【極!合本シリーズ】喰いタン(寺沢大介著)は、同作の単行本を2巻ずつひとまとめにした合本版で、全6巻リリースされています。歴史・推理作家で私立探偵の高野聖也が、事件の謎解きに駆り出されると、必ず食べ物をきっかけに解決していきます。
『【極!合本シリーズ】喰いタン』は、寺沢大介さんが、ライツコーポレーションから上梓しています。
『喰いタン』は、『イブニング』(2002年6月号~2009年15号)に連載されていた人気コミック。
テレビドラマにもなりました。
全16巻を、合本して全6巻に凝縮してリリースされました。
この記事は、Kindle版をもとにご紹介しています。
グルメ×探偵という新機軸のストーリー。
「喰い」と「タン」は、そういう意味だったんですね。
登場人物は、歴史・推理作家で私立探偵の高野聖也。
その助手兼秘書で、料理をつくることもある出水京子。
事件の謎解きを、高野聖也に依頼する後輩の緒方警部。
歴史小説の担当変者である寺田。
ストーリーは、主人公の高野聖也が、私達の想像を絶するような場面と量で食べ物を貪欲に求め、しかもそれが事件解決につながってしまいます。
食べ方が、どう見てもナンセンス漫画のように思わせて、実は事件を解く鍵になっているというのは、なかなかよく考えられていますよね。
本書は2023年2月10日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
そこまでして食うかーっと思いきや事件解決の実証に
「食べ方が、どう見てもナンセンス漫画のように思わせて、実は事件を解く鍵になっている」ところを、第1話のあらすじからご紹介します。
記念すべき第1話は、後輩の緒方警部に事件の協力を要請された高野聖也が、その前の腹ごしらえで、立ち食いうどんを3杯もおかわりして、1時間遅刻するところから始まります。
うどんを3杯で1時間はかからないので、ほかにもなにか食べた可能性はあります。
いくら食べてもケロッとしているので、きっとギャル曽根のような胃腸の作りになっているのでしょう。
事件は、金持ちの大橋保典老人に、後妻にはいった若い女・希美が殺されたのです。
死亡推定時刻に、彼女は薄化粧をしていました。
ということは、だれかと会っていた可能性があります。
事件現場のキッチンに入った高野聖也は、冷蔵庫を開けると、タッパーの中に入っていた料理を、次々皿に盛り付けます。
「いったい、何が始まるんだ」と興味深く見守る刑事たち。
すると、あろうことか、それを食べ始める高野聖也。
それどころか、ワインまで空けてしまいます。
「犯罪現場の冷蔵庫の料理を……悠々と食っとる」
唖然とする刑事たち。
高野聖也は、冷凍してあったスープまで、電子レンジでチンして食べています。
鴨肉を口にした時、「う……!?」と言葉に詰まる高野聖也。
「何だ、料理に毒でも入っているのか」と、色めき立つ捜査陣。
「う、うう…………うまい!」
ずっこける捜査陣。
ガツガツと、結局冷蔵庫の中のものをすべて食べきってしまった高野聖也。
「はあ、満足」
そして、デザートは、やはり冷蔵庫に入っていたティラミス。
「これまたなんとも……」
「ちょっとあんた。いい加減にしてくれ」
とうとう若い刑事が怒り出しました。
「いや、まだデザートを一口しか……」
「いいから、出てってくれ!!」
「殺伐としとるな」
「殺人現場だ!」
事件現場で、冷蔵庫の中のものを食い尽くすというのは、たしかにナンセンスの極致ですね。
しかし、ここで終わらないのが、この漫画の新機軸なんです。
これは、ストーリーの最後にわかります。
高野聖也は、緒方警部に確認します。
「緒方。デザートだが、この近くに美味いケーキ屋はあるか」
「さ、さあ、家政婦さんに聞いてみたらどうでしょうか」
高野聖也と出水京子が入ったのは、やはり初老の婦人が開いているケーキ屋さんです。
「大橋さんなら、よく存じ上げています。でもあんなことになるなんて。犯人が1日も早く捕まるといいですね」
「あ、あれは……」
「え……!?」
「どうしたんですか」と、出水京子もびっくりします。
