ゴハンスキー(清野とおる著、扶桑社)は、著者自身の食べ物や飲食店に関する、体験とこだわりを漫画化したB級グルメエッセイです。「トラウマ飯」「100円ローソンの干しほたるいか」など、大衆的で誰でも関心を持ってしまう身近な漫画です。
『ゴハンスキー』は、清野とおるさん自身のエッセイグルメコミックを扶桑社から上梓したものです。
初出は、『週刊SPA!』です。
SPA!コミックスというシリーズ名がついています。
この記事は、Kindle版をもとにご紹介しています。
個人的に通っている店のカルト的メニュー、編集者と行った寿司屋、友人と飲んだときのこだわりメニューなど、身近なネタと「あるある」的こどわりなどで毎話楽しませてくれます。
対象となるメニューや食品は、ジャンル的にはB級グルメになると思います。
ああ、いうまでもありませんが、B級だからA級よりも価値が劣るということではありませんよ。
安価でも美味しい、贅沢でなくても楽しめる、庶民的で気軽に食べられる料理のことです。
懐石料理とは、狙ってるところが違うんですよ。
いわゆるB級グルメ漫画としては、『男麺』(土山しげる、ゴマブックス)をご紹介したことがあります。
商社に勤める無類の麺好き主人公が、立ち食いそばや町中華の焼きそばなどで騒動を解決する話です。
それはさておき、本書はAmazonの販売ページビューによると、「読者も一緒になって驚きを体験できる、体験型、感情移入型の漫画だから」面白いと書かれています。
AmazonKindleでは、第1巻が2023年1月29日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
“自傷行為”に走るほどのゴボウ天の美味しさ!
本書第1巻を順に見ていきます。
第1話は、『岩のりそばとゴボウ天』です。
2ヶ月に1度、画材を買いに新宿へ繰り出す作者。
「赤羽から新宿まで物理的には超近いけど、精神的には超遠い…。でも世界堂以上に、品揃えの良い画材屋ないからなー。ていうか小腹空いたな。冷静に買い物するためにも、少し腹に入れておきたいところだ」
そこで目に入ったのが、『讃岐うどん・生そば かのや』。
たぶん、かのや 新宿東南口店のことでしょう。
ツイッターを見ると、ずいぶん食リポツイートありますね。
食券販売機で、『岩のりそば』(430縁)を注文。
かのや新宿東南口店@新宿
老舗のここは10年以上来てない
迷わず岩のりそばを発注
6分で着丼
ご対麺
真っ黒け
麺の太さはオーソドックス
かえしは甘くもなく辛くもなく
これぞジャパニーズスタンダード??
旨し#立ち食いそば pic.twitter.com/UNOxWhReCh— masakun (@masakun19690328) October 29, 2021
「いや、ちょっと軽すぎたのかも。トッピングでゴボウ天(130円)でもつければ、ちょうどいい重さになるかも!」
15時という半端な時間にもかかわらず、店内はそこそこ混んでいたそうです。
「いろんな職種の人が行き交う駅前の好立地だし、時間帯関係なく客は入るんだろうな」
ツイッターによる拡散も大きいでしょうね。
まもなくして、ゴボウ天岩のりそばのできあがり。
食券制度ですから、出来上がると呼ばれて、食券と引き換えに注文品を受け取るんですね。
「ゴボウ天…おっきいなあ。え……?ちょっとまって……」
一口サクッ
「揚げたて。しかも、すっげー美味い!!」
そばそっちのけで、ゴボウ天を半分ほどむさぼる作者。
「これじゃあ、ゴボウ天のりそばトッピングじゃん」と言って、なんとピシャっとおでこを叩いています。
えーっ、「立ち食い」の天ぷらが、自分のおでこを叩くような「自傷行為」に至るほど美味いのかよ。
読むものは、そうあっけにとられるでしょう。
すさまじいほどの表現力です。
「さて、岩のりそば(をすする)。」
次のコマには、波立つ海の光景。
「海。一瞬、海が見えた」
ほんとかよ~(笑)
「磯の香り高く、噛みごたえのあるハイクオリティな岩のりだった」
夢中でそばをすすりだす作者。
「美味い…美味いよコレ……。まさか新宿駅前で、『海』を感じることができるなんて…」
