昭和の不思議101 2020年ー2021年 冬の男祭号 (オーシャンブックス)は、『ヤクザと政治』などをテーマに戦後史を振り返っています。戦後の未解決事件、都市伝説、猟奇犯罪、戦後GHQの陰謀論、有名人死の真相などに言及しています。
日本の主力暴力団の多くは、戦後のドサクサで、一部の朝鮮人、中国人、台湾人などが「自分たちは戦勝国民」との大義で無法を働くのを当時の警察が対処できず、自警団的な役割を果たした「任侠」がはじまりといわれています。
それを改めてまとめたのが本書です。
国家権力とヤクザの関係を振り返り論考する
昭和の不思議101 2020年ー2021年 冬の男祭号 (オーシャンブックス)は、大洋図書が発行しているムックです。
AmazonUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
本書は、「真実は長らく封印されてきた」とのモチーフから、戦後の未解決事件、都市伝説、猟奇犯罪、戦後GHQの陰謀論、有名人死の真相などをまとめています。
中でも圧巻なのは、表紙中央に記載されているヤクザと政治です。
鈴木智彦さんの署名記事です。
『昭和の時代は国家権力とヤクザは常に蜜月関係』というサブタイトルとともに、このようなリードが記載されています。
ヤクザはその見返りとして賭場を街道筋に開いた。
戦後も対左翼対策で時の権力者はヤクザや右翼をたくみに利用した。
元来ヤクザはチンケな詐欺をしのぎにする小物ではなく国家権力をも動かす巨大な存在だったのだ
背景には、山口組三代目組長である神戸芸能社田岡一雄社長と、同社がプロモートする美空ひばりさんの2ショット写真が使われています。
ちなみに、美空ひばりさんの個人事務所であるひばりプロダクションでは、田岡一雄さんは副社長をつとめていました。
田岡一雄組長の三代目若頭(子分のリーダー)が山本健一(通称ヤマケン)。
ヤマケンが若い頃、山口組と他の組の小競り合いで前面に立ち、相手に重傷を負わせて懲役を食らったのですが、全盛中の全盛時だった美空ひばりが加古川刑務所を慰問。
『リンゴ追分』を歌った後、「ここには私のゆかりの方がおります。ケンちゃん、お元気ですか、ケンちゃん、体に気ぃ付けて、まじめにつとめて、はやく帰ってきてくださいね」とひと声かけてヤマケンを励ましたという話があります。
今なら、慰問も、個人的な受刑者への声掛けもないと思いますが、これも昭和ならではのエピソードなのでしょう。
それはともかくとして、政治と暴力団の「なれ合い」は、本書でよくわかります。
民間レベルの「お守り」だの「おしぼり」だのといった“しのぎ”だけでなく、為政者や警察もヤクザを利用してきたのです。
警察は、自らが持てない「暴力性」を使って事を沈静化させたい時、暴力団を利用してきました。
たとえば、終戦直後、“戦勝国民”と称した在日朝鮮人の振る舞いを鎮めるために活躍したのは、1950~1970年代のヤクザ史に名を残したヤクザの自警団、ギャング団でした。
ところが、警察は「民主」化政策で1950年に団体等規制令によって暴力団解散に動くものの、朝鮮戦争が勃発すると、いつのまにかその規制はうやむやに。
昭和30年代には、港湾労働者の側に立ちながらも非共産の港湾荷役協議会会員だった田岡一雄三代目山口組組長に、一日署長すら任せています。
前科のある暴力団組長が一日署長。
昭和らしい、のどかすぎるブラックユーモアというか諧謔というか……。
警察が暴力団の組長に一日署長をさせるなんて嘘のような話ですが、要は60年安保闘争などその時代は社会がまだ殺伐としていたため、警察はヤクザと共存する方策をとったということです。
それが昭和40年代になって社会も高度経済成長時代に入ると、今度はまた暴力団追放に動きます。
頂上作戦と名付けて幹部を次々逮捕し、彼らから生業を切り離して資金源を断ったのですが、そのときも結局ヤクザ組織を壊滅しませんでした。
さらに、1987年(昭和62年)に起こった「褒め殺し事件」で、改めて暴力団取締りの方向に動き、1992年に暴力団新法が施行されました。
「褒め殺し事件」とは、稲川会系の右翼団体「日本皇民党」が、自由民主党総裁選に立候補していた竹下登衆議院議員に対して、「日本一金儲けが上手い竹下さんを内閣総理大臣にしましょう」などと街頭宣伝活動を行った皇民党事件のことです。
政治家ー右翼ー暴力団、というブリッジ連携に影響力を与えたのは、児玉誉士夫さんです。
国民の社会主義・共産主義への関心をそらすために、娯楽で国民を白痴化させようとテレビや夕刊娯楽紙マスコミが戦後登場しましたが、その役割を担ったコンテンツのひとつが、プロレスとその中継といわれています。
関係者の墓が、池上本門寺の墓地に集中的に建立される「墓閥」を形成していることは、先日もご紹介しました。
力道山(プロレスラー)、児玉誉士夫(日本プロレス協会会長・東京スポーツの生みの親)、町井久之(東声会会長・日本プロレス協会副会長)、大野伴睦(衆議院議員、日本プロレスコミッショナー)、太刀川家(東京プロレス社長)、永田雅一(大映・大毎球団オーナー)らの墓が並ぶ墓地群は迫力があります。
在日朝鮮・韓国人を登場させた映画
また、戦後、およびヤクザとの関係で語られるのは、在日朝鮮・韓国人です。
本書では、『先入観は捨てて今こそ日本人は見るべし』というサブタイトルで、『魂が揺さぶられる在日朝鮮人映画』という藤木TDCさんの寄稿も興味深い。
本文中に出てくる作品は、『パッチギ!』『月はどっちに出ている』『血と骨』『キューポラのある街』『あれが港の灯だ』『スパイ』『絞死刑』『日本春歌考』、そして東映の実録映画数作、Vシネマなどにも言及しています。
ただ、個人的に気になったのは、実録ヤクザ映画を打ち切るきっかけとなった『北陸代理戦争』を挙げていないことです。
意図的に外したのかな?
公開されているタイトルを枚挙します。
- 世界の巨大廃墟:ムリーニの谷・三芝飛■(石編に葉)屋……
- 消えた建物
- 世界の立ち入り禁止エリア
- 死刑囚の頼み事
- 死刑囚の書棚
- ヤクザと政治家
- アメリカを動かした シカゴマフィアのドン サム・ジアンカーナー
- 90歳の今も健在 21世紀のクリント・イーストウッド 反逆の一匹狼から銀幕無双の王座へ
- インテリヤクザトップ屋伝説
- 上海の闇に暗躍した阿片王 里見甫
- その味は一言「微妙」きてるぜ北朝鮮
- 闇の世界遺産 飛田新地
- 冤罪ヒーロー一転 野に放たれた殺人鬼 小野悦男の犯罪
- 世界の7大殺人鬼
- 星野じゅんから松原ヱマに 今を生きる・・・
いずれにしても、日本の「闇」や「タブー」に迫る読み応えある一冊だと思います。
以上、昭和の不思議101 2020年ー2021年 冬の男祭号 (オーシャンブックス)は、『ヤクザと政治』などをテーマに戦後史を振り返っています、でした。
昭和の不思議101 隠蔽された真相解明号 (オーシャンブックス) – 大洋図書
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