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『ゼロから学ぶ仁義なき戦いー超入門編』(市民健著)はヤクザ映画の金字塔を論考。『実話ナックルズ』に収録されています

『ゼロから学ぶ仁義なき戦いー超入門編』(市民健著)はヤクザ映画の金字塔を論考。『実話ナックルズ』に収録されています

『ゼロから学ぶ仁義なき戦いー超入門編』(市民健著)はヤクザ映画の金字塔を論考。『実話ナックルズ』に収録されています。来年(2023年)で公開してからまる50年になる『仁義なき戦い』が、観る者を心酔させた理由を検証しています。

掲載されている媒体は、『実話ナックルズ』(2021年12月・2022年01月合併号、ミリオン出版/大洋図書)です。

実話系の漫画や記事が収録されている雑誌です。

「実話」といえば定番の裏社会や事件もの、芸能スキャンダル、性風俗、格闘技、オカルト、グルメ、サブカルチャーも扱っています。

ただし、グルメと言っても、美味しいお店紹介ではなく、まずいカツ丼ベスト10のような、ネガティブにひねった切り口であるのが特徴です。

『ゼロから学ぶ仁義なき戦いー超入門編』(市民健著)は、その中で「サブカルチャー」にあたる読み物です。

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東映が実録物にカジを切った契機となる作品

『仁義なき戦い』は、邦画史に残る作品と言われています。

作品自体が面白いことと、作品が映画史に影響を与えているからです。

『仁義なき戦い』が制作・配給されていたのは、波がドップーんと岩にあたるオープニングでおなじみの東映です。

『仁義なき戦い』以前から、東映でヤクザ映画はありましたが、その当時は鶴田浩二や高倉健、藤純子らによる様式美や予定調和を基本とした任侠物語。

義理人情に厚く、正しい任侠道を歩むヒーローが描かれていました。

一方、『仁義なき戦い』は、現役のヤクザだった美能幸三さんの手記を、飯干晃一さんがノンフィクション小説にまとめ上げたものが原作となった、いわゆる「実録もの」といわれる群像劇です。

そして、鶴田浩二や高倉健の作品は、任侠としての美学を大事にしましたが、『仁義なき戦い』は暗殺、裏切り、報復など、任侠という綺麗事がすっ飛んだ、血で血を洗う争いが描かれました。

これが、大ヒット。

東映は、仁義なき戦いのヒット以来、田岡一雄・山口組三代目組長(山口組三代目)、菅谷政雄・菅谷組組長(神戸国際ギャング)、京阪神殺しの軍団(柳川組)、川内弘・川内組組長(北陸代理戦争)など、その世界の実力者を主人公にした実録ヤクザシリーズを5年にわたって作り続けました。

『網走番外地』と『仁義なき戦い』の違い

『仁義なき戦い』は、広島で実際に起こった抗争について、当事者だった美能幸三さんの原稿用紙700枚に及ぶ手記をもとに、飯干晃一さんが著した小説『仁義なき戦い 広島やくざ20年の記録』です。

映画では名前を変えていますが、原作の『仁義なき戦い』はすべて実名です。

『週刊サンケイ』で連載された時は大きな話題を呼びましたが、本記事『ゼロから学ぶ仁義なき戦いー超入門編』によると、美能幸三さんは月刊誌に発表されたあるルポが事実と異なることを書かれたための反論として手記を綴ったので、実名が発表の条件だったそうです。

それによって、ヤクザ社会に詳しくないものでも、広島のヤクザ事情や神戸の二大勢力の介入について知ることができました。

余談ですが、映画化されたことで、美能幸三さんは東映の衣装を払い下げてもらい、貸衣装屋を始めたそうです。

いずれにしても、裏社会のことが、実名で詳細に書かれた書籍として大変に価値があり、映画史的にもジャーナリズム史としても、特筆すべきノンフィクションだと思います。

それが東映で実録映画となり、昭和40年代後半から50年代にわたって、深作欣二監督、笠原和夫脚本、菅原文太主演で5本制作されました。

主役はヤクザですが、決してヒーローではありません。

Facebookで、私と「友達」でつながるある人が、「『仁義なき戦い』は、せっかく登場人物の名前を覚えても、すぐに殺されてしまう」と書き込んでいましたが、作品の本質をウィットに富んだ表現で示していると思いました。