ふと小考。
「ってゆーか…そもそも、岩のりってなんだっけ?岩に生えている海苔?わかんないけど美味い!美味いけどわかんない!アイフォンで調べればすぐにわかるけど、まーいっか!」
「岩のり」をWikipediaで調べると以下のように表示されます。
岩海苔とは、海苔と呼ばれる食用藻類のうち、岩場に自生している天然のもの及びその加工品の総称である。日本各地や朝鮮半島やイギリスの一部地域で採取され、食用となっている。「天然のもの及びその加工品」ですから、養殖の岩のりというのは存在しないわけです。
一般には、クロノリをさすことが多いようです。
岩に生育している岩のりは、濃い黒紫色または、紫褐色などの光沢をしているとか。
作者は、食べ方も描いています。
「そば1/3ほどをすすったところで、(先に食べてしまった残りの)1/2のゴボウ天を投入。ぐちゃぐちゃに混ぜて、一気にすするのだそうです。
ぐちゃぐちゃにまぜるのなら、天かすではだめなんでしょうかね。
ま、いいか。
とにかく、トッピングでゴボウ天(560円)がすっかり気に入ってしまった作者は、新宿に来るたびに、かのや 新宿東南口店に入って注文することに決めたそうです。
ところが、2度目に来た時は、冷えたゴボウ天が出てきたとか。
揚げたてを期待した作者としては、がっかりしたわけです。
「毎度揚げたてを提供してるわけじゃないんだな。いや…冷めても十分美味しいけど、揚げたての味を知っちゃったからなあ」
まあ、温かくてサクサクした天ぷらって美味しいですよね。
「店員さんに言えば、揚げてもらえるのかな。いや…でもなんか申し訳ないし、無粋な感じもするし……」
まあそうですね。きっとお願いしたところで、
「揚げたのが全部捌けたらまた揚げますから」と、言われるだけなんじゃないかな。
だって、いちいち1人ひとりの客の言うことなんて聞いてたら、手間ばかり増えちゃいますからね。
作者はそこで、揚げたてができる時刻について、ヤマをはって来店することを考えます。
昼の混雑時が過ぎ、一息つく頃の13時45分と考えました。
うーん、そこまでこだわりますか。
近所ならともかく、しょっちゅう来るならともかく……。
しかし、このヤマははずれます。
作者によると、「5度目ぐらいの夕方」に行ったときに、やっと揚げたてにあたったとか。
いや、ですから、いつ揚げると決まったわけではなく、品切れになったときに揚げているのだと思いますけどね。
いずれにしても作者は、「たまに揚げたてに当たったときのラッキー感も含めて、俺はこの店を楽しんでいる次第である」と記しています。
そのため、以後他のメニューにも幅を広げようと思っても、結局来店して発券機を前にすると、ゴボウ天+岩のりそばを頼んでしまうそうです。
こんな感じで第1話が終了です。
こだわりの体験B級グルメコミックエッセイ
この調子で、第2話は『100円ローソンの干しほたるいか』の巻。
第1話同様、100円ローソンの干しほたるいかがおいしくて夢中になり、近隣の100円ローソンで売っているものを買い占めたそうです。
第3話は、『ダイソーの安ワイン』。
400円で、ソムリエの田崎真也さんも絶賛したというワインを紹介しています。
ま、紹介というよりも、やはり第1話のノリで体験したことを描いています。
そんな感じで、ジャンルとしては体験B級グルメコミックエッセイといったところでしょうか。
論より証拠で、ぜひ読まれることをお勧めします。
『ゴハンスキー』は、現在5巻まで単行本化されていますが、KindleUnlimitedの読み放題リストには、第1巻のみ含まれています。
つまり、第1巻を読んで面白かったら第2巻以降を買ってね、ということだと思います。
実際、第1巻を読み終わると、次を読みたくなります。
余談ですが、SPA!といえば、その前身の『週刊サンケイ』で、私は記事を書いたことがあります。
以上、ゴハンスキー(清野とおる著、扶桑社)は、著者自身の食べ物や飲食店に関する、体験とこだわりを漫画化したB級グルメエッセイ、でした。
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