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漫画で読む文学『蜘蛛の糸』(イラスト/だらく)は大泥棒のカンダタがお釈迦様の慈悲に応えられる利他の精神を持たなかった話

漫画で読む文学『蜘蛛の糸』(イラスト/だらく)は大泥棒のカンダタがお釈迦様の慈悲に応えられる利他の精神を持たなかった話

漫画で読む文学『蜘蛛の糸』(原作/芥川龍之介、イラスト/だらく)

漫画で読む文学『蜘蛛の糸』(原作/芥川龍之介、イラスト/だらく)は、地獄に落ちた大泥棒のカンダタが、お釈迦様の慈悲で仏国土に引き上げられる機会を得ながら、利他の精神を持たなかったばかりにそれが実現しなかった仏教的寓話です。

ひさしぶりに、だらくさんの漫画文学作品をご紹介します。

だらくさんは、青空文庫(著作権フリーになった作品のアーカイブサイト)入りした名作を、『漫画で読む文学』シリーズとしてKindle用に漫画化しています。

これまでにも、太宰治原作『走れメロス』『黄金風景』、宮沢賢治原作『葉桜と魔笛』『注文の多い料理店』芥川龍之介原作『蜜柑』、中島敦原作『山月記』などをご紹介しました。

今回は、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』です。

もちろん、kindleunlimitedでは読み放題リストに含まれています。

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せっかく慈悲の精神からチャンスを貰ったのに……

ある日、お釈迦さまは極楽の蓮池のほとりを散歩していました。

蓮の華の咲く池を見ると、はるか下には地獄があり、カンダタという男が、血の池でもがいていました。。

カンダタは生前、サツ人やホウ火など、悪いことをたくさんしてきた大ドロ棒でした。

しかし、そんな彼が強奪した物を持って逃げている途中の道で、足元に蜘蛛を見つけましたが、「小さいながら命あるものに違いない」と、踏まずに避けて行きました。

それを知ったお釈迦様は、こんな悪党でも慈悲の心はあるのかと思い、池からカンダタに向けて蜘蛛の糸を垂らしました。

カンダタはその糸を掴んで、極楽へのぼろうとしました。

すると、他の地獄の者たちも、後に続こうと蜘蛛の糸にしがみつきました。

これでは重みに耐えきれず、蜘蛛の糸が切れてしまうと焦ったカンダタは、「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸はおれのものだぞ。お前ら、一体誰にきいて上ってきた、おりろおりろ、これはオレのもんだ」

すると、蜘蛛の糸はぷつんと切れて、せっかく上りかけたカンダタは再び地獄へ落ちてしまいました。

その様子を見たお釈迦様は、悲しそうな顔をしました。

自分ばかり地獄からぬけ出そうとする、カンダタの無慈悲な心が、そうしてその心相当な罰をうけて、元の地獄へ落ちてしまったのが、御釈迦様の御目から見ると、浅間しく思召されたのでございましょう。

極楽の蓮は、そんなことに頓着せず、ゆらゆらうてなを動かして、そのまん中にある金色のずいからは、何とも云えない好よい匂が、絶間たえまなくあたりへあふれています、と本作は結んでいます。

お済度の話か!?

本作は、お釈迦様が登場するので、仏教の話である、ということは誰でも感じるのですが、では仏教の何を現しているのか、という点では、様々な意見がサイトにはあります。

おそらくは、お済度といって、衆生を生死の苦海から救って、悟りの境地すなわち彼岸に導くことがモチーフになっているのではないかと思います。

現在寺院では、埋葬供養等の相談を受ける時、その相談料を「済度料」といいますよね。

ところが、せっかくお釈迦様がお慈悲で、煩悩を脱して安楽の地に至らせるチャンスを与えたのに、カンダタは、利他の精神をもたなかったので、救われなかったという話です。

慈悲とは、仏教の用語で、すべての生きとし生けるものに対して、苦しみを取り除き、幸せを与えるという心です。利他とは、自分の利益よりも他人の利益を優先するという心です。

カンダタの処遇は、どんな悪人でも慈悲を受けることはある、一方で、誰でも利他の精神を失ってはならない、という仏教の精神を示したのだと思います。

たとえば、お釈迦様が「極楽」にいるという設定になっていますが、極楽と言われると、読まれた方は「天国」を想像するのではないでしょうか。

日本に普及した大乗仏教の世界によれば、それは仏国土という世界であると思われます。

仏国土というのは、悟りを開いた如来が国主として、衆生を涅槃できる(悟りに達する)よう教化する天上の国のことです。

私達がよく言う、天国か地獄か、というのは、衆生が六通りの生まれ変わりを繰り返す六道輪廻でいうところの「天」と「地獄」のことで、その「天」と、仏国土の「浄土」とは意味が異なります。

お釈迦様(大乗仏教的に言うなら釈迦如来)は、カンダタをそこに引き上げて教化しようと思ったわけです。

次に、そもそもお釈迦様は神様ではなく解脱した「実在の人間」ですが、大乗仏教のいう仏国土にいたとしても、糸を垂らして人を救ったなどと書かれた経典はひとつもありません。

それどころか、たとえば西方浄土にいるとされる阿弥陀如来は、念仏によって悪人こそ救うので、糸をプツーんと切るようなことはしないと思います。

ま、そのへんを厳密にすると、物語としてわかりにくくなってしまうので、細かいことは抜きにして、「極楽」という言葉を一般の人のイメージに合わせて曖昧に使い、お釈迦様を使って仏教の教えをわかりやすく伝える読み物に仕上げたのだろうと思います。

さて、日常生活で、慈悲と利他の精神は心がけておられますか。

以上、漫画で読む文学『蜘蛛の糸』(イラスト/だらく)は大泥棒のカンダタがお釈迦様の慈悲に応えられる利他の精神を持たなかった話、でした。


漫画で読む文学『蜘蛛の糸』 – 芥川龍之介, だらく

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