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王道ブルース(渕正信著、徳間書店)は、全日本プロレス一筋45年のレスラー人生を貫く渕正信さんがこれまでを振り返っています。

王道ブルース(渕正信著、徳間書店)は、全日本プロレス一筋45年のレスラー人生を貫く渕正信さんがこれまでを振り返っています。

王道ブルース(渕正信著、徳間書店)は、全日本プロレス一筋45年のレスラー人生を貫く渕正信さんがこれまでを振り返っています。ジャイアント馬場さんやジャンボ鶴田さんとの邂逅、アントニオ猪木さんの馬場宅極秘訪問などエピソード満載です。

『王道ブルース』は、渕正信さんが徳間書店から上梓した書籍です。

以下、著者を含めてプロレスラーは敬称略とします。

渕正信といえば1974年、「ジャイアント馬場に憧れて」八幡大学を中退して、全日本プロレスの第1号新弟子になりました。

途中、実家に帰ったので再入門時は大仁田厚に第1号を譲りましたが、薗田一治(ハル薗田)とともに全日若手三羽烏といわれ、アマレスの下地があったことと、選手層が薄かったことなどから、入門わずか12日で大仁田厚戦でデビュー。

以来、創成期から全日本プロレスに所属してその歴史を見続けてきました。

1980年代後半からは、世界ジュニアヘビー級選手権を5度にわたって戴冠。

1990年代中盤までマッチメーカーとして、全日本プロレス年間7回武道館興行開催満員御礼に貢献しました。

2000年の選手大量離脱時には、いったんは引退しようと思ったものの、川田利明が残ることで自分も現役続行を決意。

新日本プロレスで「ベルリンの壁崩壊」を宣言し、全日本プロレスをギリギリのところで持ちこたえさせました。

2004年5月には、天龍源一郎と組んでアジアタッグ王座を獲得し3度防衛。

2007年には、西村修をパートナーに迎え、待望の世界最強タッグ決定リーグ戦に初出場。

2023年現在も現役で、インサイドワークを活かした老獪なファイトで対戦相手を翻弄しています。

そんな渕正信の「全日本愛レスラー人生」を語ったのが本書です。

今までに報じられたこともなかったエピソードもたくさん収載されています。

ま、それらを全部紹介してしまうと、いわゆるネタバレになってしまいますが(といっても、それが面白ければプヲタは自分の目で確かめたくなるはずですが……)いくつかをかいつまんでご紹介しましょう。

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天龍源一郎が輪島大士を光らせたのではなく真相はその逆

本書の前半は、『抱腹絶倒!!プロレス取調室~昭和レスラー夢のオールスター編』(玉袋筋太郎・プロレス伝説継承委員会、毎日新聞出版)で話している内容が書かれています。

同書は、玉袋筋太郎が聞き手になった各レスラーのインタビュー形式の書籍です。

たとえば、プロローグにおいて、木村政彦の門下生・岩釣兼生がプロレスに復讐するため、ジャイアント馬場の全日本プロレスに入団が内定するものの、岩釣はメインイベントに出させろと要求して話がまとまらず、契約に至らなかったくだりが出てきます。

そして、岩釣兼生は、当時の若手レスラーであった渕正信と引き分けたことを誇っています。

全日本プロレスは口の重い人が多く、いちいちそれに反論はしなかったのですが、本書ではとうとう当人の渕正信が証言しました。

やりとりを全部引用すると長くなるので、要点を書きます。

少なくとも、アイアン・シークに極められたことは伏せられていたわけですね。

アイアン・シークのダメ押しは必要なかったのではないか、と訝る渕正信に、ジャンボ鶴田は「それは違うんだ」と諌め、大熊元司は「プロとヤッて負けなかったと言われないように、完全に決着をつけておかなければならないんだ」と教えてくれます。

その後、渕正信は「あんなの馬場さんがやればよかったですよね」と、ジャイアント馬場が直接手をくださないことを批判したかのようにもとれる言い方をしたら、渕正信は翌日ジャイアント馬場とスパーリングさせられ、全く攻めることができず鼻の骨を折られて秒殺、という後日談も披露。

玉袋筋太郎さんは、「キラー馬場」と興奮していました。

そりゃ、85キロの新人相手なら、フレッドアトキンス仕込みの135キロが秒殺するのは日を見るより明らかでしょう。

プロレスラーは、もし試合で不穏なことをやられたらこう対処せよ、ということを、マシオ駒マティ鈴木から教わったそうです。


カール・ゴッチとの出会いも面白かったですね。

フロリダに来た時、“オデッサの惨劇”のデューク・ケオムカの紹介で、カール・ゴッチと出会います。


朝早くから電話をよこし、試合前なのにワインを飲ませる面白困った様子が描かれています。

それを知ったジャイアント馬場は、ビル・ロビンソンとタッグを組ませて世界最強タッグ決定リーグ戦に参加させることを画策。

しかし、引き抜き防止協定を作ったばかりなので、新日本から慌ててストップがかかったと書かれています。

輪島大士は、いつも後援者にごちそうになる時、連れて行ってくれた、と書かれています。

渕正信が世界ジュニアヘビー級チャンピオンになった時、輪島大士は一席設けてくれ、ジャンボ鶴田も呼ばれたといいます。

まだ借金も残っていただろうに……と恐縮しながらも、ごちそうになった渕正信。

プロレスと相撲の違いには、ずいぶん悩んでいたそうです。

プロレスのリング上で闘う上での「壁」は、大相撲時代のクセにあった。
「ヒザをつくのが難しいんだよ。試合中にヒザをつけたら少しは休めるんだけど、相撲をやってたクセで『ヒザをついたら負け』っていうのがあるから。それに、相撲にない動きの、後ろ受け身がどうしてもできないんだよ。だから、源ちゃんはすごいよ。あんなにパッパと受け身ができて」
輪島さんはその前の試合で、天龍さんに前歯を折られていた。歯はそのままで治療前だったが、愚痴などは一切言わなかった。天龍さんの凄さを輪島さんが語るたびに私は、
「天龍さんだって、相撲からプロレスに転向した時は何年も苦労していましたよ」
とデビュー当初に苦労していた天龍さんの話を聞かせたものだ。

