早川徳次など『1日1ページで身につく 教養として知っておきたい 世の中を変えた偉人365』(和田孫博、SBクリエイティブ)をご紹介します。タイトル通り、毎ページに1年分の日付をうち、各ページに1人ずつ偉人の人生や功績をまとめた中身の濃い書籍です。(文中敬称略)
2020年1月の刊行以来、ロングセラーが続いている『1日1ページで身につく イラストでわかる 科学の教養365』の第二弾だそうです。
「発明・発見」「宗教・思想」「文化」「芸術」「政治」「ビジネス」「冒険家・アスリート」という7つのジャンルの古今東西の偉人について、1ページの中で功績や生涯をクイズと文章で構成しています。
それを365ページ。
つまり、1日1ページ読んで、1日1人ずつ偉人の生き様や功績を知ってください、という内容です。
ルビが振ってあるので、小学生はもちろん、大人が読んでも知らない偉人もたくさん含まれています。
老若男女が、世界にはこんなにすごい人たちがいたことがよく理解できるようになっています。
この中から、今日は早川徳次(はやかわ とくじ、1893年(明治26年)11月3日~1980年(昭和55年)6月24日)をご紹介します。
金属加工職人から、家電製品メーカー、シャープを創業した叩き上げで自己実現を果たした人生です。
意外と知られていないかもしれませんが、シャープペンシルや、バックル式ベルトの開発者です。
シャープペンシルは、早川徳次が1915年に発明した「早川式繰出鉛筆」がその始まりなのです。
この発明が後に「シャープペンシル」として知られるようになり、シャープ株式会社の名前の由来にもなっています。
家電製品のシャープ創業者
1980年6月24日 #早川徳次 永眠。金細工職人の丁稚から身を興し #シャープペンシル で台頭 #関東大震災 で事業と妻子を喪うも不死鳥の如く蘇り1924年大阪で #シャープ 創業。舶来品の分解から始めた格安国産ラジオで躍進し1953年テレビ国産化に先鞭を付け高度成長に乗りました pic.twitter.com/7mRGtjY4XJ
— 愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ(略してグシャケン?) (@History_JP_5963) June 24, 2024
早川徳次は、東京市日本橋区(現・東京都中央区)で生まれました。
幼少期は厳しい環境で育ち、尋常小学校を2年で中退し、内職を手伝う日々を過ごしました。
その後、金属加工職人としての見習いを始め、技術を身に着けていきました。
1912年、早川は独立して金属加工業を始めました。
1915年には「早川式繰出鉛筆」(後のシャープペンシル)を発明し、特許を取得しました。
この発明は、当初はあまり売れませんでしたが、第一次世界大戦中に欧米での需要が高まり、次第に国内でも人気を博しました。
1923年の関東大震災で工場が焼失し、家族も失うという大きな困難に直面しましたが、早川は大阪で再起を図り、事業を再建しました。
1924年にシャープ株式会社を設立し、家電製品の開発に力を入れました。
主な功績を、Copilotにまとめてもらいました。
1. シャープペンシルの発明: 早川は、金属製のシャープペンシルを発明し、これがシャープ株式会社の基盤となりました。
2. 家電製品の開発: シャープは、ラジオやテレビなどの家電製品を次々と開発し、業界初の技術を多く生み出しました。
3. 企業の成長: 早川のリーダーシップの下、シャープは世界的な企業へと成長しました。
早川徳次の人生は、多くの困難を乗り越えながらも、革新的な発明と企業の成長を遂げた素晴らしいものでした。
彼の功績は、今日のシャープ株式会社の基盤となっています。
人生は帰納法
本書は、国内きっての名門、灘中高の好調である、和田孫博校長の著作です。
灘高は、毎年東京大学の合格者数が群を抜いて第1位です。
では、東京大学合格ありきのカリキュラムかというと、同校は生徒の自主性を重んじているそうです。
生徒が、自由に人生設計を考え、自主的に学習計画を立て、自分のペースで学ぶことを奨励しています。
興味が持てるもの、無心で打ち込めるものは、その気持ちを大事にする。
その結果として、大学合格があるという考え方です。
つまり、東大合格は、あくまで「自分(の人生)を見つめた結果」ということです。
哲学的にいうと、こういう自己実現の達成方法を帰納的といいます。
早川徳次も、最初から、発見や家電会社の創業を目指したわけではなく、金属加工職人としていろいろなアイデア開発に打ち込んだ結果として、シャープにつながったのです。
一方、自己啓発セミナーなどでは、逆にまず最終的な絶対目標(東大に受かるぞ!)を定めて、そのために何をすべきかを逆算してスケジュールを決めて人生を組み立てさせます。
こういう自己実現は演繹的といいます。
人生の道筋は、若い頃の進学はとくにそう思いますが、たいていは帰納的です。
演繹的に東大を目指してしまうと、もし不合格だった場合、人生の立て直しが大変だからです。それだけを考えて生きてきたからです。
その点、帰納的なら、学歴は本質ではないので、志望校に合格できなかったとしても、人としてそこで終わらずに進めるというわけです。
ただ、帰納的であるなら、自分を相対化するために、他の人の生き様や考え方などをたくさん知ったほうが良いでしょう。
365人の偉人の生き様を書きまとめた本書を、それに役立ててほしい、というのが和田孫博さんの狙いです。
うーん、なるほど。さすが灘高の校長は言われることがもっともです。
改めて、読書の重要性を感じました。
私もいささか遅きに失していますが、でもやはりいくつになっても、帰納的な人生を送りたいものです。
年を取ると、「もう歳だから」と、死ぬことから逆算したがる演繹的な人がいますが、臨終が迫ってるとわかっている方ならともかく、いつ死ぬかもわからないのに、比較的高齢になっただけで、どうして「今を生きること」と向き合えないのかな、なんて思いますね。
いかがですか。帰納的に生きてますか。