手などつないで!(みやわき心太郎著、Jコミックテラス)は、同級生の女子に思いを寄せる幼なじみにハラハラする青春ラブコメです。ヒロッペの想いも知らず、隣のクラスの芦原あゆみさんに夢中な幼なじみの次郎。果たして恋の顛末はいかに?
『手などつないで!』は、みやわき心太郎さんが描き、Jコミックテラスから上梓されている昭和のラブコメ漫画です。
みやわき心太郎さんといえば、先日も、『初恋さん今日は』をご紹介しました。
トミコと三郎の奥手な高校生2人が、不器用ながらも互いの思いを高める話です。
今回もまた、少しだけハラハラする高校生男女のカップルの物語です。
初出は、1978年の『マンガ少年』3月号(朝日ソノラマ)となっています。
後に書きますが、少年誌のラブコメ、というところが味噌ですね。
当時、トップページでは『異才が精魂込めて謳い上げる青春の美!!』と紹介されています。
そして、ハートコレクション、というサブタイトルがついています。
本作は、原画をデジタル化したのではなく、紙に印刷されたものをスキャンしているようです。
いわゆる反射印刷ですね。
細かい線とかが飛んでいます。
1970年代の漫画は、今も多くが流通していますが、本作について言えば、原画はもう存在しない貴重な作品と言えるかもしれません。
本書は2023年2月14日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
漫画図書館Zでも、同日現在、無料閲覧リストに含まれています。
みやわき心太郎 『手などつないで!』 #マンガ図書館Z https://t.co/NnC8FAwj6t
— 赤べコム (@akabecom) February 3, 2023
この記事は、Kindle版をもとにご紹介いたします。
ヒロッペの気持ちに気が付かない次郎くん
最初のシーンは、ヒロッペがスケートボードを走らせながら、次郎くんの家を訪ねています。
増田次郎くんの家は、公道から坂を少し登ったところに玄関がある豪邸です。
つまり、次郎くんは、お坊ちゃまということがわかります。
それにしても、この頃から、スケートボードがあったんですね。
覚えてないなあ。
ローラーゲームが流行したので、私もローラースケートはやりましたけどね。
それはともかくとして、ヒロッペがたずねても、次郎くんのお母さんは「いるけど、ちょっと変よ」と伝えます。
次郎くんの部屋に入ったヒロッペ。
押し入れの中で、塞ぎ込んでいる次郎くんを見つけます。
暗闇の中から、次郎くんが持っているスケッチブックを取り上げると、女性の顔が。
「ねえ、誰これ」
「芦原あゆみ」
「そんなタレントいた?」
「ぎゃふん」
「なによぉ」
「3年A組出席番号1番、芦原あゆみだよ」
「どうしたのよ、それが」
「そこまで言わすなよ。にぶいなあ」
「ええ~っ」
「そうなんだよ」
シラーっとするヒロッペ。
「わかんねーだろーな。君にはこんな気持ち」
「ふーん、私だって」
「いるの?彼氏」
「い、いるわよ。ずっと前から。なにさ!」
「へ~、ヒロッペは食い気専門じゃなかったの。ギャハハ」
次郎くんはまだおこちゃまで、デリカシーが無いのです。
もちろん、ここでいうヒロッペが想っている「彼氏」とは次郎くんなのですが、相手が誰であっても、とにかく次郎くんの態度はよくないですね。
ちなみに、増田次郎くんは2年生。
芦原さんは1学年先輩になります。
朝の通学で、同じ電車になっただけでご機嫌の次郎くん。
うーん。
ご機嫌ということは、まだ本気ではないな。
遠くで見て憧れているレベル。
本気で意識すると、ごきげんというより、心臓がドキドキするよね。
そういう経験ありませんか。
授業中も、先生の話なんか全く聞かないで、ノートには「あゆみちゃん」と何度も書き続ける始末。
教科書を読んで、と指されても、気がつかない次郎くん。
発狂する先生を見て、慌てて立ち上がるものの、違う教科の教科書を逆さまに持っています。
