『情報の「捨て方」知的生産、私の方法』(成毛眞、角川書店)は「人生は短い!バカ情報に構っている暇はない。」という衝撃的なコピーの帯がついています。人生も仕事もどう“情報を捨てるか”で決まるとする知的生産のための情報活用以前の教科書です。
成毛眞さんについて
『情報の「捨て方」 知的生産、私の方法』は、成毛眞さんの著書です。
Kindle Unlimitedで無料で読みました。
成毛眞さんをご存知ですか。
今もパソコンのシェアの第一位であるWindowsのメーカーである、マイクロソフトの日本法人第2代代表取締役社長を20世紀終盤につとめた方です。
パソコン雑誌に限らず、一般誌紙でもしばしば登場していたので、パソコンに詳しくない方でもお名前をご存じの方は多いのではないでしょうか。
マスクロソフトは外資系の会社と言う気がしますね。
そのように大きな仕事をされましたが、一区切り付くと、ご本人は新しい世界へ進み、会社も送り出しました。
日本だったら、終身社長になってしまうのではないでしょうか。
それはともかくとして、マイクロソフトは退社され、自由の身になった成毛眞さんは、投資コンサルティング会社を起業。
ベンチャー企業の取締役・顧問などにも就任しました。
その上に、言論人として様々なメディアで発言しています。
成毛眞さんは、中央大学商学部を卒業しています。
Wikiには、「自動車部品メーカー、アスキーなどを経て1986年にマイクロソフト株式会社(日本法人、以下MSKK)入社。1991年よりMSKK代表取締役社長」と書かれています。
ということは、マイクロソフト社長就任までの経歴は、比較的平凡です。
もちろん、有名大学から就職されている事自体わけですが、今回はもう少し上の、今風に言えば「上級国民」の話です。
旧帝大の出身であるとか、留学してMBAを取得したとか、キャリア官僚だったとか、伝統ある大企業の要職を務めたといった、社会の新旧トップの人たちが、何かしらまとっている経歴は一切経験していません。
目に見えない階級社会の我が国では、異色の大抜擢。
自身でベンチャーを立ち上げて成功する場合を除けば、稀有な“オーバー”といえるわけです。
成毛眞さん自身は「大衆」という言葉を使っていますが、要するに成毛眞さんは「普通の人」から社会の「上層階層」に到達しました。
その成毛眞さんが書かれた内容は、人生も仕事も、どう“情報を捨てるか”で質が決まるとし、「良い情報はどこ?」などと考える前に、疑え、見極めろ、距離を置け、と述べています。
よりよく生きるための「情報活用」はよくいわれますが、それ以前にそもそも、活用する情報を絞れ、という内容です。
その日頃の体験を織り交ぜながら、こんにちの多種多様な情報の分別、取捨選択について述べています。
どうやってオーバーしたか。
オーバーするために必要な情報の選別方法、ということです。
結論から述べると、それには雑多な情報にいちいち付き合わずに、有益な情報だけを効率よく採り入れて実践しなさい、と書かれています。
摂取する情報は閾値を設けて損切りするのです。
その際の心構えは、「易き(安き)に流れない」こと、といいます。
たかがランチ、されどランチ
本書では、たとえば、吉野家の牛丼ばかり食べてはいけないといいます。
といっても、毎日高級料理ばかり食べろとは言っていません。
吉野家が嫌いというわけでもありません。
著者は、「吉野家の牛丼は毎日食べてもいいかな、と思うくらい」好きだそうです。
ただし、安いものを食べ続けていると、その金額が当たり前になってきます。
目についた店に、値段がやすいと言うだけで考えなしに入って昼食をとる日々を過ごしたらどうなるでしょう。
安いものに慣れてしまい、厳選された店の厳選されたメニューが見えなくなります。
つまり、易き(安き)に流れると質の見極めができなくなる、ということを述べているわけです。
格安な情報ばかり、または超有益な極秘情報ばかり求めるのではなく、何事もバランスが大切だそうです。
これは耳が痛い。
1000円のランチを食べていたのが、収入が下がったら500円のランチにしようとか、貧乏だったら、ないなりの生活をすればいい、と普通の人は単純に考えてしまうところです。
