日記漫画札幌の六畳一間(根本尚著、ビーグリー)は、北海道のアパートに住む売れない漫画家の日常生活を描いた日記的漫画です。有名でもない、単行本を出したこともない、何か賞を取ったこともない人の日常でもKindleとして上梓できるのです。
『日記漫画札幌の六畳一間』は、漫画家の根本尚さんによって描かれ、ビーグリーから上梓されています。
根本尚さんは、北海道出身で北海道在住。
日常雑記的テーマが得意の漫画家です。
本書について、Amazonの販売ページには、「単行本なし、受賞歴なし、アシスタント歴なし、担当に会ったことなしの北海道在住の漫画家・根本尚の日常生活がディープに語られる!?」と紹介されています。
検索すると、単行本は出てきますので、これはあくまで、「単行本なし」というのは、この書籍を上司した当時、ということだと思います。
「アシスタント歴なし」というのは、同人誌出身だからでしょう。
漫画家になるには、私が知る限り3通りあり、ひとつは漫画家の事務所でアシスタントとして働き、腕を磨くながら業界のことも勉強する道。
2つ目は、まんが雑誌が募集している賞に応募して入賞する道。
3つ目は、同人誌からデビューする道。
2つ目と3つ目の場合、アシスタントの経験がなくとも、全くの素人からいきなりプロの世界に入ることはありえます。
「担当に会ったことなし」というのは、やはり遠方だからではないでしょうか。
私も、最初に本を出したのが、京都の出版社でしたが、出版まで1度も会わずに、メールや電話のやりとりで済ませていました。
で、発行後に、拙著にいちゃもんを付けたやつがいたので、対策をたてるために私が京都まで出向き、そのときに初めてお会いしました。
今は、メールもありますし、Zoomで顔を見ながらの会話も可能ですからね。
ということで、本書は2023年5月12日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
架空のメイドキャラが登場
漫画家が、自分自身の生活をネタにする書籍は、これまでにもご紹介してきました。
ただ、本書のように、「売れない漫画家」としての生活を披露するのは初めてですね。
著者は、北海道の1間でも風呂付きのアパートに在住。
家賃2万円だそうです。
東京23区の相場ではではあり得ないですね。
1話4ページで、そこでの生活の日常を描いています。
「私は根本尚。北海道在住の売れない漫画家だ!この作品は私の日常の記録である!」
という書き出しが必ず入ります。
ただ、著者のひとり語りになると単調なので、架空のメイドキャラが、話の受け手として登場します。
内容は、日常がいかに貧しいかという話ですね。
洗濯機がないからコインランドリーを使っているとか。
スーパーは値引き品しか買わないとか。
連載が終了したり、ネーム(下書き)の書き直しが厳しかったりといった職業的な愚痴とか。
8年間の漫画家生活で、純然たるファンレターはたった1通だけだとか。
まあ、何かためになるというわけでもないし、爆笑するというわけでもないのですが、ああ、売れない漫画家というのはこういうものか、という話です。
他人の日常生活を気にするという意味で、面白いでしょうね。
というか、人間で、他人が全く気にならないというのは、ちょっとまずいですよ。
そういってイバッてる人いますけどね。
それ、別にいいことではないですから。
だって、人間の価値観て相対的なものですし、仏教では諸法無我といいますが、人や自然のバランスの中で私たちは生きているので、世間を一切遮断して生きるということはありえませんから。
そういう意味で、一読をおすすめします。
Kindleで単行本を出せるいい時代
単行本なし、受賞歴なし、アシスタント歴なし、担当に会ったことなしという、職能や実績を表現しようのない北海道在住の無名の漫画家でも、日常生活をディープに語った日記的漫画が、こうして電子書籍になる。
いい時代になりましたね。
本書は、Kindle版というより、Kindleでのみ上梓しているのではないでしょうか。
目次も奥付も、表紙と扉の間の空白ページなどもありません。
表紙の次からいきなり始まり、マンガ本編が終わっても奥付が出てきません。
本書にもあるのですが、自分で紙の書籍をつくろうと思って、著者が算盤を弾いて諦める話があります。
ただし、それはあくまで、製本や印刷の代金です。
出版社はその他、在庫を抱えるための倉庫を持たなければなりません。
「場所のコスト」というのもばかにならないんです。
私も昔、学者とか評論家とか作家が、本がたくさん並ぶ本棚をバックにして、テレビや雑誌のインタビューを受けているのを見て、羨ましいと思いました。
本に囲まれる生活。本は資産だ。すごいなと。
でも、今は少し考えが変わり、「これだけの本を置くコストもばかにならないな。死んだら遺族も始末が大変だろうに」なんて思います。
本が資産というより、その本から学んだことこそが資産なんですよね。
いつ使うかわからない本を、本棚に飾っておくことの評価は、人によって様々かと思いますが、これからは、電子化されているものは電子書籍で購入したいなと思っています。
後々、あとの人のことも考えて断捨離もしなければなりませんが、デジタルなら零スペースですからね。
もちろん、紙媒体として持つことのメリットはありますけどね。
それでもやはり、時代はデジタル化の方向に進んでいるのではないでしょうか。
私も、ここのところ実績を残していませんが、Kindleをうまく活用して、もうひと頑張りしたいと思います。
Kindleでチャンスを掴め!
Kindleと紙の書籍は、それぞれの利点と欠点があり、人々の好みによって評価が分かれることがあります。
一般的に、Kindleは便利で持ち運びが簡単であることが評価され、紙の書籍は直感的で読み心地が良いという点が評価されることが多いです。
ただし、読書体験については個人の好みが大きく関わってくるため、Kindleと紙の書籍の評価が世間で変わることもあります。
例えば、読書を紙の書籍で行うことで、香りや手触り、ページをめくる感触などの物理的な感覚を楽しめることがあるため、紙の書籍を好む人も多くいます。
一方で、Kindleではフォントや文字の大きさを調整できるため、目の疲れを軽減することができるという利点もあります。
また、Kindleや電子書籍には、紙の書籍にはない様々な機能があります。例えば、辞書や翻訳機能を使って、わからない単語を調べることができることや、ハイライトやメモを取りやすいことなどがあります。
これらの機能によって、電子書籍を好む人も増えています。
総合的に見ると、Kindleと紙の書籍は、それぞれの利点や欠点があるため、読者の好みによって評価が分かれることがあります。
ただし、どちらの媒体でも読書の醍醐味を楽しむことができるため、読書の形式にこだわらず、自分が好きな方法で読書を楽しむことが大切です。
なにをいいたいかというと、ともすれば紙の書籍よりも格下に見られるのではないかという懸念のある電子書籍ですが、紙の書籍にはない長所も持ち、市民権を得ているということです。
たぶん、本書の著者も、Kindleで実績を積み重ねていくのではないでしょうか。
無名の漫画家、漫画家の卵、同人誌のみなさんは、Kindleは利用されていますか。
以上、日記漫画札幌の六畳一間(根本尚著、ビーグリー)は、北海道のアパートに住む売れない漫画家の日常生活を描いた日記的漫画です、でした。