体を浄化する毒出し断食(藤本憲幸著、主婦の友社)は、巷間言われている「リサイクル」ではなく「リセット」として断食を推奨している書籍です。本書によると、腸壁にこびりついた長年の宿便が、断食によって一升瓶一本ぐらい出てくるそうです。
これまでの断食本とどこが違うか
巷間、「食べない健康法」がトレンドとなっていますが、このブログでも「断食」の書籍を何度かご紹介しました。
断食健康法の多くは、やはりオートファジーを根拠にしてものです。
オートファジーは、大隅良典東京工業大学栄誉教授がノーベル賞を授与した研究テーマです。
世界的に認められ、今や年間3000本以上の関連研究論文が発表されています。
オートファジー(Autophagy)とは、私たちの細胞の中で起こっている「自食作用」によるリサイクルです。
16時間食べることを断つと、細胞内の老廃物(タンパク質)を分解して新しい細胞づくりに再利用。
細胞内のエネルギー産生物であるミトコンドリアを再生させ、病原微生物の排除なども行う仕組みです。
「食べない」ことで、体を「リサイクル」で再生するということです。
一方、今回の『体を浄化する毒出し断食』は、体と心を「リセット」で再生するための断食であるとしています。
「リサイクル」と「リセット」はどう違うのか。
オートファジーでは言及されていない「心の再生」とはどのようなものか。
著者の藤本憲幸さんは、「断食」とともにヨガを組み合わせて、その再生を指導しています。
その内容について、本書からご紹介します。
「リサイクル」と「リセット」
本書は、『THE DANZIKI』(1981年、主婦の友社)を、新規取材を加え改定したものだそうです。
ということは、オートファジーの発見される35年も前の1981年に、すでに確立していた健康法ということです。
昨日今日のことではないから、成果実績もたくさんあるのでしょう。
本書では、食べることの欠点を挙げています。
- 内臓の疲労がはげしくなる
- 頭の働きが鈍る
- 血液が汚れる
- 生活の中で大幅に時間をとられる
消化には多量の酸素を必要とするため、食べてしまうと脳に酸素がいかなくなるといいます。
だから、食べた後は眠くなることがあると。
そして、最大の問題は、宿便が貯まることだといいます。
……と書くと、「医学的には宿便など存在しない」「下剤できれいにした腸はピンク色で何も残っていない」と反論する方がおられますが、本書が言うには、「腸に付着した食べ物のカス」で、ちょっとやそっとではとれないそうです。
そして、それが断食をすることで、剥がれ落ちるようにとれてくるといいます。
宿便は生まれてからいままで体内に蓄積された腐敗物である。そんなものが一升びんに1本分もあって体にいいわけがない。(中略)
たとえば、機械を長年使っていると、ほこりがたまり、さびが出て、だんだんと機能が低下してくる。それでもかまわず使っていると、ついには役に立たなくなってしまう。
機械でも、オーバーヒートしないように、適当な時間休ませながら、ときには掃除をしてほこりをとり、よく磨いて油を塗り、さびないようにするのが、長もちさせるための使い方である。
あなたが使っているエアコンだって、月に一度や二度、手入れをしてこそ、よく動くようになる。なぜ体は掃除しなくてもいいと言えるのだろうか。
つまり、宿便は「体のほこりであり、さびである」といいます。
本書によると、断食と同時に漢方の下剤を飲み、それを毎日続けていく以外の方法は発見されていないといいます。
胃の中は、半日もしたら消化しますが、腸の中のものは、日本人の腸が長いこともあって、3~6日かけないと排泄できないそうです。
たんに「食べない」だけでなく、下剤まで使うわけです。
要するに、本書にとっての断食とは、オートファジーというよりデトックスです。
ただ、この限りですと、
「宿便の説明はわかったが、内視鏡で見たらピンク色の腸壁からほんとにそんなものは出るのか」
と、まだ半信半疑の方もおられるかもしれません。
本書によると、断食開始後、4~10日くらいの間に、突然宿便が出るのだそうです。
形状にも個人差があり、黒いコールタール状の黒便、焦げ茶色のかたい石のような古便、カサカサして骨のような停滞弁などがあるそうです。
それが一升瓶一本。