髪を振り乱し、ますます気が狂う先生。
同じクラスのヒロッペが、自分のノートに、読むべきページを大きく書いて、次郎くんに見えるようにしますが、休み時間のベルに救われました。
先生も、そんなことぐらいで発狂していたら、教師はつとまりませんよ。
私の高校のころは、居眠りとかしてるやつもいましたから。
三流校なんて、入るもんじゃありませんね。
次郎くんの部活は柔道部。
おぼっちゃまのくせに硬派です。
体育館で稽古しますが、ここでもヒロッペは同じ体育館で練習する卓球部です。
柔道部の畳が敷いてある隣が、もう卓球台なんですよ。
ヒロッペは、よほど次郎くんが好きなんですね。
いつも、次郎くんの近くにいたいんです。
次郎くんは、ここでも上の空のため、キャプテンに可愛がられています。
可愛がるって、意味わかりますよね。
そして、帰り道。
次郎くんとヒロッペは、一緒に帰ります。
いったい、この2人はどこまで仲がいいんでしょう。
「今日はさんざんだったじゃないの」
「いーの、もう柔道なんてやめんだから。芦原さんの演劇部に入るんだよーん」
芦原あゆみ。
たしかに、清楚です。綺麗です。
女子高生役を演じていた頃の、ジュディ・オングさんのような感じだなあ。
演劇部では、次郎くんは「2枚目半」と紹介されているので、やっぱり釣り合わないわけです。
そもそも、芦原あゆみさんには、許嫁(いいなずけ)がいる、ということで、この恋は告白するまでもなく終わってしまうんですけどね。
それにしても、高校3年でもう許嫁ですか。
どういう進路かわからないですけど、まだいろいろな人と知り合うチャンスもあるし、自分の人生観が変わる可能性だってあるのにねえ。
要するに、お嬢さんで、親の決めた人と何の疑いもなく結婚してしまうんですね。
まあ、それはともかくとして、その間のヒロッペの胸を痛める数々のシーンが可愛そうですね。
有刺鉄線を張ったくさっパラで、しょんぼりしている次郎くんに、ヒロッペが声をかけます。
というか、有刺鉄線なんて、昭和ですね。
次郎くんの失恋を知って、元気が出るヒロッペ。
次郎くんは、そこでのやりとりで、ヒロッペの「彼氏」というのが、実は自分だったと知ります。
ヒロッペに、ほっぺたをパシーンと叩かれて目が覚める次郎くん。
「悪かったよ。もう誰も好きにならないから。約束する」
この一言で、ヒロッペは次郎くんを、いともかんたんに許してしまいました。
このへんの台詞のやり取りや仕草や表情などは、ぜひ本作をご覧ください。
だいたい予想できる展開ではあるわけですが、台詞のやり取りをご紹介したように、登場人物がイキイキと描かれていて、何度読んでも全く飽きさせないと思います。
青春ラブコメにふさわしいときめきを感じますよ。
昭和らしいラブコメ
それにしてもねえ、私がヒロッペの立場だったら絶対にしこりを残しますね。
こいつは、ほかの異性に気を許した奴だ、といつも心の何処かに疑念と憤りと悔しさを沈殿させて……(爆)
それと、やっぱりこれは、昭和のラブコメですね。
どんな星の王子さまと出会えるかだけが楽しみだった女性そのものですから。
少年誌のラブコメ、ということもあるかもしれませんね。
あくまで男サイドの願望に基づいたラブコメ。
今の女の子だったら、こんな2枚目半に、そんなにこだわらないでしょう。
自分だって将来どうなるかわからないから、相手の男性にもそんなに期待せず、別の異性になびいたら、それっきり自然消滅ではないでしょうか。
もう少し、なぜヒロッペが次郎くんにそんなに夢中になるのかを描いても良かったような気がしますね。
次郎くんはおこちゃまですが、ヒロッペはすごく魅力的に描かれていますから。
いずれにしても、男としては、懐かしくて羨ましいラブコメです。
自分も、こんな同級生がいたらなあと思いますね。
みなさんにも、ご一読をおすすめします。
以上、手などつないで!(みやわき心太郎著、Jコミックテラス)は、同級生の女子に思いを寄せる幼なじみにハラハラする青春ラブコメ、でした。