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『ブロンドの毒殺魔』(神崎順子作、ユサブル)は、アメリカ・アラバマ州で起こった家族ヒ素殺人事件容疑者を描いた実話マンガ

『ブロンドの毒殺魔』(神崎順子作、ユサブル)は、アメリカ・アラバマ州で起こった家族ヒ素殺人事件容疑者を描いた実話マンガ

『ブロンドの毒殺魔』(神崎順子作、ユサブル)は、アメリカ・アラバマ州で起こった家族ヒ素殺人事件容疑者を描いた実話マンガです。その所業の凄まじさもさることながら、たんなる極悪人の話ではなく、ドラマのようなエンディングも待っています。

本書は、アメリカ合衆国アラバマ州アニストンで起こった不審死事件から始まっています。

製鉄所の主任を務める、フランク・ヒリー(45歳)という男性が急死しました。

突如として凄まじい嘔吐で入院し、5日間苦しんだ末のことでした。

45歳という年齢を考えると、突然であると同時に、自然死として説明が困難なことでした。

亡くなったフランク・ヒリーの横で悲しんでいたのは、マリー・ヒリー(42歳)。

実は、夫を死に追いやった真の犯人こそは、この美しい妻でした。

これは、彼女の所業の端緒になりました。

続いて、マリー・ヒリーは毒薬・ヒ素などで、なんと実の母親、娘と次々にあやめていきます。

何が彼女をそこまでさせたのか。

その背景には、際限のない女性のエゴと欲求によるものがありました。

ところが、話はたんなる極悪人の所業では終わらず、まるでドラマのようなどんでん返しが起こります。

本書は、家族ヒ素殺人事件容疑者の生き様を描いた実話マンガです。

この事件は、現在もネットで検索すると詳細を知ることができます。

その経過は読み物によって若干異なりますが、以下は本書に沿ってあらすじを書きます。

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次々起こるヒ素を使った不審死

本作の主人公は、マリー・ヒリーといいます。

世界恐慌の真っ只中にある1933年。

共働きの両親に生まれたマリー・ヒリーは、かまってもらえないかわりに、高価なものでも次から次に買い与えられ、わがままで物のありがたみを教わらずに大きくなりました。

さらに不幸なことに、彼女は美人でもありました。

ですから、周囲も彼女には優しい。

しかし、両親や周囲の人々から甘やかされたらどうなるか。

彼女は、自分が中心に地球が回っているかのようなワガママで強欲な学生時代を過ごし、またそれを周囲が許すことでますます増長していきました。

そして、「何でも買ってくれる」ことを約束した、3つ年上のフランク・ヒリーと学生のうちに結婚。

マイクとキャロルという一男一女はもうけましたが、娘時代に染み付いた浪費癖と自己愛ぶりはそのままでした。

浪費によって借金は増えていきましたが、なぜかそんなときに夫が急死。

伝染性の肝炎と死因が診断され、マリー・ヒリーは3万ドルの死亡保険金を受け取りました。

多額の保険金を得た彼女は、保険金で借金を清算した後も浪費を続け、またしても新たな借金を増やします。

すると、今度は自宅が火災になります。

それによって、火災保険、動産保険、盗難保険などの保険金が支払われました。

それでも浪費癖が収まらない彼女は借金に追われ、逃げ回る日々。

見るに見かねた亡夫の両親が、「私たちの家で暮らしなさい」と声をかけます。

ところが、今度は亡夫の母親が他界します。

さらに、マリー・ヒリーの実の娘キャロルまでが、父親と同じ症状で入院します。

娘の体内からは、大量のヒ素が検出されました。

ヒ素による殺人はこれが初めてではありませんでた。

警察が掘り起こした墓から出てきた死後4年の亡夫の亡骸は、ヒ素特有の防腐作用で腐敗していませんでした。

さらに、他界した亡夫の母親の肝臓からもヒ素が検出されました。

マリー・ヒリーは別件逮捕されましたが、保釈金をポンと払ったうえで逃亡します。

今までと全く違う給料は安く、貯金もない男性と出会う

マリー・ヒリーは、数カ月後にジョージア州を経てフロリダに流れ着きました。

そこで11歳サバを読んで髪の色を替えて別人を装い、造船工ジョン・ホーマンと一緒に暮らすようになります。

またもや金持ちを捕まえたのか。

そうではありませんでした。

造船工ジョン・ホーマンは、給料は安く、貯金もありませんでした。

本来なら、彼女の価値観とは相容れないはずの男性のはず。

しかし、彼女が病気で化粧をしていないときでも、変わらず優しくしてくれることで彼女は情にほだされました。

悪い癖(ヒ素殺人)は使えず、優しくされると罪の深さが胸をえぐるからと、心臓の病気により入院先で死んだことにしていったんは別れます。

しかし、彼女は造船工を忘れられず、双子の妹という設定にして、自分から造船工のところに戻ってきます。

双子とは、なんとも意表をついたアイデアです。

模範囚で仮釈放を得たものの、最期は自死か

マリー・ヒリーがやっと人並みの幸せを実感できた矢先、警察が彼女を連行します。

といっても、警察は同名の麻薬密売人と間違えただけ。

ところが、自分の過去の犯行がバレたと早合点した彼女は、わざわざ自分からうたってしまい、逮捕されます。

さて、事情を知ってしまった造船工ジョン・ホーマン。

しかし、彼女には愛想を尽かさず出所を待ち続けます。

いえ、ただ待っているだけではありません。

全財産を投じて弁護士費用を捻出し、自らは拘置所に近い安ホテルに移り住んで彼女を支えたのです。

なるほど、彼女が改心して好きになっただけのことはあります。

その誠意に応えようと、彼女はなんと模範囚で過ごして3日間の仮釈放を得ました。

ところが、造船工ジョン・ホーマンには別れを告げることもなく、3日目の朝に突然造船工の元を去ります。

そしてその4日後、マリー・ヒリーはが子供の頃に住んでいた家のポーチで、全身ずぶ濡れで体温の低下による心不全のために死亡したところを発見されました。

過保護はネグレクトの一形態

本書の宣伝コピーは、

殺人・変身・逃亡の果てに悲惨な末路を歩み”アメリカの福田和子”の異名をとる稀代の女犯罪者の人生をスケール感たっぷりに

と書かれています。

しかし、家族の命を奪うことをしても、人間らしい優しさに包まれた本当の幸せを経験したのです。

しかも、逮捕されても男は待っていてくれたのです。

刑務所に帰って、残りのおつとめをしてからでも造船工は待っていてくれたかもしれませんが、自分の罪を自分自身が許すことができず、贖罪のつもりで命をたったのでしょうから、「悲惨な末路」とは違うような気がしました。

それにしても、またしても「不幸な犯罪の背景に毒親」ですね。

毒親の三要素は、過干渉、暴力、ネグレクトといわれますが、今回は物を買い与えて済ませるということで、ネグレクトの一形態といえるかもしれません。

あまりダメダメと押さえつけてもいけませんが、無原則に何でも買い与えるのは考え直したほうが良いですね。

以上、『ブロンドの毒殺魔』(神崎順子作、ユサブル)は、アメリカ・アラバマ州で起こった家族ヒ素殺人事件容疑者を描いた実話マンガ、でした。


ブロンドの毒殺魔~夫、実母、娘を手にかけた女~/ザ・女の事件Vol.1 (スキャンダラス・レディース・シリーズ)

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