何も食べていないのに出てくるわけです。
そりゃ、断食者はびっくりするでしょうし、「宿便」という客観的存在の説得力も増すことでしょう。
コールタール状の黒便、というのはよく聞きますね。
著者は、1981年に改定前の書籍を出し、当時から断食道場を開いているわけですから、今更改訂版でわざわざ虚偽の報告をするとは、考えにくいのですが、どうでしょう。
著者は「病をはねのけるために」、年に一度、ある程度の長期断食をシて宿便を出し、健康を維持していただきたいと述べています。
健康面だけでなく性格や能力まで変わってしまう
巷間標榜されている多くの断食健康法は、健康のため、病気や体の不調を改善するためのものがほとんどです。
一方、本書は肉体の健康はもちろん、それ以外のことも断食でよくなるとしている点が大きな特徴です。
本書によると、「断食は、人間を生まれたばかりの真っ白な状態に戻すことでもある」そうです。
人間は生まれてから、成長とともに親や教師や友人らの影響で色がついていく。
子供のときに形成された性格はなおりません。
しかし、断食後によって内臓が変わり、生まれたばかりの真っ白な状態に戻るそうです。
それまで納豆が嫌いだったのに、断食後に納豆を食べると納豆が好きになるとか。
断食は、自由自在に自分を変えることのできる不思議な力といいます。
とにかく目次を開いただけで、あらゆることが解消されているのがわかります。
- ゼンソク
- 鼻づまり
- 胃弱
- 視力
- 睡眠時間(短くてもよくなる)
- のどのできもの
- 人付き合いが良くなる
- 優柔不断と決別できる
- 脳を活性化する
- 集中力がぐんぐんつく
- 言いたいことが言えるようになる
- 記憶力が日に日につく
- 人前で上がらずにすむ
- 短気が直り、忍耐力がつく
- 行動力が身につく
- 精力、性感を高める
- すこやかにやせられる
- シミ、ソバカスがみごとに消える
- 太れる
- 酒に強くなる
- タバコがやめられる
- 視力の衰えを防止
- 髪の生える力を強める
- 鼻炎を治す
- ガンを予防
それぞれについて、なぜそのような効き目があるのかの説明は本書で行われています。
詳細は、本書でご確認ください。
それぞれ、断食とヨガのセットで解説されています。
いきなり断食はNGです
「食べないだけで、そんなにいろいろな効用があるのなら、さっそくやってみよう」
と、思ったあなた。
私も同じように思いました(笑)
が、ただ食べることをやめればいいわけではないようです。
たとえば、5日間断食を行うとして、前後同じ日数だけ、「減食」および「復食」の期間を作ることとあります。
つまり、急に断食をするのではなく、徐々に減らし、また断食後は徐々に増やしていくのです。
本書では、階段を降りて上るようなものとたとえています。
私も、明日からやろうと思ったのですが、今日は腹いっぱい天ぷらをいただいてしまったのでダメでした。
脂っこいものを直前まで食べるのはNGだそうです。
まあ、そういうときというのは、断食直前には「食べおさめ」として、ドカ食いしたい気持ちになりますよね。
本書では、「気持ちはわかるけれど」ダメだそうです。
ですから、本格的な断食は、きちんと指導者のもとで行うべきだといいます。
「なんだ、めんどくせえ。食べなくていいだけだったらやろうと思ったのに……」
と、思われますよね。
そういう人向けに、本書では、週末休日コース(3日)とか、長期休暇コース(7日)など、比較的短い断食のためのサンプルメニューを示しています。
いきなり、榎木孝明さんのように30日も断食するのは大変ですし、小さなところから始める成功体験実感という意味では、まず、一日だけ断食とか、一日一食とか、そのへんから始めてもいいのではないでしょうか。
本書は、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
なお、藤本憲幸さんは、『脳が突然鋭くなる「短時間」睡眠法』(パンローリング)も上梓しています。
4時間の短眠により、質の良い眠りを経験するとともに、浮いた4時間を自己実現のために使おうと説いています。
以上、体を浄化する毒出し断食(藤本憲幸著、主婦の友社)は、巷間言われている「リサイクル」ではなく「リセット」として断食を推奨、でした。