『昭和の怪物 戦後政財界のドンたち』は、記事と写真で構成されたムック『週刊現代別冊 週刊現代プレミアム 2020Vol.2』のテーマです。政財界の清濁併せ呑んだといわれる人たちから16人を選び、その生き様について改めて振り返っています。
『週刊現代別冊 週刊現代プレミアム 2020Vol.2 ビジュアル版 昭和の怪物 戦後政財界のドンたち』(講談社)は、完全保存版ビジュアルMOOKとして刊行されました。
キャッチコピーは、『ヤクザ顔負けの抗争、裏切り、怪死。戦後の日本を駆け抜けた異色の政治家たちと、その側にいたフィクサーや名物財界人。独自証言と貴重な写真満載の決定版。』とあります。
「風見鶏」は政敵を尊重していた
『昭和の怪物 戦後政財界のドンたち』は、先日ご紹介した『週刊現代別冊 週刊現代プレミアム 2020Vol.1』のシーズ続刊です。
『2020Vol.1』では、『昭和の怪物 闇と光の芸能界編』として18人の芸能人を特集。
このブログでは、石立鉄男さんについて書かれた記事をご紹介しました。
今回は、16人を特集しています。
- 中曽根康弘……「風見鶏」の一生
- 安岡正篤……「昭和の指南役」が遺したもの
- 小佐野賢治……角栄も動かした政商
- 池田勇人……高度経済成長を作った男の後ろ姿
- 大野伴睦……裏切るくらいなら、裏切られることを選ぶ
- 佐藤栄作……忘れられた男
- 中川一郎……改めて「謎の死」の真実を追う
- 竹下登……角栄を葬った男、その因果応報
- 本田宗一郎……「オヤジ」と呼ばれた男の背中
- 盛田昭夫……NOと言った日本人
- 永田雅一……永田ラッパが聞こえた頃
- 金丸信……やがて悲しき政界のドン
- 渡辺美智雄……ミッチーの口八丁が時代を動かし
- 安倍晋太郎……いい人から逝く
- 浜田幸一……愛すべき愚か者
- 昭和天皇……オーラとベール
この16人の半数以上と絡みながらも、今回漏れている人もいますね。
田中角栄さんです。
後に書きますが、「フィクサー」というなら、児玉誉士夫さんも欠くべからざる人物でしょう。
まあ、こうした企画は、必ず人選で意見が色々出てきますから、キリがないですけどね。
個人的には、中曽根康弘さんの記事が面白かったですね。
官房長長官に、当選2回で他派閥・国家観も違う後藤田正晴さんを起用した件です。
「二人がしばしば激しくやり合う姿を見て、ある時、総理に『なぜ起用したのか』と聞いてみた。すると、『霞が関の役人を使えて、危機管理ができて、自分に意見してくれるからだ』と答えました。常に国の将来のことを考えている懐の深い総理でした」(中曽根政権時代に官房長官秘書官として官邸に勤めていた平沢勝栄衆議院議員・自由民主党国際局長)
日本共産党の宮本顕治元議長の訃報の際にも、自由民主党の元総裁でありながら追悼コメントを発しているように、「政敵を尊重する」気持ちはぶれていないのだなと思いました。
あとは、16人の中に、「墓閥」を構成している大野伴睦さんと永田雅一さんも挙げられていることが興味深いと思いました。
墓閥
奇しくも、今回取り上げられた中に入っている、大野伴睦さんと永田雅一さんは、フィクサーの墓閥であることを、私はブログ記事で書いたことがあります。
日蓮宗の大本山であり、開祖・日蓮入滅の霊場であり、かつ布教の殿堂でもある池上本門寺には、多くの有名人の墓があります。
たとえば、日本プロレスを作った力道山の墓があるのは有名な話です。
なぜ、力道山の墓がそこにあるのか、
ひとつは、その目と鼻の先にある、現在都営浅草線車検場になっているところに力道山の自宅がありました。
つまり、ご近所だったわけです。
ただ、それだけではなく、生前、力道山と深いつながりにあった人たちの墓も、そこに見ることが出来るのです。
あの世へ行っても同志である、というフィクサーたちの絆を見て取ることができます。
力道山の墓所の隣には、江戸幕府征夷大将軍家・徳川氏の母体松平家の墓がありますが、そこから通路を1つ挟んで、右翼のフィクサー・児玉誉士夫さんの墓があります。
児玉誉士夫さんは日本の右翼運動家で、「政財界の黒幕」「フィクサー」と呼ばれました。
暴力団の顧問を務めるとともに、保守政治家のスポンサーになり、かつ「日本の赤化阻止」のために娯楽で大衆を篭絡することを目的として、日本プロレス協会会長をつとめたり、夕刊娯楽紙の東京スポーツを作ったりました。
まさに、本書の企画趣旨からすれば、真っ先にリストアップされてもおかしくありません。
本書が、なぜ児玉誉士夫さんを今回リストアップしなかったのか、企画趣旨を考えると疑問が残りますが、当然、日本プロレス界の開祖である力道山とのつながりは深いものがあります。
YouTubeにアップされている、古い日本プロレス中継の動画で、試合前の協会会長挨拶で児玉誉士夫さんの貴重な肉声を聞くことができます。
その兄弟分といわれたのが、東声会の町井久之さんです。
山口組三代目・田岡一雄組長とともに、日本プロレス協会副会長をつとめ、東日本の興行を東声会、西日本の興行を山口組が担当したと言われていますが、児玉誉士夫さんの隣に墓があります。
今回リストアップされている大野伴睦さんの墓は、その少し後ろにあります。
本書でも触れていますが、虎の石像があります。
大野伴睦さんは、プロレス好きで、日本プロレスコミッションのコミッショナーであり、力道山が亡くなった際には葬儀委員長もつとめています。
そして、隣りには東京スポーツ新聞社社長・会長の太刀川家の墓が並んでいます。
改装されましたが、河野一郎さんの墓もあったそうです。
さらに、その墓群と向かい合う位置に、永田雅一さんの墓があります。
私が行った時は、他の方の墓はお参りができるのですが、永田雅一さんの墓だけは墓の周りが石塀や植木などで、一般の人が入れないようになっていました。
Wikiの「永田雅一」によると、永田雅一は、「戦後、河野一郎や岸信介との交流から、一時政界のフィクサーとなっていた時期があった。特に警職法改正で閣内が分裂した際に当時の岸首相が大野伴睦に対してされたとする政権禅譲の密約を交わした際に萩原吉太郎、児玉誉士夫とともに立会人になったとされている。」と書かれています。
つまり、ヒーローレスラー力道山を含め、保守政治家・右翼・裏社会・マスコミという、“裏で支配層を支え動かす人々”のつながりがすでに公然としており、永田雅一もその一人であると墓閥をもって自ら証明しているのです。
実に興味深いですね。
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以上、『昭和の怪物 戦後政財界のドンたち』は、記事と写真で構成されたムック『週刊現代別冊 週刊現代プレミアム 2020Vol.2』のテーマです。でした。
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