『ミトコンドリア健康法』(エッセンシャル出版社)は、ミトコンドリアが体の不調や病気に影響を与えているとして活性化を解説しています。日本免疫病治療研究会会長・西原克成医学博士に話を伺う形で、ミトコンドリアについてまとめています。
「どの病院に行っても、何をしてもなかなかよくならない病気は、ミトコンドリアが障害を受けたことが原因。ミトコンドリアを活性化することが必要なのです」
と、冒頭でコメントが紹介されているのは、日本免疫病治療研究会会長・西原克成医学博士。
通称「ミトコンドリア博士」だそうです。
実際にミトコンドリアを活性化することで、多くの患者を治療しているとか。
本書は、「西原先生に、ミトコンドリアと健康のつながりについて理解するためのポイントを伺」ったものといいます。
では、その内容はどのようなものか。
ミトコンドリアとはなんだ
その前に、ミトコンドリアについて簡単に「そもそも論」から。。
本書によると、ミトコンドリアとは、酸素が好きな細菌が18億年ほど前に、真核とよばれる細胞核をもっている生物に住み着いた寄生体で、細胞によって取り込まれて共生したバクテリアだそうです。
要するに、私たちの体を構成する37兆の細胞に存在、赤血球以外はあらゆる臓器・器官に存在する「ばい菌」の仲間なのだとか。
1細胞あたり100個~2000個程度含まれていることは、先日もご紹介しました。
ばい菌だったら、体に住み着かれてはまずいのではないでしょうか。
ところが、長い間住み着いたことで、人間の細胞とは共生する関係になっているのです。
私たちが生きるために必要なエネルギーの大部分を産生するのが、ミトコンドリアです。
大部分と書きましたが、一部はブドウ糖を直接エネルギーにかえる解糖系というのも、これまた先日ご紹介しました。
糖を分解するだけの単純なシステムなので、すぐにエネルギーが作り出せます。
速効性がある分、一度に作り出せる量は決して多くはありません。
たとえば、瞬時にエネルギーが生み出せる解糖系=無酸素運動は、短距離走のように素早い動作を行うときに必要になります。
そして、もうひとつが、食べ物の栄養素(糖質・脂質・たんぱく質)+酸素・日光などを原料としてエネルギーを産生するミトコンドリア系といわれる回路。
文字通り、このエネルギー産生に関わっているのが、ミトコンドリアなのです。
すべての真核生物は、少なくともいくつかはミトコンドリアをもっています。
植物や藻類も、ミトコンドリアによる光合成エネルギー産生を行っています。
ミトコンドリアと病気の関係
ミトコンドリアは、私たちの健康(病気)に、大きな影響を与えます。
たとえば、低体温などの理由で腸や口腔内のリンパから侵入する細菌は、血液によってそれぞれの細胞に入り込みます。
そして、同じ「ばい菌」であることから、それらはミトコンドリアの栄養を横取り。
それによって、ミトコンドリアは細胞質内でのタンパク質合成が阻害され、突然変異を起こしてしまうそうです。
それが、がん、リュウマチ、免疫病、精神病など、難治性疾患の根本原因と考察しています。
低体温のときは病気になりやすい、というのは、上掲の『人がガンになるたった2つの条件』(安保徹、講談社+α文庫)でもご紹介しましたが、本書によると、冷えた腸から嫌気性の腸内細菌(大腸菌など)が白血球内に取り込まれ、血中を巡って体内に「ばい菌」をばらまくのだそうです。
具体的には、36.5度以下の環境ではミトコンドリアの働きは鈍り、37度でもっとも活性化するそうです。
しかし、現在では多くの人の平熱は36度台前半。
37度というと「微熱」があると扱われます。
現代人は、それだけ体温が低くなっているんですね。
ミトコンドリアは口呼吸で雑菌に栄養を横取りされる
ミトコンドリア系回路は、栄養と日光、そして酸素によってエネルギー産生されます。
つまり、ミトコンドリアは常に 新鮮な酸素を求めています。
といっても、口呼吸はいけないといいます。
なぜなら、口呼吸によって、鼻とのどを取り囲むリンパの細胞から雑菌が白血球に取り込まれてしまうからです。
一方、鼻呼吸で酸素を取り込むと、その瞬間に血圧が上がり、細胞内に酸素をうまく送り込めるそうです。
「鼻が詰まって鼻呼吸ができない」「花粉症だから口呼吸になる」というのは逆で、口呼吸だから花粉症になり、鼻が詰まりやすくなるといいます。
