ハトのハト子 (たかの宗美著、竹書房)は、野鳥の鳩を保護した著者が、その後も飼育し続けながら気づきを漫画化しました。私たちは野鳥を飼育する機会はありませんが、著者の住まいは野鳥の治療が無料など野鳥保護に理解のある自治体のようです。
『ハトのハト子』は、たかの宗美さんが竹書房から上梓した漫画です。
縁あって、ハトを保護してそのまま飼い始めた著者が、日々の暮らしで経験したハトの生態をリポートした実録・ハト観察日記です。
これまで、文鳥、姫ウズラ、インコなどの鳥飼育漫画をご紹介してきましたが、ハトは初めてです。
それもそのはず、鳩は野鳥のため、法律で取り決めがあります。
国際的にも、多くの国や地域において、野鳥を飼うことについて法律や倫理的な規定があるのです。
法律に関しては、野鳥を飼うことが禁止されている国もありますし、許可制度がある国もあります。
日本にも鳥獣保護法があり、野鳥を飼うことが禁止されています。
倫理的な観点から見ると、野生の鳥を捕獲して飼うことは、その鳥が自然界で本来持っていた自由を奪うことになります。
野鳥は自然界で生きる生物であり、飼育下で生きることは本来の生態系とは異なります。
また、野鳥を飼うことによって、鳥が本来生息していた場所から持ち去られることになる場合もあり、その結果、生態系に影響を与える可能性があります。
その鳥獣のエサ(天敵)になる生物が増殖しすぎてしまったり、ペットとして人気が出た結果、乱獲され絶滅に追い込まれたりなど…。
以上のような理由から、多くの国や地域で野鳥を飼うことは、法律や倫理的に制限されています。
鳥獣というと、獰猛な動物を連想しますが、スズメやハトがそれにあたります。
鳥獣および鳥類の卵を捕獲・採取・損傷することは、『鳥獣保護法第8条』で禁じています。
もし、違反した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金、飼養すると6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。
ただし、同第9条では、都道府県知事の許可を受ければ飼育してもいいことになっています。
なんじゃい、だったら「禁止」ではないだろうと思いますが、正確には、「許可がいる」ということですね。
鶏やウズラは家禽として、飼育にあたっては都道府県知事の許可を受けなければなりませんが、それと同じ扱いですね。
まあたぶん、届出制ではなく、怪我をしている、病気で弱っているから保護する、という正当な理由があるときに許可するということなのだと思います。
本作によると、著者の住む自治体は、野鳥の治療は無料といいますから、おそらくその「許可」はかなりハードルが低い、というより保護を積極的に行ってほしいのではないかと思います。
動物病院て、人間と違って健康保険がないから大変なんですよね。
ペット飼育者泣かせです。
まあ、民間の新種保険でペット医療費保険はありますが、それ自体、高い保険料を支払わなければなりませんからね。
ということで、本書は2023年4月18日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
ハトの種類
日本で見かける野生のハトは、意外と多いんですよ。
主に6種類いて、世界では約310種類のハトがいるといわれています。
生物学的には、コウノトリ目・ハト科に分類されます。
以下に代表的な種類をいくつか紹介します。
ロック・ピジョン(Rock Pigeon):野生種のハトで、都市部でもよく見られます。灰色の体色をしており、首には白いストライプがあります。
キジバト(Mourning Dove):北アメリカに生息する、小柄なハトです。灰褐色の体色をしており、首回りに黒い斑点があります。
ハトビタキ(Spotted Dove):アジアやオーストラリア、アフリカに生息する小型のハトで、茶色い羽毛に黒い斑点があります。
ハシブトガラスハト(Nicobar Pigeon):東南アジアやオーストラリア北部に生息する、大型のハトです。青緑色の体色をしており、尾羽に白い模様があります。
シロハラハト(White-crowned Pigeon):カリブ海や南フロリダに生息する、大型のハトです。体色は暗灰色で、頭部には白い羽毛があります。
これらのハトの多くは、種類によって食性や生息環境が異なりますが、一般的には果物や種子、昆虫などを食べることが知られています。
