内臓リセット健康法(青木厚著、アスコム)は、オートファジーに誘う16時間断食を標榜する『「空腹」こそ最強のクスリ』の実践編です。改めて16時間断食がなぜ有用なのかの解説を行うとともに、新たに運動を加えることで効果が一層高まることを紹介しています。
『空腹こそ最強のクスリ』(青木厚著、アスコム)は、噂の16時間断食、オートファジーについて書かれた「半日断食」指南書として、今や30万部を突破。
様々な健康効果とともに、ダイエットも期待できるという内容です。
本書では、「最新医学がたどりついた健康の新常識」として、16時間断食を細胞がよみがえる「内臓リセット健康法」と呼び、「空腹の時間」×「科学的に正しい運動」が人を最も健康にするとしています。
週1回の「まとまった空腹」と週2回の「科学的に正しい簡単な運動」
『がんを克服した糖尿病医が考案! 弱った体を修復する内臓リセット健康法 Kindle版』は、青木厚さんが、アスコムから上梓した書籍です。
Kindle書籍は、サブタイトルを長くつけるのが“お約束”なのですが、本タイトルは『内臓リセット健康法』ですね。
著者の青木厚さんは、内分泌代謝や糖尿病を専門とする現役の医師です。
であるとともに、舌がんの経験者でもあります。
がんは、再発や転移の心配もありますから、青木厚さんは、公私共に健康に関する情報を必要とする立場であるわけです。
PubMed(パブメド)という、生命科学や生物医学に関する論文庫の「がん予防」文献を読み漁って得た結論は、がんを発症する主な原因が、『細胞の質の劣化』と『免疫力の低下』にあるということ。
つまり、がんを予防するためには、
- 細胞の質の劣化を食い止め、細胞のがん化をなるべく少なくすること
- NK細胞の活性を上昇させること
にあると気づいたそうです。
では、そのためにどうすればいいのか。
答えはシンプル。
- 週1回、まとまった空腹の時間を作ること
- 週2回、科学的に正しい簡単な運動を行うこと
この組み合わせが、弱った体を細胞レベルで修復し、心身の不調や病気を遠ざけてくれるといいます。
『週1回、まとまった空腹の時間を作ること』については、すでに『空腹こそ最強のクスリ』を上梓済みです。
16時間食べることを断つと、「無駄な栄養」を摂取しないだけでなく、細胞内のタンパク質のリサイクルや、病原微生物の排除などを行うという健康法です。
本書はまず、その復習ともいうべき解説を行っています。
内臓の休養とオートファジー
本書ではまず、『「空腹」こそ最強のクスリ』が、一日3食の生活によって体が受けるダメージや、一日に16時間の「空腹の時間」を作って「オートファジー」を誘導することにより、心身にもたらされるさまざまなメリットについて書いた本であることを紹介しています。
「空腹の時間」を作ることで得られるメリットは次の3点を枚挙。
- 内蔵の疲れがとれる
- 脂肪が分解される
- オートファジーが活発化する
1日3食も食べていたら、胃腸や肝臓が休むまもなく動き続けなければならないので疲弊します。
その結果、内臓の働きは低下し、老廃物を排出できず、免疫力も低下するというのです。
そこで、16時間食べなければ、まず胃腸や肝臓などを休ませることができます。
そして、エネルギーとしてまず使われるブドウ糖が使い切られ、脂肪を分解することになります。
脂肪が分解されることで、増えすぎた脂肪から作られる悪玉ホルモンが発生しづらくなるとともに、糖に変わってケトン体がエネルギー源として使われます。
ケトン体には、神経や心筋を保護する作用や、抗炎症作用、抗アレルギー作用があり、動脈硬化やがんを予防する効果も期待できると本書には書かれています。
ケトン体が、てんかんの治療にも採用されていることは、すでに『2週間で効果がでる! ケトン食事法』(白澤卓二、かんき出版)と、『「ケトン体」こそ人類史上、最強の薬である 病気にならない体へ変わる“正しい糖質制限”』(宗田哲男、カンゼン)をご紹介した記事で触れました。
糖を使い切ってしまうということは、糖尿病対策になります。
本書では、血糖値やヘモグロビンA1c(HbA1c)など、糖尿病の診断に使われている数値が、16時間断食で下がった患者の例も紹介されています。
そして、最大の効果がオートファジーです。
1日のうち16時間程度、ものを食べない「間欠的断食」を作ることで、オートファジーを誘導するのです。
