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毒親サバイバル(菊池真理子著、KADOKAWA)は、毒親育ちの作者の告白とともに、10人の毒親育ちの人たちの話を漫画にまとめた

毒親サバイバル(菊池真理子著、KADOKAWA)は、毒親育ちの作者の告白とともに、10人の毒親育ちの人たちの話を漫画にまとめた

毒親サバイバル(菊池真理子著、KADOKAWA)は、毒親育ちの作者の告白とともに、10人の毒親育ちの人たちの話を漫画にまとめたものです。毒親というのは、子にとって毒のような悪影響を及ぼす親という意味。子は大人になってもその影響に苦しみます。

『毒親サバイバル』は、菊池真理子さんが著し、KADOKAWAから上梓しました。

LScomicというシリーズ名がついています。

この記事は、Kindle版をもとにご紹介しています。

菊池真理子さん自身が毒親育ちで、そのことを自己紹介しながら、10人の毒親育ちの人たちにその壮絶な人生をヒアリングして漫画にまとめたものです。

毒親については、もうこのブログでも何度も記事にしています。

毒親というのは、子にとって毒のような悪影響を及ぼす親という意味で使われる言葉です。

『毒になる親 完全版』という、アメリカのセラピスト、スーザン・フォワードさんが上梓した悩む数千人のカウンセリング結果と解法の名著から、この言葉が使われるようになりました。

『毒になる親 完全版』は、アメリカのセラピスト、スーザン・フォワードさんが上梓した悩む数千人のカウンセリング結果と解法
『毒になる親 完全版』は、アメリカのセラピスト、スーザン・フォワードさんが上梓した悩む数千人のカウンセリング結果と解法の名著です。毒親というのは、子にとって毒のような悪影響を及ぼす親という意味で使われる言葉です。

しかし、儒教と家制度の影響が強い日本人大衆には、なかなか「毒親」問題と向き合う潔さに欠ける人もいます。

以前ご紹介しましたが、2019年4月18日(木)に放送された、『クローズアップ現代+』の、『毒親って!? 親子関係どうすれば・・・』という放送で、キャスターの武田真一さんが、こう自己弁護して涙を流しました。

「あのー、私は、毒親という言葉にものすごく抵抗があって、それを耳にするたびにですね、1人の親として本当にズタズタに切り裂かれるような痛みを感じるんですね」

武田真一キャスターによると、親は子供を思って一生懸命育てており、子供に期待するのは当然ではないかというのです。

よもや、この記事を読まれているあなたは、こんな的はずれなことは言いませんよね。

『気づけない毒親』(高橋リエ、毎日新聞出版)では、毒親のタイプを分類しています。

『気づけない毒親』(高橋リエ、毎日新聞出版)は子を圧迫する毒親の6つの傾向をまとめ支配されている人生の克服を希う
『気づけない毒親』(高橋リエ、毎日新聞出版)は、昭和世代で戦後後遺症とも言うべき「ねばならない」という強迫観念から子を圧迫する、毒親の傾向と対策についてまとめています。「自分の親に限って」とは考えず、自分のこととして考えてみませんか。

こんなあなたは毒親認定できる6つ+1の傾向です。

  1. ジャイアンタイプ
  2. 可愛そうな母タイプ
  3. パフォーマンスタイプ
  4. 至れり尽くせりタイプ
  5. 逃避タイプ
  6. 自己愛タイプ
  7. 毒父タイプ

それぞれの解説は、上掲の記事を読んでいただき、みなさんも毒親育ちかどうかを判定してはいかがでしょうか。

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「普通」ではない生活をもとめてしまう自分がいる

本作は、作者を含めて11人の「毒親の犠牲者」の告白が描かれていますが、作者自身の話をここではご紹介しましょう。

子どもにとって、普通は家族が基準。

だから、家がおかしくてもなかなか気づかないし、また大人になって気づいても、すでにしっかり価値観として刷り込まれていて、なかなか克服するのが難しいのです。

作者は、その苦しみを述べています。

作者の父親はいつも飲んだくれて深夜に帰宅。

週末は友人が集まり、徹マン会場に。

母親は宗教に逃げ込み、子供と向き合ってくれませんでした。

でも、作者は、ほかの日常を見たことがないから、よそのうちもこんなもんだろう、と疑いもしなかったそうです。

普通から外れている家庭だと気がついたのは、母親が生活に絶望して自死した時。

酔った父親の世話に疲れ、客にはいつも召使いのようにこき使われ、宗教に救いはなく、どんなに尽くしても、愛も感謝も返されなかった母親。

でも、亡くなったら、もう取り返しが付きません。

その時、作者は中2で多感な14歳でした。

「でも、お母さん。(死のうと決める前に)私のこと思い出さなかったの?思い出してもダメだったの?私ってその程度?」

変なことしたら、親が自殺したからだと後ろゆびさされると考えた作者は、以後、必死で自分をコントロール。

悲しい現実は見えないよう、感じないよう仮面を被って、人前では明るく元気なふりをして……。

続けるうちに、本当の自分はどんどん薄くなり、母親が死んでも、父親の世話をし続ける日々が、また作者の「普通」になりました。

生きづらいと思うことすらなく。

ただ、一人分の食べ物を買うことができなくなり、つい二人分買ったり、呼吸した時にお腹が動くのを見られたくなくて人前では息を止めたり、他者には理解されにくい行動ですが、自分が生きようとしていると、知られることが恥ずかしかった、と作者は述懐しています。

