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僕たちのエール!(高次脳機能障がい者の会エール/佐々木千穂著、Kindle)は、高次脳機能障害者グループによるメンバーと活動紹介

僕たちのエール!(高次脳機能障がい者の会エール/佐々木千穂著、Kindle)は、高次脳機能障害者グループによるメンバーと活動紹介

僕たちのエール!(高次脳機能障がい者の会エール/佐々木千穂著、Kindle)は、高次脳機能障害者グループによるメンバーと活動紹介の書籍です。高次脳機能障害者の生活支援について知りたい全ての方へ、というサブタイトルがついています。

『僕たちのエール!』は、高次脳機能障がい者の会エール/佐々木千穂さんが上梓したKindle書籍です。

高次脳機能障害者の生活支援について知りたい全ての方へ、というサブタイトルがついています。

病気や怪我で、脳に損傷を受けたことが原因で高次脳機能障害を持ちながら福岡で生活するメンバーの紹介。

これまでエールのメンバーが経験してきたことや、社会の方々に知っていただきたいこと、そしてメンバーのこれからの夢。

さらにエールメンバーが主催した、高次脳機能障害者のサポーター養成講座の様子など、新しい取り組みについて紹介されています。

知りたい方はこちらへどうぞ、という案内書籍です。

本書『僕たちのエール! 高次脳機能障害者の生活支援について知りたい全ての方へ』は、2022年9月21日現在、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

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高次脳機能障害は最大3冊の「障害者手帳」を持つ

高次脳機能障害の障碍については、これまでにも何度かご紹介してきました。

高次脳機能障害のリハビリがわかる本(橋本圭司著、講談社)は、脳損傷後に現れる後遺症への効果的なリハビリを徹底解説した書籍
高次脳機能障害のリハビリがわかる本(橋本圭司著、講談社)は、脳損傷後に現れる後遺症への効果的なリハビリを徹底解説した書籍です。損傷した脳は元通りにはならないので、「元に戻そうと思わないこと」が大切なこととといいます。

高次脳機能障害というのは、交通事故などによる脳外傷、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害、火災や水難、脳炎など呼吸障害による低酸素脳症などが原因で、脳が損傷を受けたためにおこる障害です。

生まれながらの障害ではなく、もともと健常の人が怪我や病気で突然受ける障害なので中途障害と呼ばれます。

一般に脳が障害を受けた場合、最悪が脳死、つまり死亡です。

一命はとりとめても、自力で動いたり判断したり意思表明したりができなくなってしまうことが遷延性意識障害(いわゆる植物症)といいます。

会話をしたり、補装具を使うことも含めて自主的な動作を行ったりできるものの、種々の障害を残すのが高次脳機能障害です。

ここで大事なのは、遷延性意識障害にしろ、高次脳機能障害にしろ、「障害」であり「病気」や「怪我」ではないということです。

つまり、治癒という概念は少なくとも一般的ではない、事実上は「ない」ということです。

遷延性意識障害は「遷延性」というように「長引く」「なかなか治らない」、つまり生涯その状態だと断定はしていません。

たとえば、遷延性意識障害から高次脳機能障害に「回復」することはあります。

『がんばれ朋之!18歳、植物状態からの生還265日の記録』は、びまん性軸索損傷による遷延性意識障害から社会復帰した実話
『がんばれ朋之!18歳、植物状態からの生還265日の記録』は、びまん性軸索損傷による遷延性意識障害から社会復帰した実話です。オートバイの交通事故で頭をうった松本朋之さんの回復の経過を、担当医の宮城和男さん(当時王子生協病院)がまとめたものです。

ただし、遷延性意識障害からの回復確率は、きわめて低いのが現実です。

5年経過した時点で、約3%の人が意思疎通と理解の能力を回復しますが、自立して生活できることはほとんどなく、正常な機能を取り戻せる人はいません。 植物状態になった人の大半は、当初の脳外傷から6カ月以内に死亡します。 残りの人の大半は2~5年ほど生存します。

原典のサイトです。

植物状態 - 植物状態 - MSDマニュアル家庭版
植物状態 -原因、症状、診断、および治療については、MSDマニュアル-家庭版のこちらをご覧ください。

また、高次脳機能障害に回復できたとしても、その状態は様々です。

28歳 意識不明1ヵ月からの生還ーみんなのおかげで(内田啓一著、コモンズ)は、28歳の新聞記者が1ヵ月の昏睡から社会復帰した話
28歳 意識不明1ヵ月からの生還ーみんなのおかげで』(内田啓一著、コモンズ)は、28歳の新聞記者が1ヵ月の昏睡から社会復帰した話です。急性硬膜外血腫で倒れ、意識不明1ヵ月の昏睡状態を1ヶ月送りながらも、遷延性意識障害にならずに回復しました。

一般的に言われるのは、何度も同じ事を話したり質問したりする「記憶障害」、気が散りやすく、仕事上でのミスが多くなる「注意障害」、感情のコントロールができない「感情障害」のような様々な症状があります。

軽度以外の場合には、身体障害を伴うこともあります。

また、軽度であっても、見えないものが見えたり、距離感がつかめなかったりするのですが、外見から障害があることが分かりづらいため、周囲から誤解を受けたり、本人や家族の負担が大きなものになっています。

