医者が教える健康断食 Kindle版(文響社)は、「断食ドクター」の異名ももつ医師による最先端の科学にもとづいた断食指南書の決定版です。ジェイソン・ファン医学博士、作家のジミー・ムーアさんの共著、鹿田昌美さん翻訳、小田原雅人医師の監修です。
「食べない健康法」の書籍はこれまでにも何冊かご紹介しましたが、内容は微妙に異なっています。
大きく分けると、
- 一定時間の休食を勧めるもの
- 食事の回数を減らすだけでなく総カロリー自体を減らすことを勧めるもの
との2つのパターンがあります。
今回の医者が教える健康断食は、明々白々に前者です。
前者を標榜するだけでなく、後者を否定しています。
『米国Amazon13,200件以上で「星4.7」の超高評価作、ついに邦訳!』の書籍だそうです。
Kindle版となっていますが、AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
間欠的断食を提唱する
『医者が教える健康断食』は、断食(ファスティング)のメリットを医学的根拠をもって説明するとともに、不安や批判などに答えています。
食べない健康法は、最近しばしば見かけるようになりました。
16時間断食によるオートファジーは、その中でもとくに注目されています。
ただ、16時間というと、1日の2/3です。
むしろ食べない時間帯のほうが長いのです。
それで大丈夫なのか。
エネルギーの補給をしなかったら、どうやって脳や体は動くんだ。
そう思われるのはもっともだと思います。
冒頭から「食べない健康法」と書いてしまいましたが、もしかしたら誤解されるかもしれません。
実際には、食べます。
食べなければ生きていけないのは確かです。
ただし、そこに「休食時間を、暮らしの中に採り入れること」を提唱しています。
本書が提唱するのは「間欠的ファスティング」であり、絶食や飢餓とは違うのです。
糖尿病も肥満も「間欠的ファスティング」で対策
本書は、インスリンを脂肪蓄積ホルモンと説明します。
食べるとインスリンが増加し、食物エネルギーの一部を後で使うために脂肪として蓄えるよう、体にシグナルを出すのがインスリンの仕事といいます。
高インスリン値が継続すると、結果的に肥満になります。
過剰なインスリンが肥満を引き起こすなら、インスリンを減らせばいいのであり、それには食べない「間欠的ファスティング」により、高インスリン値を下げ、肥満を解消すべきだといいます。
が、もしそうだとすると、インスリンを処方する2型糖尿病の治療は間違いということになります。
本書が言うには、血糖値が上がるのは体がインスリンを作れないからではなく、インスリンが効きにくくなる、すなわちインスリン抵抗性のためだといいます。
その対策には、「間欠的ファスティング」だとしています。
「低カロリー」+「運動」はダメ
肥満や糖尿病対策は、カロリーの摂取量を減らして運動をすればいい、という説もあります。
しかし、本書はそれを明確に否定しています。
理由は、
以前よりも少ない量を食べているのに、代謝が落ちているために体重が増えていく
からです。
体は2000カロリーの燃焼になれているのに、1200カロリーしか入らなければ、それに合わせて燃焼カロリーも減らすのです。
ですから、カロリーを減らしたから痩せるだろう、という皮算用の通りにはならないといいます。
そして、肥満の根本的な原因は『カロリー』よりも『ホルモン』の不均衡の問題 だからです。
完全に食べないことこそが、インスリン値を下げると明言しています。
カロリー制限だけでは、インスリン抵抗性に歯止めがかからないとも言います。
その一方で、間欠的ファスティングを定期的に行うことで、インスリン感受性が向上するそうです。
心臓病も脳卒中もガンもアルツハイマーも
といっても、本書が間欠的ファスティングを提唱しているのは、痩せるためだけではありません。
本書は、間欠的ファスティングの効用をこれだけ枚挙しています。
- 心臓病
- 脳卒中
- アルツハイマー病
- 高コレステロール
- 高血圧
- 腹部肥満
- 非アルコール性脂肪肝炎(脂肪肝)
- 多嚢胞性卵巣症候群