「チーズケーキが30種類もある!」
ドンガラガッシャーン、とずっこける京子。
テーブルにケーキがたくさん並び、それを頬張る高野聖也。
「それで先生。あの事件の手かがりは、何かつかんだんですか」と出水京子が聞くと、
「うん、そうだな。あの奥さんの料理は実に美味しかった」と、高野聖也。
「真面目に返事していただけませんか」
「冗談を言っているつもりはない。あの料理のおかげで、彼女は死ぬことになったんだ」
「え……?」
高野聖也は、それ以上は語らず、そこからケーキ屋を10軒ハシゴします。
そして、捜査陣を呼び出した高野聖也は、「うまいケーキ屋を見つけたんだ」と、初老の婦人が開いているケーキ屋さんに連れていきます。
「いい加減にしてくれよな」
「こっちは捜査が行き詰まって、上もカリカリしてんのに」と、イライラする刑事たち。
「先輩、それで、あのう……手掛かりが何か?」
「うん、あの料理は旨かったな」
「おい、本当にいい加減に……」と、若い刑事がまた怒りだすと……
「あんまり旨すぎて、毎日食えば、死ぬな」
ここで、刑事たちはハッとします。
「そういえば、あの料理は、どれもこれも高カロリーに高脂質」と、気づく出水京子。
希美は、糖尿の大橋老人を、長い時間をかけてゆっくり殺害するために、高カロリーのものを食べさせたのか、と緒方警部も気づきます。
しかし、いったい何のために。
そもそも、「後妻業」なら、なぜ希美のほうが殺されてしまったのか。
高野聖也は、誰かが被害者の「後妻業」に気がついて、それを阻止するために希美を殺したのだと推理します。
そして、デザートで食べたティラミスは、ローカロリーの材料で作られていたことを指摘。
そのティラミスと、この店のティラミスは同じものである、と解きます。
ケーキ店の婦人は、ケーキナイフを使った犯行だっことを、あっさり自供しました。
昔、関係のあった大橋老人を殺害する計画に気づき、若い恋人といちゃついていた希美を視察してしまったのです。
「たった一口、ケーキを食べただけで、ここまでの推理を組み立てるとは……」
「さすが、緒方警部が捜査協力をするほどのことはある」と、やっと高野聖也の推理力に気づく刑事たちでした。
ということで、毎回、高野聖也は食べるのですが、その状況が凄まじいのです。
第4話の『殺人現場の寿司を喰う』では、タイトル通り、殺された被害者が食べかけた寿司を食べてしまいます。
これはもう、漫画とは言え、さすがに仰天でした。
しかし、回を追うごとに連れ、それはエスカレートし、とうとう第9話は『犬のエサも喰う!』まできてしまいました。
突然死んだ犬の死因を調べるために、高野聖也は何と、死んだ犬が食べかけたエサまできれいに食べ尽くしているのです。
もちろん、それらはすべて、事件の解決に必要な検証になっているんですが、このストーリー展開は、腹を抱えて爆笑できる数少ないナンセンス推理漫画といえます。
設定を変えてテレビドラマ化も
寺沢大介さんといえば、『ミスター味っ子』『将太の寿司』『喰いタン』など、食べ物関連のヒットマンガがありますが、私はこの『喰いタン』が一番好みです。
『喰いタン』は、2006年1月14日~3月11日まで、日本テレビ系の「土曜ドラマ」枠(土曜日21:00~21:54)でドラマ化されました。
主演は東山紀之。
といっても、高野聖也と出水京子以外は、ドラマオリジナルの登場人物で、設定も違っているんですけどね。
もちろん、翻案作品として独自の価値はあると思いますが、原作に忠実な設定でも、とくに無理はなかったのにどうしてかなという気はしました。
視聴率は15%をキープし、その後もスペシャル版が制作されたので、成功だったのではないでしょうか。
この機会に、論より証拠でご一読をおすすめします。
以上、【極!合本シリーズ】喰いタン(寺沢大介著)は、同作の単行本を2巻ずつひとまとめにした合本版で、全6巻リリースされています、でした。
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