オートファジーというのは、「古くなったり壊れたりした細胞内のタンパク質を集め、分解し、それらをもとにエネルギーを作る」体のシステムのことだと説明しています。
『細胞が自分を食べるオートファジーの謎』(水島昇、PHP研究所)の記事でご説明しましたが、大隅良典東京工業大学名誉教授は、オートファジーの研究でノーベル賞を獲得し、今や年間3000本以上の研究論文が発表される生物学のトレンドなテーマです。
オートファジーは、飢餓状態で生きのびるために、細胞内のタンパク質の古いものや壊れたものを分解し再利用するのです。
本書では、オートファジーが起こると、古くなった細胞内のミトコンドリア(呼吸を行い、エネルギーを作り出す重要な器官)も分解されて生まれ変わり、体にとって不要なものや老廃物が一掃され、細胞や組織、器官の機能が活性化するといいます。
ミトコンドリアは、もともとエネルギーを作り出す際に活性酸素を出し、それががん細胞に対する攻撃効果もあるといいますが、劣化することでその量が多くなり、正常な細胞も傷つけてしまうことは、『ミトコンドリアを活性化するとがん細胞は自滅する』(福田一典、彩図社)をご紹介した記事でも触れました。
ですから、オートファジーによって、細胞のお掃除と、ミトコンドリアの再生が行われるというわけです。
休ませオートファジーが働くことによって、各部位には次のような効果が期待できるといいます。
部位 | 効果 |
胃 | 粘膜の修復 |
腸 | 上皮細胞の修復 |
肝臓 | 脂肪肝の改善 |
腎臓 | 慢性腎臓病や炎症の予防 |
心臓 | 動脈硬化の予防や心筋細胞保護 |
肺 | 正しい呼吸の維持 |
脳 | 脳血管障害、パーキンソン病、うつ予防 |
青木厚さんによると、食べてから12時間後には、そのオートファジーが始まり、16時間後に、体のあらゆる細胞でオートファジーが行われるといいます。
そこで、無理のない範囲で、週1回、たとえば土曜日、もしくは日曜日の朝食か夕食を抜くことで16時間断食を行うことを勧めています。
その間、どうしても我慢できなければ、ナッツや生野菜サラダ、チーズなどでお腹を満たしても構わないといいます。
が、私は「断食」と名がついている以上、食べ物は食べない時間にしたほうがよいと思います。
どうしてもお腹が空いたら、水でも飲めばいいのではないでしょうか。
運動によって筋力も補いオートファジーも加速させる
いいこと尽くめの16時間断食ですが、懸念されることもあります。
エネルギー産生にブドウ糖を使い切ると、肝臓や腎臓でグリコーゲンが分解されてブドウ糖が生成されます。
それを糖新生といいますが、ブドウ糖にかわることでタンパク質が消費され、筋肉が消費されてしまいます。
要するに、筋肉量が減って筋力が落ちてしまうということです。
筋肉量が減ったり、筋力が衰えたりすることで、次のような問題が生じるといいます。
- 疲労や肩こりなどが起こりやすくなる
- 内臓の動きが悪くなり、消化不良や便秘などが起こりやすくなる
- 血流が悪くなり、免疫力が低下する
- 脂肪が増える
- 転倒や骨折などが起こりやすくなる
- 認知症、うつ、不眠などになりやすくなる
それを補うために、本書では「科学的に正しい運動」を行うことを提案しています。
運動は、筋力が落ちることを補うだけでなく、オートファジーも加速させるそうです。
青木厚さんが毎日行っている運動は、朝と夜に腕立て伏せ、腹筋、背筋などだそうです。
青木厚さんのクリニックに来る患者には、階段の昇降を勧めているそうです。
本書では、図解で7つの運動が紹介されています。
そして、運動の他には「朝活」として、乾布摩擦、丹田呼吸、日光浴、リズム運動なども推奨されています。
舌がん経験者の青木厚さんだからこそのカリキュラムですね。
ただ、もし全部ができなかった場合、優先するのはやはり、16時間断食と書かれています。
睡眠時間を8時間として、その前後4時間を食べない時間にすればいいのですから、そう難しいことではないと思います。
いかがですか、1日のうち16時間程度、ものを食べない「間欠的断食」を作ることで、オートファジーを誘導してみませんか。
本書は、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
以上、内臓リセット健康法(青木厚著、アスコム)は、オートファジーに誘う16時間断食を標榜する『「空腹」こそ最強のクスリ』の実践編、でした。
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