『出版で夢をつかむ方法』(吉江勝著、中経出版)は、知識や経験をビジネス拡大に役立てる「ブック・ブランド・マーケティング」を標榜しています。書籍はどう書けばいいのか、どうすれば出版にこぎつけられるかといったテクニックも書かれています。
書籍は「マス」、ブログもYouTubeも「ミニ」
『出版で夢をつかむ方法』(吉江勝著、中経出版)という書籍を読みました。
本書は、「ブック・ブランド・マーケティング」を標榜しています。
どういうことか。
書籍を上梓することによって、自分自身のブランドを高め、ビジネス拡大に役立てましょう、という意味のようです。
プロフィールというと、学歴、職歴、モットーなどを書きますが、著書を上梓していれば、それも入れるべき実績になります。
簡単に述べれば、書籍を出すということは、社会人としての箔がつくということです。
では、どんな書籍を出せばいいのか。
自分の見識や経験などでいいのです。
それらを書籍として上梓することで、ビジネス拡大に役立てましょうという内容です。
さすれば、書籍はどう書けばいいのか、どうすれば出版にこぎつけられるかといったテクニックも書かれています。
ネット時代のこんにち、ブログやメールマガジン、情報商材などの電子データなどで、作家やジャーナリストでなくとも、自分の書き物を不特定多数の人に発表できるようになりました。
それでも、いまなお商業出版はステータスなのです。
YouTubeにアップした、自分が出る動画をどれだけ閲覧してもらっても、テレビ出演の実績にはかなわないように……。
ネットが無意味ということではありませんよ。
ユーチューバーが、今や現代の若者のあこがれの職業になっているぐらいですから。
ただ、やはり従来の媒体(紙の書籍やテレビ)は「マスコミ」、ネットはどんなに人気コンテンツであろうが「ミニコミ」という評価が基本にはあるのではないかと思います。
ネット民は、しばしば「マスゴミ」などと懸命にコバカにしていますが、それはすなわち、既存のマスメディアの価値を認識しているからにほかなりません。
大企業のスポンサーが付き、流通に一定の信用が求められる既存のマスメディアのほうが、ネット発の掲示板や匿名ブログよりも“発表できることの価値”が高いのは至極もっともな話です。
ビジネス人としての箔をつけるために出版を
さて、今回ご紹介する『出版で夢をつかむ方法』は、経営コンサルタントである吉江勝さんの著書です。
吉江勝さんは、神奈川県でもっとも偏差値の低い大学を出て、人材派遣会社のしがない営業社員だった。
それが、今や会社を3つも経営する「勝ち組」になった。
その成功ツールとして書籍出版があった、という自分の体験を披露。
読者に商業出版にチャレンジすることを勧めています。
具体的な構成のご紹介の前にひとつお断りしておくと、本書はあくまでも経営コンサルタントのような「非著述業」が、ビジネス人としての箔をつけるために出版をしろという話です。
作家やライターのような、本を出すことが仕事である人への指南とは違います。
フリーライターになりたいという方が、きっかけとするには参考になるかもしれませんが、既存のプロライターの立場やすべき方向性が書かれているわけではありません。
普通の人だから出版のチャンスがある!