まさにストーリーが進むほど屍を積み重ねていき、任侠などという綺麗事はどこかへいってしまった感情や打算など人間としての弱さ、理屈を超えて発する感情、はかなさなどを作品は活写していました。

実録映画のために、何をどこまで演じるべきかというギリギリの判断が、都度都度演者にもスタッフにも求められた、重いけれど意義のある仕事だったと思います。

東映生え抜きの松方弘樹が、松竹出身の菅原文太に主役をとられて嫉妬した、金子信雄が病気をおして出演した、荒木一郎が「広島ロケが怖い」といって降板したなど、たくさんの裏話も聞きます。

東映は、『仁義なき戦い』のヒット以来、田岡一雄・山口組三代目組長(山口組三代目)、菅谷政雄・菅谷組組長(神戸国際ギャング)、川内弘・川内組組長(北陸代理戦争)など、その世界の実力者を主人公にした実録ヤクザシリーズを5年にわたって作り続けました。

視聴者はピカレスクというより「力作」を求めている

『実話ナックルズ』(2021年12月・2022年01月合併号、ミリオン出版/大洋図書)は、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

AmazonUnlimitedには、ヤクザを描いたピカレスクロマンの漫画が多数読み放題リストに含まれています。

それはもちろん、読者が多い人気作品であるからにほかなりません。

暴力団排除条例(暴排条例)ができて以来、コンビニのコミックス欄にあったピカレスク漫画が、今は一切ありません。

もちろん書店にもありません。

販売チャンネルを失ったのですから、その関連の新刊本も作られていないようです。

以前は、竹書房というところで、実話誌に連載していたピカレスク漫画を単行本化していました。

私は、実話誌に連載されていた、溝口敦さん原作、ももなり高さん作画の漫画をよく読みましたが、連載された事実はあるのに、その中の『柳川次郎物語』は単行本化されませんでした。

新しく作られないのなら、すでにあるものを見たいという待望論は十分考えられることです。

そこで、AmazonUnlimitedにも登場しているのでしょう。

人気があるのは、別に暴力を肯定したり、暴力団に入りたかったりするわけではなく、やはり作品としてきちんと人間を描いているからではないでしょうか。

千葉真一さんは本当は大友勝利役ではなかった

記事では、映画の解説とともに、『アンケート企画 不良100人に聞いた 俺の好きなキャラはこいつだ!』という囲み記事が興味深い。

仁義なき戦い最大の魅力といえば、実力派俳優たちが演じた濃すぎるキャラクターである。主役から脇役までが光り輝く映画は『仁義なき~』をおいて他にあるまい。そこで仁義マニアの不良100人に好きなキャラを聞いてみた!

というリード以下、登場人物名と演者に酷似したイラスト、そして簡単な解説が書かれています。

第1位は、もちろん主役の広能昌三(菅原文太)

“仁義なき”世界で仁義を重んずる絶対的主人公、と書かれています。

「言うたことないけどな。実は広能にあこがれてヤクザになったのよ」(三次団体組長、60代)というコメント付きです。

第2位は、大友勝利(千葉真一)

渡世の掟も仁義もぶち壊す超ド真正アウトローと書かれています。

実は本記事の後に、若山騎一郎さんのインタビュー記事が掲載されているのですが、そこには、『仁義なき戦い 広島死闘篇』で大友勝利を演じた千葉真一さんは、実は北大路欣也さんが演じた山中正治役だったという新事実も告白されています。

私は、アンケート結果のように、大友勝利には千葉真一という役者の凄みが表現されていたと思うのですが、すでに東映のスター俳優になっていた千葉真一さんが、わざわざ演じなければならない役だったのか、若山騎一郎さんによると、「悔しさもあったのではないか」と振り返っています。

興味深いお話ですね。

いずれにしても、『仁義なき戦い』ファンで未見の方がいらっしゃったら、ぜひ一読をおすすめいたします。

以上、『ゼロから学ぶ仁義なき戦いー超入門編』(市民健著)はヤクザ映画の金字塔を論考。『実話ナックルズ』に収録されています、でした。


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