喧嘩ラーメン(土山しげる著)全17巻は、市内随一といわれるラーメン店の息子が、横浜以西の各地域でラーメン修行に励む話です。醤油ラーメンだけでなく、その対局にあるとも思われるとんこつラーメンでも腕を振るうところがミソです。
『喧嘩ラーメン』は、土山しげるさんが描いた漫画全17巻を、日本文芸社から上梓したものです。
この記事は、Kindle版をもとにご紹介しています。
土山しげるさんと言うと、グルメ漫画のイメージが強いのですが、発表順に見ると、本作が初めての原作なしグルメ漫画のようです。
主人公・源田義経は、M市の暴走族の総長であり、市内随一といわれるラーメンの名店「がんてつラーメン」の息子です。
しかし、父親があることで手をけがして、以前のように腕が振るえなくなり入院。
成り行きから義経が店を切り盛りすることになりますが、成り行きからライバルチェーン店と味対決。
相手の職人・牛嶋の作った次世代指向のとんこつラーメンを食べて衝撃を受けます。
次世代のラーメンはとんこつにあり、ということ知った義経は、西へ向けて修行の旅に出ます。
が、博多直行ではなく、横浜や広島など、各地に寄って、やはり成り行きからラーメンの味勝負をおこな手前。
ストーリー上はM市となっていますが、北関東だそうなので、前橋のことではないでしょうか。
『孤独のグルメ』(原作)も、実在っぽい店を舞台にしながら、地名や店名はあえて出さなかったですよね。
それで、一通り勝負と修業を終えて戻ってくると、なんと父親の店の前で屋台をはじめます。
父親の店と同じところから、麺と鶏ガラを仕入れて、味勝負を仕掛けるのです。
勝負の好きな男です。
しかも、父親の店では、因縁の牛嶋が働いているという、実に興味深い設定です。
本書は2023年5月23日現在、kindleunlimitedの読み放題リストに含まれています。
グルメ、ヤクザ、経済界などテーマは広範
土山しげるさん(1950年2月20日~2018年5月24日)は、生前からファンが多かったので、KindleUnlimitedの読み放題リストにはたくさんの作品が公開され、またこのブログでも多くをご紹介してきました。
『食キング』(日本文芸社)は、「B級グルメ店復活請負人」の主人公が、傾いた庶民向け飲食店を再建するストーリーです。
私は土山しげるさんというと、まず『食キング』が思い浮かびます。
『漫画版野武士のグルメ カラー版1st01』(久住昌之/原作、幻冬舎)は、定年を迎えた還暦男性がありふれた食堂を巡るストーリーです。
『男麺』(ゴマブックス)は、商社に勤める無類の麺好き主人公が、立ち食いそばや町中華の焼きそばなどで騒動を解決する話です。
『喰王スペシャル』(日本文芸社)は、食べることが好きなキャバクラ店長が、食べ物で問題を解決する日常を描く漫画です。
『シャケ』 (原作/津流木詞朗、ナンバーナイン) は、肩を壊したドラ1投手とブルペン捕手が球界の事件を解決します。
『どぶ』(日本文芸社)は、会社を謀議でリストラされた主人公が、風俗業界で失敗しながらものし上がる話です。
『蛮王(バンキング)』(漫画/土山しげる、原作/平井りゅうじ、ゴマブックス)は、家族を奪われた銀行員の復讐を描く社会派漫画です。
『邪道』(土山しげる著、日本文芸社)は、人生を双六にたとえて、ラーメン業界から政界に進出を試みる青年の野望を描いた漫画です。
『極道ステーキDX』(2巻分収録)全10巻(工藤かずや、土山しげる、ゴマブックス)は、御曹司財閥総帥がヤクザ社会でノシ上がる話です。
食べ物がテーマであることは多いのですが、必ずしもそれだけではなく、実業界の「裏」や「闇」をもテーマにしています。
どの作品も面白いので、ご一読をおすすめします。
ストーリーに出てきたとんこつラーメンは既存にない新しいタイプ
とんこつラーメンの豚骨スープは、一般的には以下のような種類があります。
- 白濁豚骨スープ(もともとの伝統的なとんこつラーメンのスープで、豚骨を長時間煮込んで作られます。濃厚でコクのある味わいが特徴です。)
- 赤味噌豚骨スープ(赤味噌を加えることで、豚骨スープに深い味わいとコクを与えます。)
- 黒豚骨スープ(黒豚の骨を使用し、より濃厚な味わいを楽しめます。一部の地域で特に人気があります。)
- 塩豚骨スープ(塩を使用して調味されたスープで、豚骨の旨味に塩の風味が加わります。さっぱりとした味わいです。)
- しょうゆ豚骨スープ(しょうゆを使用して味付けされたスープで、豚骨の旨味としょうゆの風味が絶妙に調和します。)
これらは一般的な種類ですが、地域やラーメン店によって独自のバリエーションが存在する場合もあります。また、他の調味料や具材を組み合わせることで、さまざまな味わいのとんこつラーメンが提供されることもあります。
ところで、前述のストーリーのご説明のところで、「職人・牛嶋の作った次世代指向のとんこつラーメン」と書きましたが、上掲の4種類のいずれとも違うのです。
スープは真っ黒。
といっても、イカ墨ではなく岩のり。
スープに溶けず食感もよく、全面を覆うことでスープの熱が逃げない。
でも臭いは強烈。
スープは、とんこつというより、豚の頭を長時間とろけるまで煮込み、隠し味にわずかの薄口醤油を入れたものです。
濃厚なのに、しつこさが口に残らない。
それゆえ、あとを引くスープ、と説明されています。
「頭を長時間とろけるまで煮込」んで、スープがどろどろにならないんでしょうかね。
天下一品のこってり鶏ガラスープは有名ですが、相当濃厚でした。
物語だからできたのか、現実に作れるのか。
作れるなら、ぜひ味わってみたいですね。
前橋ラーメン徹底解説
余談になりますが、舞台となったラーメンを、「前橋ラーメン」の特徴とあわせて推理し簡単にまとめておきます。
醤油ベースのスープ: 前橋ラーメンのスープは、醤油の風味が特徴のようです。スープは時間をかけてじっくりと煮込まれ、旨味が凝縮されます。
太めのちぢれ麺: 前橋ラーメンでは、太めのちぢれ麺が一般的に使われます。この麺はもちもちとした食感があり、スープとの相性が良く、しっかりとした味わいを楽しむことができます。
大きなチャーシュー: 前橋ラーメンの特徴的な具材として、大きなチャーシューが挙げられます。豚肉をじっくりと煮込んで作られた柔らかくてジューシーなチャーシューは、ボリューム感があります。
香味油やニンニクの利いた味付け: 前橋ラーメンでは、香味油やニンニクを加えて味付けすることが一般的です。これにより、スープにコクや風味が加わり、より深い味わいが楽しめます。
シンプルなトッピング: 前橋ラーメンのトッピングは比較的シンプルで、メンマやネギ、刻み海苔などが一般的です。具材のシンプルさが、スープと麺の味わいを引き立てます。
これらの特徴は、前橋ラーメンの一般的なスタイルをもとにまとめましたが、リアルのラーメン店は、個々のラーメン店や職人の技によって微妙なアレンジや差異が生まれることもあります。前橋ラーメンは、濃厚な味わいとボリューム感が特徴であり、地元の人々に親しまれています。
以上、喧嘩ラーメン(土山しげる著)全17巻は、市内随一といわれるラーメン店の息子が、横浜以西の各地域でラーメン修行に励む話、でした。