『人がガンになるたった2つの条件』(安保徹、講談社+α文庫)は、2つの条件とともにがんにならない8つのルールも解説しています。万病のもとといわれているストレスを、さらに具体的にすることで2つの原因を考察しています。Kindle版です。
本書は、ガンを含めた病気を、「体の失敗」とか「悪」といった捉え方をシていません。、
体に悪い状態をいたずらに罪悪視せず、生きるための体の知恵であるという点を強調しているのが特徴です。
低酸素・低体温でがんになるのは「体の失敗」ではない
『人がガンになるたった2つの条件』は、安保徹さん(1947年10月9日~2016年12月6日)が、2012年に講談社+α文庫から上梓している書籍が、このたびKindle版としてリリースされたものです。
本書では、タイトルに「2つ」とあるように、がんに限らずすべての病気は、「注意するのはたった二つのことだけ」だそうです。
まず、安保徹さんは、「病気のほとんどはストレスによって生じる」と述べています。
まあ、これだけなら、とくに目新しいことではないでしょう。
ストレスは万病のもと、という考え方はよく聞きますから。
ただし、本書はそこから踏み込みます。
つまり、ストレスの何が「万病」の原点になるのか、ストレスと呼んできたものを、さらに具体化しています。
つまり、「2つ」というのは、低酸素と低体温ということです。
本書では、なぜストレスが低酸素・低体温の状態を招くのか、そしてそれがどうやって健康を損なうのかについて解説しています。
それだけでなく、安保徹さんは、そもそも「病気は悪か」と問いかけています。
「え、病気より健康の方がいいから、病気はやっぱり悪でしょう」
と、思われますか。
安保徹さんは、「病気は体の失敗ではない」と述べています。
なぜなら、「ガンは低酸素・低体温にする体の適応現象」だからだそうです。
むしろ、ごくありふれた必然的な生命現象ということです。
さすれば、病気にならないようにするためには、「低酸素・低体温状態に陥ってしまうような自分の生き方を振り返る」ことが大切です。
にもかかわらず、遺伝子や発ガン物質などに原因を求めてしまったり、ガン細胞を悪者扱いしてただ取り除こうとしたりしても、ガンは決してなくならないとしています。
安保徹さんによると、生物は危機に見舞われるとストレス反応が起こり、低酸素・低体温状態になるそうです。
それ自体は、体にとってはよくない状態。
そこで、医療は治療しようと考えますが、もう少し視野を広げれば それは危機を乗り切るための体の反応であるという見方もできるといいます。
解糖系とミトコンドリア系のバランス
私たちの体の60兆といわれている細胞には、性質の異なる2つのエネルギー経路があるそうです。
2つとは、解糖系といわれるものと、ミトコンドリア系といわれるものです。
解糖系 | ミトコンドリア系 | |
原料 | 食べ物の栄養素(糖質) | 食べ物の栄養素(糖質・脂質・たんぱく質)+酸素・日光など |
エネルギーの量 | 少ない | 多い |
作られる場所 | 細胞質 | ミトコンドリア |
利用される場所 | 白筋・皮膚・精子など | 赤筋・脳・肝臓・卵子など |
特徴 |
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(『人がガンになるたった2つの条件』より)
解糖系の原料になるのは主にブドウ糖。
糖を分解するだけの単純なシステムなので、すぐにエネルギーが作り出せます。
速効性がある分、一度に作り出せる量は決して多くはありません。
たとえば、瞬時にエネルギーが生み出せる解糖系=無酸素運動は、短距離走のように素早い動作を行うときに必要になります。
人は全速力で走るとき、息を止めて無酸素状態になっています。そうでなければ全力疾走はできません。素早い動作というのは、すべてが嫌気性の無酸素運動なのです
一方、ミトコンドリア系は、解糖系で分解された栄養素などに加え、呼吸によって得られた酸素など、ほかの多くの要素も関わっています。
持続力が必要になるときは、解糖系からミトコンドリア系のエネルギーに切り替わるそうです。
マラソン選手のように長時間にわたって運動が持続できる人は、ミトコンドリア系をうまく活用しているわけです。
その2つの工場をうまく使い分けることが、バランスの取れた健康な生き方になるといいます。
低酸素・低体温状態が続くと、解糖系とミトコンドリア系のバランスが崩れてしまい、無酸素の解糖系ばかりが稼働するようになったとき、ガン細胞が生み出されやすくなるそうです。
といっても、解糖系が不必要とか有害といったことではありません。
たとえば、精子は解糖系なので、生殖器を冷やすことで分裂を促します。
頑張りすぎず、怠けすぎず、あくまでもバランスが大事なのです。
現在の自分の生活が、解糖系とミトコンドリア系、どちらに偏ってしまってないかを、たえずチェックすることが求められます。
別の言い方をすれば、病気はそうした生き方の偏りを知るチャンスといえ、だからこそ、「悪」でも「体の失敗」でもないというのです。
がんにならない8つのルール
安保徹さんは、逆に『がんにならない8つのルール』も解説しています。
言い換えれば、低酸素・低体温に偏らない状態、解糖系とミトコンドリア系のバランスがとれた状態ということです。
- 心の不安やストレスに目を向ける
- 頑張りすぎの生き方を変える
- 息抜き・リラックスの方法を見つける
- 体を冷やさない工夫をする
- 暴飲暴食はやめて体にやさしい食事をする
- 有酸素運動を生活に取り入れる
- 笑いや感謝の気持ちを大事にする
- 生きがい・一生の楽しみ・目標を見つける
これは「順不同」ではなく、優先順位による序列だそうです。
安保徹さんは医学者ですが、現代の医学とはいささかテイストの違うサジェッションです。
しかし、『がんにならない8つのルール』は、最近の医師が上梓する啓蒙書にもしばしば登場します。
病気になってからの投薬や治療も否定はできませんが、それ以前に、日常の生活の仕方や考え方が大切であると考えさせられました。
みなさんも読まれることおすすめします。
本書は、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
以上、『人がガンになるたった2つの条件』(安保徹、講談社+α文庫)は、2つの条件とともにがんにならない8つのルールも解説、でした。