本書は、出版にこぎつける方法を紹介。
出版関係者から声が掛かる方法と、逆に自分が企画書を書いて売り込む方法と、“攻守”両面で出版までの道筋が書かれています。
まず、出版というのは、必ずしも社会的な肩書がすぐれていたり、非の打ち所のない経歴であったりする人の世界とは限らず、普通の人にチャンスがあることを著者は強調しています。
- 普通の人のほうが一般の読者の心をつかみやすい
- 編集者が育てる楽しみがある
- 安い印税で頼めるなど出版社側が使いやすい
といった理由があるからといいます。
そして、先方から出版の声がかかる方法ですが、ネットの発信手段をあげています。
具体的には、アメブロ、まぐまぐ、mixi、オールアバウト、YouTube、ツイッターなどです。
出版関係者がよく見ている媒体だからだそうです。
この書籍は、2010年06月15日に出たものです。
現在なら、ブログやFacebookなども加えられます。
“攻め”としては、企画書の書き方が解説されています。
出版を決めてもらえる持ち込み企画は、2段階のアプローチが有効だそうです。
このへん、具体的には本書をご覧ください。
その際、著者のアドバイスは、
- 企画書は長く書かないこと
- 原稿を持って編集部に突撃という持ち込みは絶対しないこと
- ネットで調べてキーワードが10件以上検索されていること
などが書かれています。
ネットで検索数を調べる、というのはナルホドと思いました。
そういう作業は、今やアフィリエイターだけでなく、マーケティングでは必須の作業になっているのでしょう。
さらに、もし出版社から声がかかっても、ホイホイ安請け合いすると軽く見られるので、そうならないような駆け引きまで説明されています。
というのは、印税割合は、交渉次第だからです。
よく、作家が10%といわれ、初版部数、もしくはその一部の部数は保証されます。
たとえば、1500円の書籍を5000部初版で刷るとして、1冊あたり印税は150円、また、売れ部数に関係なく、そのうち2000部分の印税は保証、という契約です。
ただ、無名の新人は、おそらく印税率はそれほど高くはありません。
それどころか、初版の半分を買い取れとか、保証分はなしとか、さらに厳しい条件であることがほとんどです。
このような契約内容は、出版契約書として締結するのですが、その交渉について書かれているわけです。
私の出版体験記
さて、私は、編集制作会社の代取ですから、会社として、出版社から委託を受けて、書籍やムックの制作を行ったり、原稿を執筆したり、また草野直樹名義で書籍を上梓したりしてきました。
その場合、自分で企画書を提出することもあるし、先方から出版を依頼されることもあります。
15年前には、『まぐまぐ』『メルマ』『めろんぱん』などで合計7000名ぐらいの読者を持っているメルマガを発信していたところ、ある出版社の人から声がかかって、書籍を上梓したことがあります。
また、別のメルマガ、これは『まぐまぐ』で殿堂入りしたのですが、WindowsXPのバックアップと再インストールの仕方を書いていたことがありました。
で、それとは無関係に、ある出版社でOS再インストールの本をつくろうという話があったのですが、そこで編集者が、「こんな感じのものを作りたい」と私に見せたのが、ほかでもない私のメルマガだったということもありました。
そういうときは、本も売れるんですね。
2002年に出したのですが、初版1万6000部で10刷出ました。
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まあ今なら、ありえないでしょうね。
そういう経験のある私から言わせていただくと、今からメルマガだけで企画出版にこぎつけるのは厳しいかもしれません。
企画出版というのは、出版社からの依頼で出版することです。
濃い(ニーズが高いという意味)読者から、情報商材など高い単価のものを売るならいいのですが、1500円ぐらいの本を買ってもらう読者にするには、まあ、売りたい部数の10倍の読者を集めなければなりません。
しかし、メルマガ界は飽和状態で、普通の人が読者を何千人何万人と増やすのは至難の業です。
やはり、やりやすいのはブログとツイッターの連携でしょうか。
ブログで、自分の書きたいテーマに沿った記事を量質ともにしっかり書き込み、それをツイッターで流して拡散してもらうのです。
その場合、できればひとつのテーマに特化して書いたほうがいいと思います。
Twitterも、できれば複数のアカウントで、より広範な属性のフォロワーを増やしていくことです。
私は、「目立ちたがり」ではなく、また他人に不寛容なところがあるため、人前に自分や自分の名前を晒すのは実は苦手です。
たかが初版3000部ぐらいの本に対しても、5ちゃんねるあたりでは、嫉妬やあら探しが趣味の人達が事情も知らないで無責任な匿名中傷を次々書き込んできます。
中傷自体は捨て置けますが、そういうことを平気でできる人格というか、心の貧しさを知ると、人間というのはなんてくだらなく汚い生き物なのだと失望もします。
内容によっては、この世の人々全体に対して不信感で身構えてしまうことだってありえます。
そういう神経質な人には、書籍を出して身過ぎ世過ぎするというのは苦痛かもしれません。
が、吉江勝さんの書かれているように自己紹介の一つ話にはなりますし、本職にプラスになることは間違いありません。
「有名税」を覚悟の上で、志のある方は本書を参考にチャレンジされるのもいいでしょう。
以上、『出版で夢をつかむ方法』(吉江勝著、中経出版)は、知識や経験をビジネス拡大に役立てる「ブック・ブランド・マーケティング」を標榜、でした。
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