また、多くの種類が都市部でも見られるため、身近な鳥として知られています。
木の枝などに巣をつくり木の実や穀類を食べるようですが、人が餌をヤるとポップコーンでも食べますよね。
以前、YouTubeで、玄関の前においてあった自転車に勝手に巣を作って、ひなを育てているハトを見たことあります。
自転車の持ち主が、巣に手をかけようとすると、親鳩は羽をバッと広げて威嚇するんですよ。
いや、怖い怖い。
そうかと思うと、いくら尽くしても懐かず、いや、懐いているのかも知れませんが、とにかく飼い主の手を突く突く。
手が傷だらけではないかと心配してしまう飼育リポ動画もありました。
前述のような、ヒメウズラやインコとはどうも勝手が違います。
さすが、野鳥ですね。
しかし、著者はそれでも辛抱強く飼い続けました。
と、書くと、なんかいやいや飼っているように見えるかな。
そうでもないんですよね。
安易に媚びるようななつきがないからこそ、飼育のしがいがあるということだと思います。
猫とハトの飼育を両立
本書の最初には、著者が飼った『ハト子のすきなもの』が描かれています。
エサは、麻の実が好物だそうです。
塩土は、ハト子はそのう(食べ物を一時的に保管しておくところ)が弱いので得意ではなかったそうです。
青菜は、「食べるのが好きなのか、ちぎって投げるのが好きなのか」わからなかったそう。
ホコリ、汚れ、かさぶた、ほくろなど「ポチっとしたもの」は突きやすいそうです。
そして、著者の父親に懐いたそうです。
背中を撫でると卵を生んでしまうぐらいとか。
もちろん、無精卵ですよ。
そして、女性である著者に敵対心を抱いていたということで、メス鳩なんですね。
漫画では、すでに飼っているところから始まっています。
飼い始めは、「数年前、翼を折って庭にうずくまっていた」そうです。
病院に連れて行ったものの、「もうこの子は飛べませんね」と言われたとのこと。
ということは、もう野生では生きていけないということ。
さすれば、「飼いますか?」と問われて、「ハイ」となったそうです。
民家の庭でうずくまっているとは、めずらしいですね。
カラスやスズメならわかりますが。
ただ、私だったら戸惑いますね。
野鳥ですから、ノウハウがないですからね。
インコの飼い方とか、書店に行けばありますが、鳩の飼い方はないでしょう。
水を飲んだり、鳴いたりするときの、著者の驚きなども描かれています。
水は吸い上げて一気飲み、鳴き声も、公園で鳴いているポッポロポーというアレとは違うらしいのです。
そして、やはりクチバシで、手の皮膚の柔らかいところを噛むそうです。
漫画の描き方から見て、出血もしているよう。
これは痛そうです。
そして、頭の上で糞をするとか。
風呂に入らないから、モアーっと煙(汚れ)がたっているそうです。
卵を生むと、肛門が大きくなるため、排泄も大きくなるといいます。
著者は、猫も飼っているそうですが、猫とハトの飼育を両立させているというのはすごいですね。
生き物を飼うのが好きなんですね。
たぶん、そういう方は、懐くから飼いたいとか、懐かないから嫌だという感覚ではないんですよね。
私が以前勤めていた会社の先輩で、熱帯魚マニアがいました。
その先輩が言うには、熱帯魚は別に愛想を振りまく訳では無いし、その体や生んだ卵が食用にもならないし、要するに飼うことに対する目に見える見返りはないんだけれども、それがいいというんですね。
たかの宗美さんも、そういう心境ではないのでしょうか。
ところで、私はこれまで、ハト子の説明を過去形で書いていますが、それでお察しの通り、作中にハト子は亡くなり、そこで本作も終了しています。
本作では、鳩の寿命は30年と描かれていますが、私たちがよく見かけるカワラバトという品種の平均寿命は6年といわれています。
著者が保護した時点で、すでにある程度の年齢だったとして、やはり早晩寿命は来るわけですね。
なくなったのも突然だったそうです。
ほとんどの動物は、人間よりも寿命が短いですから、その体験は避けて通れないわけで、飼うに当たってはその覚悟があるかどうかも自分の胸に確認しなければなりませんね。
でもまあ、放っておいたら、そのまま命も尽きたでしょうから、保護した著者は善行をされたと思います。
以上、ハトのハト子 (たかの宗美著、竹書房)は、野鳥の鳩を保護した著者が、その後も飼育し続けながら気づきを漫画化しました。でした。