渕正信は、輪島大士があれだけ耐えたから天龍源一郎が光った、と述べています。

天龍源一郎が輪島大士を光らせたのではなく、真相はその逆というわけです。

亡くなった人のことは悪く言わない、という前提がありながらも、かすかにそれを示唆したのは三沢光晴に対して。

役員会で対立し、「大義は自分にある」としたことと、ジャンボ鶴田の引退式を粗雑に行ったことです。

これは事実だから、いいと思いますよ。

渕正信は述べます。

ファンの皆様には鶴田さんが生きているうちに、「ジャンボ鶴田」の真の実力にもっと目を向けてもらい、高く評価をしてほしかったし、評価されてしかるべきレスラーだった。
それが、鶴田さんと同時代にプロレスラーとして生きて、あの人の強さ、凄さを間近で体感した者としての思いである。

まあだいたい、「対立」の内容もわかりますしね。

三沢光晴が、自分が好き勝手ヤる社長に、というのに対して、渕正信は馬場元子夫人の側に回ったということでしょう。

結局、ノアは社長が田上明になり、現在では田上明だけでなく百田光雄までが、三沢光晴の社長失格ぶりを暴露していますたから、渕正信が正しかったわけですし、中身を具体的に言ってもいいと思うんですが、それは渕正信の思いやりなんでょう。

それと、ちょっとほろっと来た話は、ジャイアント馬場が亡くなった時、アントニオ猪木は決して「お線香あげてきた」とは言わなかったですよね。

でも、実は行っていたことを渕正信は告白しています。

坂口征二さんや、アメリカからはザ・デストロイヤーが駆けつけた。
猪木さんはマスコミがいない時に訪れた。元子さんと何か話していたようだった。

ジャイアント馬場、アントニオ猪木、大木金太郎が力道山に道場マッチをさせられ、ジャイアント馬場が真っ先に脱落したという話を、プヲタは喜んで今も話題にしますが、渕正信は逆に、ジャイアント馬場のボディシザースは強烈で、アントニオ猪木も大木金太郎も、道場でギブアップさせたという話も述べています。

ちなみに、アントニオ猪木自身は道場話を含めて、少なくともジャイアント馬場が亡くなってから誹謗は一切していません。

その真意はわかりませんが、バンプも知らないトーシロに、道場の話なんかできるか、というプロレスラーとしての矜持と、ジャイアント馬場への敬意だと思います。

プヲタも、無責任な妄想に酔いしれてないで、プロレスファンならアントニオ猪木を見習って敬意を抱こうよ。

オーダーするときに添える「すみません」に人柄が

渕正信といえば、『渕正信の幸せ昭和食堂』についても触れなければなりませんね。

バイタルTV枠にてBS-TBSで2018年に放送されたグルメ番組ですが、タレントのようにテレビ番組にレギュラー出演するプロレスラーは数多けれど、食リポ番組の単独MCというのは、かつて聞いたことありません。

どうしてでしょうね。

プロレスラーは、番組を仕切るキャラクターにふさわしくなかったのか。

食リポをさせたら、ガツガツ夢中で食べてしまいそうだからか。

最近は、興行数も減ってレスラーの報酬も下がっているため、所属レスラーでも他団体に“出稼ぎ”に行くのが当たり前になっていますが、渕正信は全日本プロレス関係の興行にしか出ません。

まさに、全日本プロレス一筋です。

そんな義理堅い渕正信だからこそ、信用があって進行をつとめる冠番組が、『渕正信の幸せ昭和食堂』でした。

番組冒頭の説明です。

学生時代を過ごした青春食堂や老舗洋食店、なつかしの味を守り続ける中華食堂…そんな「昭和食堂」と同時代を歩んできた、全日本プロレス一筋45年の現役レスラー渕正信(64)が、地元で愛され続ける「老舗の食堂」の秘密に迫る15分番組

定食、中華料理、鰻、洋食など、まんべんなく回りました。

とにかく、渕正信、腰が低いのです。

「お茶を……ください。すみません」

「この次はビールをいただけますか。……すみません」

ビールを飲むのもカメラを意識しながら、でもかすかに音を立てながら、ぐいっと一気に飲むレスラーらしさもちょっと見せます。

離合集散、契約破りの団体移籍など当たり前のプロレス界の中で、45年間いっさい他団体には脇目も振らなかった渕正信の人柄がよく出ているあたたかい番組でした。

食べるだけ、飲むだけの番組でも、人柄ってわかりますね。

今もパラビなどで視聴が可能です。

以上、王道ブルース(渕正信著、徳間書店)は、全日本プロレス一筋45年のレスラー人生を貫く渕正信さんがこれまでを振り返っています。でした。


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