口呼吸については、多くの医師・医学者が注意を促していますし、この際徹底的に矯正しましょう。
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本書では、ミトコンドリアの活性を阻害する要因を6点枚挙しています。
- 毒物(サリン、シアン、CO、農業、殺虫剤、タバコなど)
- 環境エネルギー(低温度や低体温、高温、重力など)
- 寄生体(ばい菌やバクテリア、腸内の常在菌など)
- 栄養障害(酸素やミネラル、ビタミンB1の欠乏、栄養の過不足など)
- 移植の不適合(輸血含む)
- ストレス
けだし、体に悪そうなこと(もの)ばかりですね。
ミトコンドリアはこうすれば活性化する
では、ミトコンドリアはどうすれば活性化するのでしょうか。
本書によると、老化しないためには、細胞の若返りが肝心。
そのために、質の良いミトコンドリアを増やすことだといいます。
本書で指摘しているのは、次の2点です。
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空腹
筋肉を増やす(運動する)
空腹については、オートファジーをご紹介したことがあります。
栄養が入って来なくなると、体は古くなったり壊れたりした細胞内のたんぱく質を、分解して再利用することがわかっています。
細胞内に存在する、細胞内小器官のミトコンドリアも、オートファジーによって新たに生まれ変わります。
ミトコンドリアは、細胞内にたくさんあればあるほど、細胞の活動に必要なエネルギーが得られ、若々しく、健康でいられるのです。
また、ミトコンドリアはエネルギーをたくさん使う細胞ほど多く、約8割は筋肉に集中しているそうです。
だからこそ、運動が必要ですが、本書では、30秒間の有酸素運動と、30秒間の無酸素運動を繰り返すことを推奨しています。
そして、エレベーターを使わずに階段は自力で昇降すること。
本書は、認知症も脳におけるミトコンドリアの現象が招いたものだと指摘しています。
ミトコンドリアが少ないとなぜ糖尿病になるのか
本書では、糖尿病もミトコンドリアの影響が大きいといいます。
体内に脂肪酸が多すぎると、筋肉が「エネルギーが豊富にある」と勘違いするため、本来はエネルギー減になるはずの糖が余ってしまい、血中に溜まってしまうから糖尿病になるそうです。
ミトコンドリアが増えれば、脂肪を減らしてどんどん糖を消費してくれるとか。
脂肪酸というのは、脂質を構成する重要な成分。
獣肉の脂肪、牛乳の脂肪、魚の油、植物油など一見違った脂肪も、その成分はほとんど脂肪酸です。
ということはですよ。
糖質の摂り過ぎが、糖尿病に良くないというのはわかります。
それだけでなく、脂肪のとりすぎも結果的に血糖値を高めるということですね。
ミトコンドリア健康法は「筋肉」「食事」「体温」
本書の後半は、ミトコンドリアを活性化するための実践を図解。
「筋肉」「食事」「体温」がキーワードです。
筋肉を増やし、食事の量を制限し、体温を高めるのです。
具体的な実践は本書をご覧いただくとして、ここでは、ミトコンドリアを増やす食品の一部を引用させていただきましょう。
たとえば鮭。
アスタキサンチンの抗酸化力が、活性酸素と戦うそうです。
鳥の胸肉は、カルノシンが活性酸素を抑制します。
ココナッツオイルは、中鎖脂肪酸がミトコンドリア内部に入りやすく、燃焼しやすいオイルとして注目されているそうです。
油では、オリーブオイルもミトコンドリアを増やすそうです。
事程左様に、食生活からも、ミトコンドリアを活性化させるための生活改善は可能です。
呼吸は吐納法で
さらに本書の最後には、日常の呼吸について、ミトコンドリアを増やす吐納法という呼吸についても、“呼吸研究の博士”という曽紅さんによって解説されています。
昨今の健康情報に、必ずといっていいほど登場するミトコンドリア。
では、それはなんだろうか。
どうすれば質や量を向上させるのか。
そうしたことに答えられる内容が、本書に詰まっています。
わかりやすく説明されていので、一読されることをおすすめします。
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以上、『ミトコンドリア健康法』(エッセンシャル出版社)は、ミトコンドリアが体の不調や病気に影響を与えているとして活性化を解説、でした。