町中華とはなんだ(立東舎)は、どことなく懐かしい、大資本のチェーン店ではなく個人経営の大衆的中華料理屋さんについて論考しています。著者は、町中華探検隊、北尾トロ、下関マグロ、竜超。3人の町中華に関するエッセイを編纂しています。
『町中華とはなんだ』は、立東舎から上梓されています。
中は、町中華に関するエッセイが27本書かれています。
著者は、北尾トロ(1958年生まれ)、下関マグロ(1958年生まれ)、竜超(1964年生まれ)。3人のユニット名は町中華探検隊。
どことなく懐かしい、大資本のチェーン店ではなく個人経営の中華料理屋さんについてあれこれ書いています。
ま、身も蓋もなく言うと、ただ漫然とぶらぶら食べ歩きするだけの食リポです。
それでいて、喰いタンのような大食漢ではないらしいんですね。
メニュー全部ひととおり食べた、というのだったら面白かったのに。
しかも、お店の写真も地図もメニューもなし(笑)
読んでいて、退屈するかもしれません。
一応、章立ては工夫しているようですけど。
町中華が、昭和の佇まいだからということで、タイトルや章立てまで昭和です。
そもそもタイトルが、『町中華とはなんだ』。
これはもう、『青春とはなんだ』のもじりです。
各章もそう。
われら町中華探検隊⇒われら青春
飛び出せ!町中華探検隊⇒飛び出せ!青春
これが町中華だ⇒これが青春だ
炎の町中華⇒炎の青春
ただ、注文をつけると、青春学園ドラマシリーズのもじりというのはわかるのですが、『炎の青春』は別の曜日に放送されていたもので、マニアの間では、シリーズの中に入れるべきかどうかも議論があります。
その一方で、1クールで打ち切られた『進め!青春』の、もじりがないんですよね。
『進め!町中華探検隊』にすればよかったのに。
世代的には、『ゆうひが丘の町中華探検隊』とか『俺たちの町中華探検隊』でもよかったかな。
ま、いいか。
本書は2023年2月17日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
この記事は、Kindle版をもとにご紹介しています。
町中華の定義とこだわりを書き連ねる
本書はまず、町中華の定義についてこだわっています。
というのも、著者の一人である、北尾トロさんが、「町中華」という言葉の生みの親を自認しているのです。
2013年頃使ったそうです。
現代は、大きく分けると『ラーメンを食べさせてくれる店』の潮流は4通りと言われています。
- チェーン店やインスパイア店など、特定のスタイルや味の系列
- ネオクラシック系
- 町中華
ラーメン二郎や横浜家系ラーメンといった、豚骨ベースの新しい潮流。
鶏ガラ・野菜等などから出汁を採る昭和的「昔ながら」の中華そばに、オーナーもしくは店主の「新しい」現代的な創意工夫を加えた「古くて新しいラーメン」です。
昔ながらの佇まいとメニューで、大資本のチェーン店ではなく個人経営。今回のターゲット
で、「ラーメン屋」と書きましたが、ラーメン専門店自体は「1」であり、町中華ではないんですね。
町中華の定義は、こんなところでしょうか。
- メニューの数が多く、和・洋・中と揃っていて、オーソドックスなメニュー
- テーブルやカウンターが赤かったり、鈴木京香がモデルのポスター(時間が経っているという意味)が貼られていたりなどレイアウトにも特徴がある
- 食券なんてしゃれたシステムは使わず、おじさん・おばさんの暗記
- ビールのコップでお冷を持ってくる
- 本格的な作り方は「中国料理店」にまかせて、「中華料理店」として大衆的な味付け
- テレビがついている
- 表のメニューはデジカメ画像のプリントアウトではなく、ホコリをかぶった蝋細工のウインドウ
あとは、跡継ぎに困っている、なんていうのもあるかもしれませんね。
子どもや孫が、あとを継がない。
それどころか、廃業してマンションを建てようとか言い募っている。
「バカやろう、俺の目の黒いうちは、勝手な真似はさせねえ」と、店主は頑張っている。
そういう光景が見えてきます。
まあ、こだわりについて言い出すと、あとは十人十色ですから。
本書はカツ丼の有無にこだわってましたけどね。
そのへんを、なんだかんだと書いているのが本書です。
個別のメニューで言うと、私はタンメンにこだわりたい。
町中華といえば、タンメンでしょう。
町中華に来ると、必ずタンメンを注文しています。
タンメン関連では、『漫画版野武士のグルメ カラー版1st01』(久住昌之/原作、土山しげる/画、幻冬舎)というグルメ漫画もご紹介しましたっけね。
タンメンは、ラ~メンと似て非なるものなんですよ。
そもそも、タンメンというのは和製中華です。
中華料理自体、一般には和製中国料理なんですけどね。
中でも、タンメンやちゃんぽんは、国産なんです。
麺を塩ダレスープに入れてから、野菜をトッピングをするのが塩ラーメンです。
かんたんに述べると、塩味のスープで作ったラーメンのことです。
一方、タンメンは、同じ塩ダレでも、麺に野菜炒めスープをかけたものです。
つまり、厳密に言うと、タンメンはラーメンではないともいえます。
それで、お店によって、微妙に作り方が違うんです。
町中華といえばタンメンでしょ
私の食リポになっちゃいますが、何店かご紹介します。
華栄(大田区東矢口)のタンメンは、みるからに本格派です。
どう本格派かというと、スープがかなり多いですね。
大抵のお店は、普通のラーメンと同じぐらいの量のスープであることがほとんどですが、本来の作り方を考えると、この方が理にかなっているのです。
なぜなら、タンメンとは具体的には、野菜炒め鶏ガラスープメンなのです。
炒め汁なので油が含まれており、それが膜となってなかなか冷めず、アツアツと時々水を飲みながらいただくものなのです。
みやぎ(大田区仲池上)は、地元を中心に根強い町中華ファンから食レポで高評価を得ている昭和の佇まいを感じる中華料理店です。
豚肉、キャベツ、小松菜、にんじん、もやし、そして上にネギが乗っているのが特長で、ラーメンとの融和も狙ったタンメンです。
萬福飯店御岳山店(大田区北嶺町)は、あっさりとした広東風を中心に、ピリッと辛い点心料理なども庶民価格で満喫できる町中華です。
あくまで「広東風」であり、本場の「広東料理」になっちゃうと、もう町中華ではなく中国料理店になっちゃうんですけどね。
それはともかくとして、萬福飯店御嶽山店のタンメンは、具材がキャベツ、豚肉、もやし、きくらげ、ニラ、青菜、人参など。
中細麺で、「教科書通りの作り方」。模範的なタンメンです。
いずれも値段は書きませんでしたが、最近は値上げラッシュで、この記事も書いたときと読まれるときで、価格が違っているかもしれないので、あえて入れません。
まあ、700円を少し出たぐらいのところで見ておいてください。
ということで、町中華について、徹底論考したい方は、本書をご覧になってはいかがでしょうか。
以上、町中華とはなんだ(立東舎)は、どことなく懐かしい、大資本のチェーン店ではなく個人経営の大衆的中華料理屋さんについて論考、でした。
町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう (角川文庫) – 北尾 トロ, 下関 マグロ, 竜 超, 町中華探検隊
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