晴れたらねっ(東城和実著、白泉社)は、主人公の高校生が、性格は対象的な双子の女子大生との微笑ましい三角関係を描いています。顔はそっくりなのに、片方は元気で要領がよく片方はオクテ。そんな2人に翻弄される若者を描いた青春ラブコメディ。
『晴れたらねっ』は、東城和実さんの漫画。
白泉社から発行しています。
『全巻無料で漫画読み放題!』でおなじみのマンガ図書館Zの、無料閲覧リストに入っています。
東城和実 『晴れたらねっ』 #マンガ図書館Z https://t.co/oCQXcGSKbf フツーの高校生の主人公が、気が強くて要領のいい真理絵とカタブツでオク手な由理絵の間で翻弄される。ていうけど、フツーの高校生がいきなりそんなモテ期になるわけないんで、やっぱりラブコメは本当の「フツー」の人の夢ですね。
— 石川良直 (@I_yoshinao) December 28, 2022
発行は1998年。
でも、1970年代あたりに少女誌に出ていた漫画と変わらない読後感でした。
時代は変わっても、青春のラブコメってそんなに根本的に変わるわけじやないのかな。
時代は移ろい、携帯電話やネットができても、主体はあくまで人間ですからね。
自分の若い頃を思い出せた作品だったので、ご紹介いたします。
ネットの販売ページの紹介では、「ごくごくフツーの男子高校生、村岡元基は年上の女子大生にフラれた直後に双子の女子大生と知り合う」という設定になっていますが、「ごくごくフツーの男子高校生」で、「年上の女子大生」と付き合えてしまうこと自体、決して「ごくごくフツー」ではないんですよね(笑)
それはともかくとして、その知り合った「双子の女子大生」とは、一方はフランクな付き合いだけど交友関係は幅広い。
もう一方は、ツンデレで、悪気はないのに会話が変な展開になってしまう。
そのどちらとも関わりながら、惹かれ、翻弄されるウラヤマシー高校生活。
ね、これって私が子供の頃からありがちなラブコメのパターンなんですよ。
果たして、この奇妙な「三角関係」の行方はどうなるでしょうか、というのが全11話にわたって続いています。
さばけた真理絵とオクテの由理恵
舞台は、いきなり女子大生に別れを告げられる「フツーの高校生」の村岡元基。
「誕生日のプレゼント、何がいい?」
「土地」
「……はい?」
「あたし金持ちで仕事のできる、顔も見た目もいい青年実業家ってやつが好きなのよ。ってわけでさよなら」
それを学校でクラスメートの岸川に報告。
「だったら、最初から高校生と付き合うなよな」
「しかし、頭のいい仕事のできる男は、たかが女子大生のために土地なんか買わないと思うぞ」
「村岡。お前、遊ばれたんじやないの」
そこへ、山森が入ってきます。
「女子大生なんて、そんなもんだって。ウチの姉貴もすごいぞ。大して好きじゃない男からのプレゼントなんて、迷惑だっつって、とっとと質屋に売りに行くぞ」
「山森、お前、お姉さんいたのか」
というわけで、いつの間にか話は元基の話から山森の姉の話になり、山森の家に姉を見に行くことになりました。
「村岡、お前、もう女子大生はいいんじゃなかったのか」
「いや、一応見るだけ」
若いというのはそういうことです。
帰ると、姉がいました。
「おかえりー。あら」
「真理恵、いたの」
弟ですが、姉を呼び捨てにするフランクな姉弟のようです。
「それにしても、きたないのいっぱい連れてきたわね」
「ねーちゃんたちに会わせろってうるさいからさ。由理絵は?」
「部屋で勉強してんじゃないの。騒ぐと怒られるわよ」
階段を上がって右の奥の部屋。
岸川がいいます。
「ここ、ねーちゃんの部屋かな」
へやのふすまを開けようとするので、元基は止めますが、「いーって、どうせ部屋にはいないんだから、ちょっとだけ」と、襖を開ける岸川。
すると、中にはもう一人姉がいて、「ギャーッ」と叫ぶと、襖を開けた岸川ではなく元基の方を叩きます。
この勘違いによる「波乱の出会い」も、ラブコメの定番ですね。
慌てて2階に上がる、山森と真理絵。
「俺の友達。許してやってくれよ。こいつ失恋したばかりでさ」
「だから俺じゃなくて岸川が……」
「つい出来心と好奇心で……」
真理絵は確認します。
「ところで、何やったの?」
「いきなり入ってきて、ノックもなしに」
「それから?」
「それだけ…だけど…」
「その程度でピーピー泣いてんじゃないわよ。全く人騒がせな。」
「そりや、真理絵は、へっへっへつ平気かも知んないけど、あ、あ、あたしはやっぱり…」
「わかった、わかった」
「あのー、ところで……」と尋ねる岸川。
山森は答えます。
「ああ、ねーちゃんたち双子なんだ」
「えーっ」
という出会いから、顔はそっくりだけど気が強くて要領のいい真理絵と、カタブツで徹底的にオク手な由理絵の間で翻弄される元基の「奇妙な三角関係」が始まります。
といっても、肉体関係もないし、キスもしないし、コクリもないので、そもそも三角関係といえるかどうかも謎ですが、まあそこは、青春ラブコメということで。
2人の間を揺れ動いて、果たして結末はどうなるのかは、ぜひ無料で本書をご覧ください。
「まさか」と思いながらも憧れる「疑似体験」
テレビドラマでは、すでに1980年代に、男女関係とっかえひっかえのトレンディドラマが当たり前のように放送されました。
そして、1990年には、「カンチ、セックスしよーっ」の『東京ラブストーリー』も放送されていたので、21世紀直前の1998年に、こんなライトな青春ラブコメが発表されているとは思いませんでした。
私は少女漫画は好きで、高校生ぐらいまでは、『りぼん』『別冊マーガレット』『花とゆめ』は必ず読んでいたんですけどね。
さすがに社会人になり、三十路が見えてくる頃には、少し距離が遠くなりました。
まあ、てっきりストーリーもトレンディドラマに合わせて変わったんだろうな、ぐらい思っていたので、改めて当時を思い出し、「ああ青春のラブコメっていいなあ」と思いました。
これまで、現代のヒットコミックもご紹介してきましたが、いずれも私が感じたのは、「こんなことないよな」と思いながらも、絶対にないとは思わせないリアリティを作中のセリフやストーリー展開にに散りばめた「全体はフィクション。細部は真実」という作り方の物語がいいなと思いますね。
たとえば『妻、小学生になる』(村田椰融、芳文社)は、もう言うまでもありません。
最愛の人が不幸にして亡くなっても、また蘇って家族を叱咤して楽しませてくれればいいのにな、という思いを具現してくれています。
『セブンティウイザン~70才の初産~』(タイム涼介、新潮社)もそうですね。
「70歳で出産なんてありえないよ」と言いながらも、妻の「いつかできると信じてた」というセリフに読者は感情移入するのです。
子宝に恵まれなかった人はもちろん、恵まれた人でもまだ欲しい人は、心の何処かでそういう気持ちがあるんですね。
だから、漫画で疑似体験をしているのです。
その意味では、本書『晴れたらねっ』も、そんな心境の読者に支えられているのかもしれませんね。
20世紀の書籍ですが、今もマンガ図書館Zだけでなく、複数のネットの電子書店で公開されています。
無料で読めるところもありますし、いかがですか。
以上、晴れたらねっ(東城和実著、白泉社)は、主人公の高校生が、性格は対象的な双子の女子大生との微笑ましい三角関係を描く、でした。