僕は、死なない。(刀根健著、SBクリエイティブ)は、肺がんステージ4Bから奇跡的な生還を果たした323日間の壮絶な体験記です。原発以外に、脳や目を含む全身転移は1カ月の入院を経て奇跡的に回復。2017年7月末の診察でがんはほとんど消失していたそうです。
『僕は、死なない。』は、刀根健さんがSBクリエイティブから上梓した実話です。
心理カウンセリング資格取得コースの講師として活躍し、ボクシングジムのトレーナーとしてもプロボクサーの指導・育成を行なっていた50歳(2016年9月)の時、肺がん(ステージ4)が発覚しました。
翌年6月には新たに脳転移が見つかり、医師から「いつ呼吸が止まってもおかしくない」と告げられます。
それが、10ヶ月後の2017年7月末の診察では、がんがほぼ消失していたといいます。
いかがわしい抗がん健康食品の体験記ではありません。
Amazonには、診断画像も公開されています。
YouTubeでは、がん専門医も取り上げている、医学的に信用できる話です。
では、どんな特別な治療をしたのでしょうか。
それは、「サレンダー(明け渡し)の法則」に尽きるといいます。
何を明け渡すのでしょうか。
やり尽くして「降参」したから運気が変わった
肺がんの診断を受けた時、医師からは、抗がん剤治療をしても1年生存率は約30%と告げられます。
副作用の大きさとの兼ね合いで、著者はそれを拒絶。
それでも、著者は「絶対に生き残る」「完治する」と決意し、自分でがんを治すため、完全玄米菜食、断塩、断糖、ノニ・アガリスクをはじめとするサプリ、気功、漢方、自強法、陶板浴、ヒーリング、呼吸法、八門遁甲など、あらゆる代替医療、民間療法を試みます。
結果的に、それらは奏効しませんでした。
それどころか、標準治療を行わなかったその間にも、がんは進行し、脳や目を含む全身に転移。
ステージは4から4Bになってしまいました。
……というと、エビデンス万能主義の「知識人」たちは、「インチキ代替治療なんかにかかわっているからそうなるんだ」と思うでしょう。
実は、私もこの本を読むまでは、そう思っていました。
後に詳しく書きますが、それは少し考えが変わりました。
実際に、効かなかったのだから、その結果を以てそう批判することは「間違い」ではないかもしれません。
しかし、ステージ4なら、標準治療をしても延命で終わるかもしれないのですから、標準治療なら「正しい」ともいえないでしょう。
とにかく、医師からは、「いつ呼吸が止まってもおかしくない」とまで告げられてしまいました。
著者は、自分が手を尽くして民間療法をし尽くし、それでもだめだとわかった時、心の中の何かが開放されたと思ったそうです。
「やれることは全部やった。命がけでやって、やって、やり尽くした。それでも、ダメだった……」
「もう僕にできることはなくなった。神様、降参です。全てをゆだねます」と呟いたというのです。
そこから、著者の奇跡的回復への道筋が開かれました。
ふっきれた著者は、かねてから毒親として心に引っかかる実父と対面し、父の仕打ちが子供の頃からどんなに辛かったかをぶちまけたそうです。
それに対して、親としての言い分もあるだろうに、何も言い訳しないで謝罪する実父を見て、著者は許す気持ちを抱いたと言います。
ここで、「オレはお前に良かれと思ったのだ」などと言って、自己正当化の意地を張らない父親で良かったですね。
次に、がん治療は、分子標的治療薬という、正常な部位を傷めない抗がん剤治療を選択。
遺伝子のタイプが、4%しか適合しないものでしたが、見事に適合して奏効しました。
そして1カ月後、全身に転移していたがんは消え去っていたといいます。
代替医療はエビデンスがないからと否定するのが正しいのか?
冒頭の専門医のユーチューブ動画は、時々このブログでも理解を助けていただく『がん情報チャンネル・外科医 佐藤のりひろ』です。
#癌ステージ4 #肺腺がん #脳転移
がん全身転移(ステージ4)から生還するためのヒント:「僕は、死なない」から学ぶ、奇跡を起こす方法とは?https://t.co/S0qrl8lnaP— 宇宙エレベーター (@kidouerebeita) August 19, 2022
佐藤のりひろさんは、回復の経緯をこうまとめています。
1.効果的な治療法との出会い
2.がんを受け入れ、明け渡す・委ねるメンタル
「明け渡す・委ねるメンタル」といっても、諦めるという意味ではありません。
佐藤さんは、こう解説します。
どんなにですね、効果の高い治療を受けたとしても、無理やり受けているという気持ちだったり、あるいは疑いながら受けたとしたら、効かないようなこともあると思います。がん治療に重要なのはですね、がんを受け入れて、信頼して治療を受ける気持ちつまりですね。刀根さんの言うところの、この全てを手放すサレンダーという気持ちを持つということも大切だというふうに感じます。
そして、私が思うところですが、前述のように、がん治療と言うと
標準治療vs代替治療
という対立軸を作り、代替治療に走るやつは馬鹿だ、と罵るのがエビデンスに基づいた「正論」のように言うのですが、私は本書で、考えを改めました。
著者が、「サレンダー」する気になったのは、代替治療をやりきったからなんです。
もし、それをしなかったら、きっと悔いを残しながら、30%しか奏効率がないのに副作用が厳しい抗がん剤治療に入ったと思うのです。
運を天に任せるというのは、精一杯力を尽くしたからこそサレンダーできる心境になったということなんですね。
代替治療を推奨するということではなくて、そんな対立軸を作って、患者にプレッシャーを与えるようなことをしても、患者のためにはなりません。
大事なことは、患者にとってサレンダーできる悔いのない治療の機会をもたせることではないのか、ということです。
それと、毒親と和解できてよかったですね。それも精神的に大きかったと思います。
それにしたって、親に向かって批判するのは親不孝だ、なんてつまらない「道徳」を突きつけていたら、著者の心は清らかに成らなかったでしょう。
子の断罪を受け入れる親こそ、子のことを思うよい親だと思います。
いずれにしても、回復できてよかったですね。
以上、僕は、死なない。(刀根健著、SBクリエイティブ)は、肺がんステージ4Bから奇跡的な生還を果たした323日間の壮絶な体験記です。でした。