タワマンに住んで後悔してる (グラハム子/著、窓際三等兵/その他) は、タワマンに住む家族を中心にした家族3組の虚栄と内情を描いています。「タワマン文学」の先駆者、窓際三等兵さんの原作をグラハム子さんが漫画化しました。
タワマンとは、20階以上の超高層マンションのことです。
タワマンは、上階部が街全体を見下ろす眺望、共用施設の充実ぶりなど、一般的なマンションよりも住まいに関する景観の高さや快適さなど、ステータス感が溢れる建物です。
居住者は、大企業の役付社員であったり、成功した起業家であったりします。
それだけに、時として居住者(といってももっぱら妻)同士のマウンティング合戦が行われたり、子供を何が何でも有名私立に受験させる見栄で、我を忘れた毒親になってしまったりと、あまり人間的には健全とはいえない実態もあるようです。
本作は、九州から、憧れの東京転勤でタワマンに住むことになった渕上(ふちがみ)家を中心に、サバサバ系バリキャリウーマン・瀧本香織(中層階在住)、一部上場商事会社の夫でアメリカ帰りのボスママ的存在の堀家(高層階在住)の3家族を中心に、世帯同士、もしくは家庭内の不協和音が生じていくさまを描いています。
あらすじ
九州から念願の東京転勤が叶い、憧れだったタワマン低層階の部屋を購入した渕上(ふちがみ)家。
専業主婦の渕上舞は、東京の生活に馴染めずにいましたが、小学5年生の息子・悠真が入った野球チームには同じタワマンに住むママ、サバサバ系バリキャリウーマン・瀧本香織(中層階在住)とボスママ的存在のエリート駐在妻・堀恵(高層階在住)の2人がおり、すぐに仲良くなります。
しかし、転入早々、舞の息子の悠真がエースになったことで、それまでエースだった奏汰の母・恵がヤキモチを焼き、徐々に不協和音が生まれてきます。
日常的なやり取りの中に、低層階と高層階、専業主婦とバリキャリ、子どもの学力、夫の職業など、さまざまな軸で見えない競争意識に駆り立てられ、マウンティング合戦をする大人たちの虚栄と内情が描かれます。
渕上舞は、そうした人間関係のストレスのはけ口として、息子・悠真の有名私立中学受験にのめり込みます。
野球をしたかった悠真に塾に行かせ、夜も寝せずに机に向かわせ、夫は、その現状に眉をひそめながらも、「教育はお前に任せる」と言って、正面から向き合って子育てについての夫婦の話し合いをしません。
それどころか、そのストレスは、サバサバ系バリキャリウーマン・瀧本香織との「隠れた交際」に走ってしまいます。
漫画では、2人は不倫関係としては描かれていませんが、瀧本香織は夫と離婚をしてしまいます。
マウンティングに余念がなかった堀恵は、夫が仮想通貨に関わる起業に失敗して、一部上場企業の社員も辞職し、タワマンも引き払い、郊外の借家に引っ込みます。
渕上家では、とうとう悠真が倒れてしまい、舞は、やっと目が覚めます。
そして、舞と悠真は九州に帰り、夫は東京に残って再起を期す、というストーリーです。
要するに、タワマンという「伏魔殿」に住むことで、3世帯とも不幸な経験をして、人生の幸福とはなにかを、もう1度仕切り直しで考える、という話です。
中学お受験を考える
マウンティング合戦については、もう仏教で言う煩悩以外の何物でもないですね。
今の幸せと向き合うことなく、もっと上をと欲をかいている限り、永遠に幸せにはなれません。
「お受験」については、親御さんは慎重に考えてほしいです。
受験勉強というのは、入学試験のためだけのもので、本当の学力にはなりません。
つまり、合格できなかったら、受験勉強の時間とエネルギーは、全くの無駄であり、挫折感だけが生涯残ります。
小学校高学年といえば、子どもの大事な成長の時間。
親のエゴで収奪することは、絶対に許されないことです。
たしかに、日本は今も、学歴による人生設計の違いは否定できません。
ただし、少子化や学校のあり方も変わり、近年高学歴の「なり方」に変化が生じています。
たとえば、私の現役の頃になかったこととして、
1.少数だがA0や一芸入試など、従来の試験頭以外にも進学の道がある
2.「飛び級」がある
3.通信課程を卒業する
といった道ができました。
「1」は、漫画にも出できましたが、慶応大学や早稲田大学で実施しています。
「2」は、大学に入らなくても、社会人として実績を積むことで、ひとっとびに大学院に進学できることがあります。
芸能人では、秋吉久美子さんや、恵俊彰さんは、大学に行っていないのに早稲田の大学院が受け入れています。ま、失礼ですが恵さんの方は広告塔だと思いますけどね。
Fラン大学からたとえば早慶の大学院に行く「学歴ロンダリング」という方法もあります。理系は研究職など最低でも修士まで求められますが、大学院まで行くなら、無理して中学から頑張らなくても、「最後」で辻褄を合わせればいいのではないでしょうか。
「3」は、松田聖子さんが成功例になりました。中央大学も慶応大学も、通信課程に試験はありません。
早稲田の通信だけは試験があったかな。月謝は高いですが、いずれにしても決して附属中学(早稲田実業とか)ほど超難関ではありません。
中学受験で、超難関に合格できるのはひとかけら。
そこから、有名大学に進めるのは、さらに一握りです。
あとは不合格による挫折。
大切な子どもの人生を、そんなリスクの高いことに使うのは、私は正気の沙汰ではないと思います。
タワマンの漫画、お受験の話にフォーカスしてしまいましたが、受験に気が違ったようになっている舞の姿は、教育ママの醜さを上手に描いていると思いました。
私はタワマンに住んだことがないのでわかりませんが、お住いの方はいらっしゃいますか。