与謝野晶子などを解説する『失敗図鑑すごい人ほどダメだった!』(大野正人著、文響社)は、偉人たちの失敗にフォーカスした読み物です。偉人も失敗をしてきた。だから、「失敗しないと人生損だよ! 」くらいの気持ちでどんどん新しいことにチャレンジしてほしい。
というねらいの「勇気の書」です。
『失敗図鑑すごい人ほどダメだった!』(大野正人著、文響社)は、古今東西24人の「立派な人」たちの失敗談を特集しました。
Amazon販売ページから抜粋します。
・理想が高すぎた、孔子
・成功にしがみついた、ライト兄弟
・考えすぎて引きこもりになった、夏目漱石
・天才ゆえに死にかけた、ダリ
・新しすぎて理解されなかった、ピカソ
今に名を残すすごい人も、たくさん失敗をしてきました。
だから、「失敗しないと人生損だよ! 」くらいの気持ちでどんどん新しいことにチャレンジしてほしい。
そのための「勇気の書」が本書です。
「大事なのは、にげたあと、何をするかです」
「新しいことをやりたいなら、新しいことをめざさない」
「失った居場所をいつまでも見つめず、新しく居場所を作りましょう」
「最近新しいこと試してなくてつまらないな」と感じている大人の方にもおすすめです。
ということで、今回は与謝野晶子(1878年12月7日 – 1942年5月29日)をご紹介します。
タイトルは、「正直すぎて炎上した」です。
一家の大黒柱として率直な作品を発表
与謝野晶子 生家跡 pic.twitter.com/7Vce4kG5BD
— 満船堂 (@mansendo) September 13, 2024
与謝野晶子は政治家・文化人一族です。
本名は與謝野晶子。旧姓鳳晶子。
義父の細見礼厳は僧侶。与謝野町加悦の浄福寺で修行し、東本願寺で得度後、生まれの地にちなみ与謝野姓を名乗るようになりました。
夫は与謝野鉄幹。本名は與謝野寛。
鉄幹の間には12人の子供が生まれました。家庭生活は決して順風満帆ではなく、晶子は一家の大黒柱として多くの作品を生み出しながら家計を支えました。
義理の娘である与謝野道子の父親が坂内虎次(球磨川電気社長)。
兄は鳳秀太郎(工学者)、外交官の与謝野秀は息子、その妻は与謝野道子(評論家、随筆家)、孫は元官房長官で代議士の与謝野馨です。
与謝野晶子が何を失敗したかというと、あまりにもガチな歌を詠みすぎた、ということです。
有名な「君死にたもうなかれ」は、戦地に赴いた弟を案じる姉の心情を詠んだもので、戦争に対する強い反対の意志が込められています。
…………
あゝをとうとよ、君を泣く、
君死にたまふことなかれ、
末に生れし君なれば
親のなさけはまさりしも、
親は刃をにぎらせて
人を殺せとをしへしや、
人を殺して死ねよとて
二十四までをそだてしや。
…………
この詩は、戦争に対する批判とともに、家族の絆や人間の尊厳を強調しています。
ただ、国策である戦争を否定する歌を詠んだために、非国民扱いを受けたのです。
でも、叩いている連中は、ズボシだから悔しかった。
「戦争は国益のために正しい」と無理に胸に落とそうとしている人々にとっては、その率直さが羨ましくて、自分の勇気のなさが悔しかったのです。
つまり、嫉妬ですよ、嫉妬。いつの時代も、こういう嫉妬はあります。
しかし、晶子はそれにひるまず、言われた悪口のおかしさを否定して、さらに自分の歌を作る時の心構えをはっきり示したことで、歌人としての地位を確立することができました。
戦争を美化する風潮が強かった時代にあって、この詩は戦争の悲惨さと無意味さを訴え、多くの人々に深い感銘を与えました。
また、与謝野晶子自身もこの詩を通じて、反戦の象徴的な存在となりました。
逆境のときほどチャンス
つまり本書の意図は、「失敗」とか「駄目」に見えることでも、自分の正直な心によることなら、それがきっかけになって大きく飛躍することがある。
だから、うまくいっていないときでも、現象だけでがっかりするな、という趣旨のようです。
逆境のときほどチャンスだとか、株も底値が買い時といいますしね。
ただ、一応減点の箇所も付け加えておくと、本書の24人目は、「(あなたの)お父さん・お母さん」となっていますが、この項だけはいかがなものか。
ご両親は愛情があるがゆえに、ときには子育てに失敗してしまうかもしれないけれど、良かれと思っているのだから気に食わなくても許してあげて、という内容です。まあ、これは蛇足ですね。
世の中には、我が子を虐待致死に追い込む最悪なケースだけでなく、我が子に盗みをさせる親もいるし、一見自己犠牲の愛情に見えるけど、実は自分の美学で子をそこにはめ込んでいるだけの「隠れ毒親」などごまんといます。
子が親をどう見るかは、ケースバイケース、そしてその子自身の内心の自由であり、親への感謝や性善説を婉曲に押し付けることは、「毒親育ち」の心を壊してしまう無用な圧力になりかねませんし、旧弊な家制度の因習を継続させる誤りだと私は思います。
それはともかくとして、それ以外の話はよくまとまっていて、面白かったと思います。
今はピンチとか、うまく行かずに悩んでいることとかありますか。
忍耐や発想の転換で、道がひらけてくるかもしれません。