障害者手帳は、通常は「精神」ですが、障碍の状態によっては「身体」や「療育(知的)」の手帳をもつ場合もあります。

ちなみに、火災による一酸化炭素中毒で、いったんは遷延性意識障害になった私の長男は3冊すべて、次男も1冊手帳を持っています。

火災事故わずか数行の記事で「放火の犯人」を決めつけるネット民の悪癖は当事者に大変迷惑な影響を及ぼすことを考えて欲しい
火災事件が増える季節です。14日夜に発生した長野県佐久市臼田の歯科医宅火災は、4名のお子さんが焼死した痛ましい結果となりましたが、Web掲示板ではいつものようにわずか数行の記事で「放火の犯人」を詮索する興奮ぶり。倫理観と民度を心配しています。

長男は火災による気道熱傷のため、暫くの間、喉に穴を開けてカニューレを入れる状態にしていました。

https://webshining.net/1607.html

逆に妻は、肺活量が半分まで落ちたのに、ギリギリで「正常範囲」だったために手帳は出ませんでした。

『臨死な人々・死のすぐそばで生きる人たち』(みおなおみ、市井文化社)は、火災による一酸化炭素中毒で心肺停止した際の体験談
『臨死な人々・死のすぐそばで生きる人たち』(みおなおみ、市井文化社)は、火災による一酸化炭素中毒で心肺停止した際の体験談。搬送された大学病院の第三次救命救急病棟に入院した32日間は、“今日元気だった人が明日にはいない”日々でした。

以前のように暮らせないことは厳然たる事実なのに、おかしな基準です。

それはともかくとして、人間の思考・判断や行動を司る、心臓とともに生命の維持にはいっときたりとも止まっては困るのが脳です。

障碍にもいろいろありますが、遷延性意識障害や高次脳機能障害ほど深刻なものはないでしょう。

我が国は重度の障害者が暮らしやすい国だとは言い難い

本書は、福岡県内に在住する、高次脳機能障害を持つ当事者およびその家族を中心に活動を行っている団体「エール」を紹介する書籍です。

本書「はじめに」から引用します。

我が国は先進国の中でも重度の障害者が暮らしやすい国だとはまだまだ言い難い状況であると日々感じます。それは、障害の種類・程度によりません。文化的な背景も関係すると言われていますが、障害者のサポートは家族が中心に行うのが当然というような考えも根強いかもしれません。少しずつ社会でサポートを行うことが進んできていますが、「インフォーマル」なサポートについてはまだまだこれからなのではないかと思います。「高次脳機能障がい者の会エール」はまさに「インフォーマル」なサポートグループの一つと言えるでしょう。

エールは、2007年に発足したそうです。

ということは、今年で15年ですね。

メンバーについては、実名で紹介されています。

佐々木慶一郎(ささきけいいちろう)さん。1969年2月20日生 1992年3月受傷(23才) 交通事故診断名:びまん性軸索損傷

「主治医の「最大快復しても、支え無しで一人で座れるかどうか」と言う言葉に愕然となる。」と書かれています。

わかりますよ。

私の長男も、遷延性意識障害で入院していたとき、主治医から、「退院したときのために酸素吸入器だけははずせるよう頑張りましょう」といわれました。

つまり、それ以上は望めない、ということですよ。

寝たきりで、自主的行動も自覚的判断もできない。

病室の天井には、フーっと空気を入れて膨らます紙製のまりがぶら下がっていますが、長男はじーっと見ているだけで全く動かず。

そんな11年前のシーンを思い出しました。

佐々木慶一郎さんは、現在は作業所で働いているそうです。

神谷 佳道(こうや よしのり) さん。1982年8月5日生 1999年1月受傷(16才) スポーツ事故(柔道) 診断名:急性硬膜下血腫

1999年 1月事故後、学校より救命救急センターに緊急搬送。血腫除去のための減 圧開頭術を行う。術後、低体温療法を行う。(体温を32度程度に保ち冬眠状 態にして脳の腫れを抑える) 2月 後頭部動脈瘤破裂により2回目の手術となる。そののち腎臓機能低下に より、人工透析を行う。 3月 55日目に意識回復するが全身麻痺の状態。その後少しずつではあるが 右手が動き始める。 4月頭蓋骨形成手術、シャント術を行う。190日目に退院。

この方も大変でした。

私の長男も長期入院でしたが、入院日数は140日だから、それよりも多いんですね。

高等学校卒業式は、母親の介助で杖をついて歩いて退場、そして障がい者スポーツ大会にも参加と書かれています。

「話し手」岡島健大さん「聞き手」佐々木千穂さん。

将来の不安ですか? 両親が亡くなったら、自分が堕落するんじゃないかとい うのが心配なんです。堕落とは、・・・そうですね。歯を磨かない、顔を洗わないという見かけの堕落ですよ。 * 他には、今は稼ぎが少ないので、自分で生きる生活費が稼げないのじゃな いかと心配してます。料理ですか?カツ丼だけはできます。揚げたカツを買ってき て、卵と玉ねぎでとじるだけ。
え?疲れてないかって?まだ大丈夫ですよ。

本書は、エールで行っている主な活動も枚挙しています。

これらは毎週木曜日で、これ以外に月1回、歌をうたうそうです。

これもわかりますね。

私の長男が、通信制高校に入り、親子スクーリングで、初めて卓球を経験したのですが、大変喜んでいました。

ということで、AmazonUnlimitedでは読み放題リストに入っていますから、ぜひお読みください。

以上、僕たちのエール!(高次脳機能障がい者の会エール/佐々木千穂著、Kindle)は、高次脳機能障害者グループによるメンバーと活動紹介、でした。


僕たちのエール!: 高次脳機能障害者の生活支援について知りたい全ての方へ – 高次脳機能障がい者の会エール, 佐々木千穂

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