとします。
『ケトン体が人類を救う~糖質制限でなぜ健康になるのか~』は、宗田哲男さんが光文社新書から上梓しています。
糖質を制限することで、エネルギー源である体内のグルコースが欠乏すると、人間の体は脂肪由来のケトン体をエネルギー源とするようになるが、それがさまざまな人体の病気・不調に対する改善効果をもたらす、という内容です。
本書は、「本書で伝えたいこと」として、今の栄養学で間違っている6つの説(神話)を枚挙しています。カッコ内は私が付け足しました。
- カロリー(を減らせ)神話
- バランス(のよい栄養がいい)神話
- コレステロール(が多いのは良くない)神話
- 脂肪悪玉説(肉・動物性食品悪玉説)と
- 炭水化物善玉説 (野菜・植物性食品善玉説)
- ケトン体危険説
血糖値とカロリーには、何の関係もない。にもかかわらず、カロリー制限で糖尿病を治そうとする矛盾無意味で、かえって悪化させる。 低カロリーは体力が落ち、生活に支障が出るうえに、皮肉なことに、低カロリーなものには炭水化物が多く、かえって糖尿病は悪化する。
カロリーではなく、糖質量に注目して食事の管理をすれば、血糖値を管理できる。 薬を使わなくても、血糖値を管理できる。
食事は「バランスよく」と言って、じつは炭水化物を60%もとらせる。 タンパク質、脂肪は、それぞれ20%である。
ところがこの栄養比率には、学会も認めるように、何ら根拠がない。 それなのにこの比率は、金科玉条となってすべてを拘束している。
必須栄養素を完全に満たすには、肉や卵やチーズはもっとも簡単な食品である。しかし、お肉や脂肪は、今まで
「コレステロールが上がるから食べすぎないように」と教えられている。 この考えは、ついに公式に否定されたが(厚生労働省は2015年4月改訂の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」で取抑制目標値を撤廃)、ほとんどの医師や栄養士は、いまだこれを理解していない。
肥満は脂肪が原因。これはほとんどの人がそう信じているが、これこそが間違いであって、肥満は糖質過剰摂取で起こる。
ケトン体は危険な物質であるというのは、20年前の知識で、もはや前世紀の遺物である。今やケトン体は胎児、新生児のエネルギー源であって、健康と、アンチエイジングのエネルギー源である。
これらの大きな間違いが相互に補完しあうことで、炭水化物・糖質が中心の低カロリー食が推進され、今やますます、肥満、糖尿病、成人病、小児糖尿病を増やしており、それを膨大な薬剤で治療しようという馬鹿げた医療が進行中である。
これらの説に基づいた治療法は、完全に方向性が間違っているにもかかわらず、ほとんどの医師は気が付いていない。多くの医学会がガイドラインで治療内容を拘束しているため、自由に考える医師集団は、すでに壊滅している。
この間違った治療のもっとも顕著な例が、「妊娠糖尿病」 なのである。
本書は2023年2月23日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
この記事は、Kindle版をもとにご紹介しています。
赤ちゃんや胎児の栄養源はケトン体だった
そもそも、ケトン体とは何でしょうか。
本書は、ケトン体を簡潔に説明しています。
ケトン体というのは、ヒトが糖質を摂取しなかったときに、脂肪を分解して栄養にする代謝に代わって、そのときに出でくるもの
人間には、2系統のエネルギーエンジンがあります。
ひとつは、糖質をグルコースとして栄養源にするエンジン、もうひとつは、脂肪を分解してその代謝の際に出てくるケトン体をエネルギーとするもの。
本書は、後者になるように勧めています。
なぜでしょうか。
著者は、米の国房州(千葉)の出身で、実家が菓子屋。
米とスイーツは大好物で、産婦人科を開業した頃は、肥満体だったそうです。
当然、数値も上がります。
血糖値308mg/dl、HbA1cが9.0%(NSGP)。
普通の人は、血糖値が100を超えると「まずい」となり、HbA1cも6.0を超えないようにしますよね。
