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『セブンティウイザン~70才の初産~』(タイム涼介、新潮社)は、70歳の妻の初産を通して生命や人生の尊厳を考えさせてくれる

『セブンティウイザン~70才の初産~』(タイム涼介、新潮社)は、70歳の妻の初産を通して生命や人生の尊厳を考えさせてくれる話

『セブンティウイザン~70才の初産~』(タイム涼介、新潮社)は、70歳の妻の初産をめぐって、戸惑いながらも夫婦や人間としての輝きを改めて自覚する夫、すくすくと育つ娘・未来の2人3脚の家族を通して、生命や人生の尊厳を考えさせてくれる話です。

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「いつかできると信じてた」

『セブンティウイザン~70才の初産~』は、タイム涼介さん作画で、新潮社から発行されています。

NHKでドラマ化。

竹下景子と小日向文世が夫婦を演じました。


私は、実はドラマを知ってから、原作である本書を熟読しました。

70歳で妊娠・出産する話です。

5歳下の夫の、戸惑いと喜びもよく描かれています。

ドラマは、乳児のところで終わりましたが、その後どうなったのか知りたくて、原作も第5巻まで読了しました。

65歳で再雇用期間も終了した定年の夫。

いよいよ後の人生は余生だと、妻を温泉にでも連れて行ってゆっくり老後を送ろうかと思ったら、70歳の妻からは思いもよらない「第二の人生」幕開けの報告。

なんと「妊娠した」というのです。

夫は信じられない思いでしたが、妻は、「いつかできると信じてた」とキッパリ。

読者・視聴者のとくに多くの女性は、ここで感情移入すると思います。

表向きは、「70歳で妊娠なんてありえないよ」「ファンタジーだよ」といいつつ、心のなかでは自分ももしそうなったらいい、といい思いがまったくないわけではないでしょう。

だから、自分の思いを疑似体験できる期待が、一挙に高まるのです。

ネット掲示板で、炎上必発の話題の一番手に挙られるのが「高齢出産」です。

もっともらしい批判をしていますが、みんな羨ましいのです。

坂上みきが、2012年に53歳で妊娠したと報告した時、同世代で同じ関西系の遥洋子が「心が爆発」と率直に嫉妬心を表明しましたが、多くの人は遥洋子ほどフェアではありません。

「親が歳をとっていると、保護者会で子供が恥をかくから可愛そうだ」とか、「障害児が生まれるよ」とか、妊娠に喜ぶ人を傷つけながら、心のなかで悔しがっているのです。

だって、そうであろうがなかろうが、あんたに関係ないじゃない。

なんて反論しようものなら、もう大変。

かなり激昂した再反論は必至です。

まあそれはともかくとして、「感情移入」は子供のいない人だけでなく、子供がいてもそういう心境にある人もいるのです。

私の妻も、50歳過ぎても妊娠検査薬を持っていました。

妻の場合、大事故を経験して、今も後遺症の薬を飲んでいるため、妊娠はデリケートな問題なので神経質に調べる事情があるからですが、それにしても調べるということは、まだ可能性はあるのだ、と思っていることにほかなりません。

つまり、年齢や子の有無にかかわらず、女性の心をくすぐるセリフなのです。

本作は、ストーリー展開そのものも興味深いのですが、それだけでなく、登場人物の個々のセリフにも「あるある」「言えてる」「そうだよなあ」など、共鳴できることが少なくないのです。

そのセリフによって、笑ったり胸熱になったりしながら、自分の人生について考えさせてくれるのです。

出産を通して夫婦の絆や人生を再確認する

朝一は、定年退職を迎えた65歳です。

出世もせず、社交的とも言えず、両親ともはやく死別。

5歳上の妻・夕子とは見合いで結婚。どこかよそよそしい関係だったと感じている。

子供はいない。

本人曰く、「何もない自分の人生」。

つまらなかったから、その私を支えてきた妻はさぞつまらなかっただろう。

リタイヤしたこれからの老後は、妻を温泉にでも連れてってのんびり過ごそう。

そう考えていたところ、夕子が勤め先で気分を悪くしたので、儀礼的な慰労会を体よく断り帰宅します。

「医者はなんて?」

「はい…私…」

「どうした?」

「妊娠しました」

疑う夫。ひと通り反対尋問をします。

「まさか産むとかいわないよな?」

「決まってるでしょ、産むわよ」

「そんなことしたら自分が死んでしまうんじゃないか?」

「産まなくてもどのみち死ぬわよ!」

パソコンで、高齢者の出産を調べていると、妻が背後から陽性と出た妊娠検査薬を尿のしぶき付きで放り投げてきます。

セリフや動作が生き生きしていて、70歳の妊娠という設定に全く違和感がありません。

検査で出かける時、電車で席を譲られます。

「目立ってきたのかしらお腹」

「いや単純に俺たちが……」

パパママ教室で……

「ここにいる人はみな少なからず苦労した仲間に見えてきたわ」

ところが周囲は、まさかあの老夫婦が……、と目引き袖引き。

「我々は仲間に見られていないようだが」

医師に帝王切開を勧められて……

「でも帝王切開したら二人目以降も帝王切開になるんですよね」

(朝一の心の声)「二人目以降っ!!」

笑いだけではありません。

朝一「命の保証はできないということですか?」

医師「はい…しかしそれは奥様が20歳でも同じことです」

「つまり何もわからないのですね」

「はい ただ…「おめでたいこと」…としか」

「なるほど…それが聞けてよかったです」

出産までの間に、夫婦はお互いを思いやり、生まれる子どもをかすがいに夫婦の絆を再確認します。

思えば、同世代の夫婦に子供が出来るたびに、少しずつ人付き合いが減っていった2人。

小型犬を飼いますが、夫婦喧嘩をすると粗相をして気を引くことで、喧嘩を止めてくれた大切な家族だったのに、20年で天寿を全うしました。

その直後の妊娠だったことも、ストーリーの中で描かれています。


「何もない自分の人生」と思っていた朝一に対して、「そんなことはないよ。人生最後までわからないし、それを感じるのはこれまでの人生があったからなのだ」と、作者が応えているようなモチーフが胸熱です。

無料でも読める今が購読のチャンス

『セブンティウイザン~70才の初産~』(タイム涼介、新潮社)は、LINEマンガで今すぐ無料で第1話が読めます。


AmazonKindleでは、第1巻と第5巻が読み放題リストに入っていました。

ストーリーは、すでに生まれた子供がランドセルを背負う続編『セブンティドリームズ』も発表されています。


ぜひご購読をお勧めしたいですね。

以上、『セブンティウイザン~70才の初産~』(タイム涼介、新潮社)は、70歳の妻の初産を通して生命や人生の尊厳を考えさせてくれる話、でした。


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