執着しないこと(アルボムッレ・スマナサーラ著、中経出版)は、生きることを楽しむための方法「捨てる道」を伝授する書籍です。仏教は、諸行無常と一切皆苦の教えの通り、望み通りにはならず、得られても永遠のものではないと悟るものです。
『執着しないこと』は、アルボムッレ・スマナサーラさんが、中経出版から上梓した書籍です。
この記事は、Kindle版をもとにご紹介しています。
お釈迦様の仏教では、心の中の煩悩を取り除くことを求めています。
煩悩とは、人が生きる時に感じる苦しみの原因になるものです。
生まれる苦しみ、老いる苦しみ、病を患う苦しみ、死ぬ苦しみを「四苦」、それに大切な人と別れる苦しみ(愛別離苦)、嫌いな人と出会う苦しみ(怨憎会苦)、欲しくても手に入らない苦しみ(求不得苦)、肉体的・精神的な苦しみ(五陰盛苦)の四つの「苦」が加わり「四苦八苦」といいます。
それらは決して逃れられるものではなく、また自分の思いどおりにもなりません。
ではなぜそこから苦しみが生まれるのかは、煩悩があるからとしています。
煩悩の根源は、この世のものはすべて永遠に変わることがないとする「常」、この世は楽しいことばかりであるという「楽」、この世のものはすべて実体を持っているとする「我」、この世は清浄な世界であるとする「浄」
など、「苦しみは、 この世の様々なものに対する執着を縁として生じる。」(『スッタニパーダ』1050)といいます。
さすれば、執着しなければ、四苦八苦からも開放されるということです。
本書は、そのことを平易に解説しています。
本書は2023年5月25日現在、kindleunlimitedの読み放題リストに含まれています。
テーラワーダ仏教とはなんだ
本書の著者であるアルボムッレ・スマナサーラさんは、スリランカ上座仏教(テーラワーダ仏教)長老であり、日本テーラワーダ仏教協会で初期仏教の伝道と瞑想指導に従事しています。
では、テーラワーダ仏教とはなんでしょうか。
テーラワーダ仏教は、上座部仏教とも呼ばれ、仏教の主要な教派の一つです。
上座部仏教は、仏教の分類のひとつで「長老派」を意味しており、現存する最古の仏教の宗派です。
上座部仏教は、基本的に自己完結的で、個人が修行し、「悟り」を開くことを目的としています。
現在、テーラワーダ(上座部)仏教を名乗っている宗派は、「分別説部」という部派です。
この教派は、主にスリランカやミャンマー(ビルマ)などの東南アジアの国々で広く信仰されています。
テーラワーダ仏教は、仏教の教えや戒律を厳格に守ることを重視しています。
上座部仏教は、仏陀(釈迦)の教えや教義を維持・保存し、正確に伝えることを重視しています。
そのため、上座部仏教の経典や戒律は、仏陀の時代からの伝統的なものを保持しています。
上座部仏教の経典は、パーリ語で記されており、主な経典の集まりは「パーリ・カノン」として知られています。
上座部仏教では、修行者は自己の解脱を追求することに焦点を当てています。
出家者(僧侶)は、厳格な戒律に従って生活し、精進や瞑想を通じて悟りを目指します。
一方、在家信者も仏教の教えを実践し、日常生活の中で道徳的な価値観や瞑想を取り入れながら、自己の成長と解脱を追求します。
上座部仏教は、テーラワーダ仏教とも呼ばれるように、他の仏教教派と比べてより保守的な傾向があります。
そのため、上座部仏教の信仰体系や修行方法は、他の仏教教派とは一部異なる場合があります。
この教派では、仏陀の教えや教義を正確に伝えることが重要であり、経典の研究や修行の実践に力を入れています。
また、修行者は自己の解脱を追求することに焦点を当て、個人の努力と実践によって悟りを得ることを目指します。
テーラワーダ仏教の修行者は、出家者(僧侶)と在家信者の二つのカテゴリに分けられます。出家者は厳格な戒律に従って生活し、精進や瞑想を通じて悟りを求めます。
一方、在家信者は日常生活の中で仏教の教えを実践し、家族や社会での責任を果たしながら、自己の成長と解脱を追求します。
テーラワーダ仏教は他の仏教教派と比べて、より保守的で伝統的な傾向があります。しかし、個々の信仰心や実践方法は地域や文化によって異なる場合があります。
なお、テーラワーダ仏教以外にも、マハーヤーナ仏教やヴァジラヤーナ仏教など、さまざまな教派や宗派が存在します。
アルボムッレ・スマナサーラさんの著書
アルボムッレ・スマナサーラさんの著書については、これまでにもご紹介してきました。
『原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話』(アルボムッレ・スマナサーラ著、佼成出版社)は、お釈迦さまの言葉に最も近い経典の日本語訳と解説です。
本書は内容がよりコンパクトで、タイトルに「一日一話」とついています。
これは、ひとつの詩句ごとに、日本語訳を書き、次にその解説をしているからです。
1日に1詩句ずつ読んで下さい、ということだと思います。
『初めての本上座仏教―常識が一変する仏陀の教え』(アルボムッレ・スマナサーラ著、Evolving)は、仏教が説く心の問題をまとめています。
霊魂はありません、神や仏にただ祈っても奇跡も何も起こりません、など、宗教「らしくない」内容に驚くはずです。
仏教以外の宗教について、「神様が何でも差配するのなら宗教はいらない」という、ド直球の指摘を行っています。
『それならブッダにきいてみよう』(アルボムッレ・スマナサーラ著、Evolving)は、テーラワーダ仏教の教えをまとめています。
本書は、2ページで一問一答の形式で、質問と回答の形式で、1つのテーマをまとめています。
たとえば、
怒らなければ楽に生きられる?(質問)
↓
「怒らないこと」は二つの幸福を作る(回答)
のように展開しています。
『般若心経は間違い?』(アルボムッレ・スマナサーラ著、Evolving)は、テーラワーダ仏教の立場から阿含経と般若心経の違いを解説しています。
この書籍も強烈です。
何しろ、浄土真宗や日蓮宗以外の大乗仏教が大事にしている『般若心経』を徹底批判しているのですから。
といっても、別にそれをよりどころとする宗派を否定することが目的ではなく、要は、お釈迦様の教えとはここがズレでいる。という指摘です。
お釈迦様の仏教の最保守派とすれば、それはもっともな話です。
本書とともに、それらの書籍もお読みいただけると、より本書への理解が近くなるのではないかと思います。
以上、執着しないこと(アルボムッレ・スマナサーラ著、中経出版)は、生きることを楽しむための方法「捨てる道」を伝授する書籍、でした。
執着しないこと (中経出版) – アルボムッレ・スマナサーラ
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