人に心を開くこともできなくなりました。

普通の人たちの、毎日の生活は、なだらかな道をゆっくり歩くようなもの。

一方、作者の生活は、次に上がるか下がるかわからないジェットコースター。

あるとき、急に電話がかかってきて、父親が酒酔運転で事故を起こしたと連絡が来るのです。

父親の不始末は、作者には何の責任もないのに。

でも、ずっとジェットコースターの人生だったから、ゆっくり歩く人生はスリルがないと感じることも。

本当は、息つくヒマもなく振り回されているだけなのに。

だから、深く付き合った人も、大酒飲みで作者を殴る人。

どこで殴られるか、次になにをされるかわからない状況は、自分の家庭の「普通」に似ていて、痛かろうが怖かろうが“知った場所”

居心地が悪くなかったそうです。

このへんも、毒親で苦労したことのない人には、わからないだろうね。

心が病んでいる?

そうかもしれません。

でも、病ませたのは本人ではなく毒親なんですよ。

よく、悪い親から逃げられず、もしくは親の刷り込みを克服できないことをもっと、苦労知らずの「普通の人」は、

「どうしてお金渡しちゃうの?」

「どうして逃げないの?」

なんて言いますよね。

そう言う「アドバイス」はごもっともなんですが、そんなに簡単にいかないんですよ。

毒されて異常を普通と刷り込まれるってそういうことなのです。

よく、事件や騒動を起こした人の素性が、毒親など恵まれないものであったと推察できる場合、起こした事自体ではなく、その背景について「成人してからまで親の影響を受けるなんておかしい」という、「親の影響を否定する批判」があるのですが、それは毒親の影響を軽視した意見だと思います。

民法第818条は、「①成年に達しない子は、父母の親権に服する。 ②子が養子であるときは、養親の親権に服する。 ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。」とされています。

親が右向けと言ったら、子は右を向きなさい、というのが現在の日本が定めた親子関係のあり方なのです。

つまり、子は親に人格まで支配された奴隷である、といっているようなものです。

そうやって、親から強引に価値観や思考・判断のシステムを刷り込まれて人生を積み重ねた子が、いきなり生き方・考え方をひっくり返すのは困難なことです。

これは、親元を離れれば、おとなになれば解決ということではなく、たとえば親が亡くなった後でも自分の人生に「毒親の影」はついてまわるということです。

毒親はどうして毒親になったのか、も考えてほしい

毒親問題については、「至言」が「はじめに」に書かれています。

「どんな親でも子どもを愛してるんだから」とか
「育ててくれた親に感謝しなよ」とか
「親と不仲のヤツはヤバい」とか
「親を捨てるなんて不孝者」とかとか。
そんなバカなこと、言わない世の中にしたい。

そうなんです。

「バカなこと」なんです。

親子というのは対等ではありませんから、「正しくない言い分は聞かなくていい」などという紋切り型の理屈は通らないのです。

対等だったら、毒親なんてものはありえません。

にもかかわらず、親は絶対だ、という価値観から抜け出せない人がどれだけ多いことか。

そもそも、そのように刷り込んでいる時点で、その親は毒親決定なんですけどね。

以前、『毒親に育てられました 母から逃げて自分を取り戻すまで』(つつみ著、KADOKAWA)をご紹介したことがあります。

毒親に育てられました 母から逃げて自分を取り戻すまで(つつみ著、KADOKAWA)は、タイトル通り恐怖と威圧と虐待の生活を描く
毒親に育てられました 母から逃げて自分を取り戻すまで(つつみ著、KADOKAWA)は、タイトル通り恐怖と威圧と虐待の生活を描いています。毒親が毒親を育てるといいますが、毒母の源泉は毒祖父であったことまで打ち明けられるくだりは圧巻でした。

その時の繰り返しになりますが、毒親は毒親(つまり毒祖父母)に育てられている可能性があるので、親の問題点も、祖父母の問題点もしっかり店晒しして背景を合理的に突き止め、その悪いものは自分の代で止める。

次世代には、できる限りその悪いものを受け継がせないようにすることが必要です。

そのためには、親の批判をためらう必要はなく、それどころか、遡れるのなら祖父母に遡って追求することです。

本書に注文点があるとすれば、その点です。

本書は、毒親の壮絶さは描かれているのですが、ではその毒親はどうして毒親になったのか、まで描かれるともっとよかったと思います。

本作のままですと、親だけが悪者になってますが、親だって好き好んで毒親になっているわけではないと思いますよ。

毒親が毒親を作るのです。

以上、毒親サバイバル(菊池真理子著、KADOKAWA)は、毒親育ちの作者の告白とともに、10人の毒親育ちの人たちの話を漫画にまとめた、でした。


毒親サバイバル (LScomic) – 菊池 真理子

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