で、著者としても対応をしなければならなかったわけですが、糖尿病治療の3原則は、低カロリー、運動、投薬、でした。
著者は、「何となく、その道は納得いくものではなかった」といいます。
成果が出なかったんでしょうね。
そんなときに、釜池豊明さんの『糖質ゼロの食事術』(実業之日本社)。
釜池豊明さんは、著者によると、おそらく日本で初めて糖質制限をした人ではないかといいます。
著者も、1日1食の糖質制限をしたところ、血糖値だけでなく血圧や体重も顕著に下がりました。
それ以来、糖質制限に確信を持ったそうです。
宗田哲男さんは、産婦人科医という立場から、妊婦の糖尿病と安全な出産について取り組み、妊婦の糖質を制限したところ、糖尿病、妊娠糖尿病の妊婦でも出産できるようになったと紹介。
妊婦は、つわりなどで十分な食事ができず体に栄養が足りていない状態になると、尿中のケトン体が上昇すると言われています。
ケトン体が増えると、生まれてくる子に障碍がある、などといわれていましたが、それを著者は否定しています。
著者は、赤ちゃんや胎児の臍帯血や絨毛の、ケトン体(体内の脂肪の分解によって生まれる物質)の濃度を多数測定。
基準値の20~30倍になることを世界で初めて明らかにしました。
これはどういうことかというと、ヒトは本来、ブドウ糖ではなくケトン体をエネルギー源としていたことを暗示するといいます。
ところが、それを提案しても、保守的な学会ではもう反発を食らったとか。
しかし、ケトン食は今や糖尿病や肥満だけでなく、認知症やがん等にも有効として研究が進んでいます。
実は、私も、ケトン体目指して、低糖質の中華麺と、卵を多めに食して、そのかわりご飯やパンは一切口にしないようにしています。
某スーパーのショップブランドなんですが、トップバリューの『低糖質中華麺』を、やはりトップバリューの味噌ラーメンスープで、『ほぼ味噌ラーメン』をいただいています。
卵は多めに3つ。
おからとこんにゃくが原料で、ややぷりぷりしますが、糖質が、全体で250g中1.6gですから、まあごく僅かです。
このほか、不飽和脂肪酸の摂取のために、くるみをいただいています。
夜も、卵は2つと、くるみをいただきます。
そのかわり、ご飯はいただきません。
朝はいただきません。
朝を抜くことで、16時間断食になっています。
ダイエット、糖尿病対策、病気への抵抗力などいいこと尽くめ
宗田哲男さんのケトン体関連の著書については、『「ケトン体」こそ人類史上、最強の薬である 病気にならない体へ変わる“正しい糖質制限”』をご紹介したことがあります。
『スーパードクターズ!いま、糖質制限がすごい!』(ぴあ)では、糖質制限によるダイエットや、体内のケトン体増加による体質改善を解説しています。
著者はもともと、北海道大学で地質学を専攻しましたが、帝京大学医学部に入り直して医師になりました。
これまで、ケトン体は健康の近道という趣旨の書籍を上梓しています。
糖質制限を段階的に勧めたり、他の療法との併用を提案したり、より実践しやすい解説が書かれています。
具体的に、どのような食事メニューならいいのか、というテーマにフォーカスした書籍では、『2週間で効果がでる! ケトン食事法』(白澤卓二、かんき出版)をご紹介したことがあります。
本書は、ケトン体というエネルギーが産生されることで、
- ダイエット
- 気力・集中力のアップ
- 病気への抵抗力が高まる
- 糖尿病予備軍の仲間入りをせずにすむ
といったメリットがあるといいます。
同書では、完全糖質制限を2週間続ければ、体脂肪をエネルギー源として使用するケトン体体質に改善される、といています。
2週間なら、そんなに長い間でもありません。
ちょっと頑張ってみよう、という気になりませんか。
本書とともに、これらの著書についても併読されることをおすすめします。
以上、ケトン体が人類を救う~糖質制限でなぜ健康になるのか~(宗田哲男著、光文社新書)は産婦人科医が実証済みの糖質制限の勧め、でした。
ケトン体が人類を救う~糖質制限でなぜ健康になるのか~ (光文社新書) – 宗田 哲男
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