もちろん、破産したら身も蓋もありませんから、それはひとつの見識であり現実ですが、だからといって500円のランチばかり食べていたら、“500円の世界の人間”になってしまい、もう1000円のランチを食べる従前の立場には戻れなくなる、ということを著者は言っているのです。
ランチの値段はひとつのたとえではあるわけですが、考え方・生き方の基本がそこにはあります。
レベルの低い選択や判断に慣れてしまった人間は、ランチだけでなくすべてにおいて安目を売って低きに流れる人間になっちゃうよ、といっているのです。
たかがランチ、されどランチです。
カードが使える現代ですし、破産しない程度に、貧乏でもたまには無理をして贅沢をすることも必要ではないかと思いました。
みなさんは、ランチ、フンパツされてますか。
さらに情報の分別、取捨選択
具体的な情報源も書かれていますが、詳しくは本書を読んで頂くことにして、好き嫌いが極端に分かれる成毛イズムを一部抜粋しましょう。
興味を持った場所は自分で足を運ぶ
その際「ここはどうなっているのだろう」という質問を用意し、答え合わせをすることで、漠然と観光する人とは得られる情報は天と地ほど違う。
※実証の精神は、学術にもジャーナリズムにも通じることです。
真実より事実を重視する
事実に紛れ込む、素人ブログの思い込みや願望は狭い視野の上に成り立つオピニオンに過ぎない
※私は「右」であれ「左」であれ特定の政治的立場ありきのメッセージは、「あなたがそう思っているということはよくわかった」という以上の評価は留保しています。
したがって、ニュースサイトは「NHKニュース」と「47NEWS」だけでいい。
文章は短く端的で余計な情報が付加されていないものだけを相手にする
ベストセラーに手は出すな
大衆が読んでいるような本を読んでいたら、その大衆の中に埋もれてしまう
※あえて、「大衆」とは違う批評をするために手を出す方法もありかと私は思いますが、たいていは著者の指摘通り、流行に遅れたくないという「横並び」精神でトレンドに飛びつくのが現実だと思います。
(セルフプロデュースとして)自分に意外性をもたせることを意識する
国内のオフィスワークの人は海外情報を積極的に求め、逆に海外出張の多いビジネスマンは、歌舞伎や能など日本文化のディープなところにどっぷり浸かるなど。
広告は、流行を端的に表しているため、門外漢が全体を把握するのに適している。いきなり専門的な記事を見ても全体は把握できないし、その記事の深さも理解できない。その世界を知りたければまずは広告から俯瞰すること
テレビは貴重な情報源だが地上波に評価できるものは少なくBSがおすすめ。たとえばNHK BS1の『国際報道』、Eテレの『サイエンスZERO』、BS日テレの『ぶらぶら美術・博物館』など。
格差や競争に情報弱者であってはならない
大衆と同じ行動では大衆から抜け出せない。
抜け出すためのインテリジェンスは、93%の人が知らないけど7%の人とは共有しているもの。
それを手に入れるためには自分の軸を持つこと。
まあ要するに、「無駄なことをしている暇はない」ということでしょうね。
こうした内容について、「なんだか大変そうだな。自分は『大衆』のままでいいから、他者と同じことを無難にやっていくよ」と思われますか。
ただ、本書は、「大衆」を脱せよと進軍ラッパを鳴らしているというより、これからは年功序列がくずれて成果主義になるなど、格差や競争がシビアな時代になるから、そこでコケないためには情報弱者になるな、という警鐘の書ではないかと私は解しました。
もちろん、何事もバランスが大事と本書でも述べられています。
BSでもおかしなコンテンツはあるし、5チャンネルから新しい事実や建設的な論考のヒントも観ることはできます。
私は、情報弱者が格差や競争において不利な立場に置かれることは望ましくないと考えます。
情報は、個人が意思決定を行い、自分の人生をより良くするための重要な要素です。
したがって、情報弱者が格差や競争において不利な立場に置かれることは、彼らの権利を侵害する可能性があります。
以上、『情報の「捨て方」知的生産、私の方法』(成毛眞、角川書店)は「人生は短い!バカ情報に構っている暇はない。」情報選別の書、でした。