- 通風
- アテローム性動脈硬化
- 逆流性食道炎(GERD)
- 閉塞性睡眠度無呼吸
- 癌
あらゆる病気に効きますね。
断食の不安に答える
本書は、間欠的ファスティングを行っても、電解質は安定したままといいます。
また、栄養をとらないことで疲れやすくなったり、エネルギーがなくなったように感じたりするのではないかと不安に思う人もいるかも知れませんが、実際にはエネルギーが満ちて、活力が得られるそうです。
体には、引き続き脂肪を燃やすことでエネルギーは供給され続け、その脂肪燃焼にはアドレナリンが使われるからです。
断食は、代謝が落ちるのではなく、代謝が改善されるのです。
ここが、上掲の「低カロリー」とは異なるところです。
食事は成長ホルモンを抑制するので、間欠的ファスティングによって成長ホルモンの分泌も増えるといいます。2日間の断食で、成長ホルモンが5倍になったという報告もあるそうです。
老化現象の多くは、成長ホルモンの分泌量の少なさが原因なので、間欠的ファスティングは「若返り」にも貢献できるわけです。
「特定の栄養素」ではなく「特定の食べ物」単位で考える
では、間欠的ファスティングを行っている時以外の、つまり「食べる」ときは、何を口にしたらいいのでしょうか。
本書によると、昔の「国民のための食生活指針」では、食事に含まれる脂肪を総カロリーの30%未満に抑えるように勧めていましたが、それには全く根拠はないといいます。
主要栄養素に基づくガイドラインは、すべての脂肪が等しく、すべての炭水化物が等しく、すべてのタンパク質が等しくあることが前提となっていますが、決してそうではありません。
たとえば、エキストラバージンオリーブオイルも、トランス脂肪酸のマーガリンも、同じ脂肪ではあっても同等ではありません。
天然の鮭のタンパク質は、高度に精製されたグルテンとは違います。
砂糖の炭水化物は、ブロッコリーやケールの炭水化物とは違います。
100キロカロリーのグリーンサラダを食べても、100キロカロリーのチョコレートチップクッキーのようには太りません。
つまり、たんなる「炭水化物」「脂肪」「タンパク質」ではなく、その質を問え、ということですね。
本書は、「特定の栄養素」ではなく、「特定の食べ物」を摂るか否かに注目するのが、最善のアドバイスとしています。
では、特定の食べ物とは、例えばどんな食べ物なら推奨できるのでしょうか。
本書は、これらを枚挙しています。
- 「未加工の食品」を「まるごと」食べる
- 「砂糖」と「精製されたもの」を避ける
- 「天然脂肪」を多く含む食事を摂る
- 「脂肪代替品」を減らす
ショートニング、揚げ物、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸を、私達の体は処理することができません
これらは、これまでにもよく聞く「何を食べたらいいか健康法」に出てくる話ですね。
もっともシンプルでお金のかからない健康法
著者はアメリカの医師と作家のため、必ずしも日本の実情とはイコールではないところもあります。
たとえば、インスリン値が高いから断食で下げようと書かれていますが、アジア人の糖尿病患者は低インスリン値が多いと本文中に注釈がついています。
ただ、そこは「インスリン抵抗性」が本質的問題なので、そのままご紹介しました。
トランス脂肪酸については、農林水産省の公式サイトで、こう説明されています。
要するに、日本人の摂取量は深刻ではない、ということなのでしょう。
でも、「いいもんじゃないから気をつけよう」ということで、なるべく避けるものとして、頭に入れておいたほうかいいと思いご紹介しました。
本書には、12時間から数日まで、さまざまなスパンの「間欠的ファスティング」について説明されています。
巷間、いろいろな健康法はありますが、「食べるのをやめてみる」のは、もっともシンプルでお金のかからない健康法ではないでしょうか。
みなさんも、いかがですか。
以上、医者が教える健康断食 Kindle版(文響社)は、「断食ドクター」の異名ももつ医師による最先端の科学にもとづいた断食指南書の決定版、でした。