発達障害も、不登校も、あきらめない高校探し(みおなおみ、市井文化社)は、広域通信制高校や支援学校高等部の訪問リポートです。高校進学は希望するものの、諸事情から通年通学の高等学校に「普通に通う」ことが難しい生徒に有用な情報です。
『発達障害も、不登校も、あきらめない高校探し』(市井文化社)は、『障害児の親の目で見たホントの話』というサブタイトルの付いた、私の妻の1年ぶりの新著です。
私どもは12年前、火災を経験しました。
そのため長男は、7歳の誕生日を迎えた2ヶ月後、火災で脳を受傷しました。
JCB300(深昏睡)で2週間以上昏睡し、大脳基底核を損傷した遷延性意識障害(いわゆる植物人間)に。
そこから、必死のリハビリと、子どもならではの可塑力で、高次脳機能障害に「回復」したものの、それまで通っていた小学校へは通学できなくなったため、特別支援学校へ転籍しました。
特別支援学校では、義務教育を終えたあとも、同じ敷地内にある特別支援学校の高等部に進む生徒がほとんどですが、息子が転籍した支援学校では、高等部が閉校となってしまいました。
新たに区域となった支援学校高等部は、電車やバスを乗り継いで行かなければならない離れた場所にありました。
もともと、中途障害の長男にとって、支援学校がベストな進路先と言えるのか疑問に思うところもあり、ほかに学びの場はないものか、息子でも入学・卒業できる高等学校はないものかと、あちこちの学校へ足を運びました。
息子は知的な遅れに加え、手足に麻痺が残り、視覚認知にも問題があるため、身体障害者を対象にした支援学校や盲学校も見学しました。
卒業生全員が企業就労を目指す、知的障害者の特別支援学校も対象に入れました。
そうして、様々な学校をまわっているうちに、高次脳機能障害の症状のひとつである疲れやすさ、後遺障害としてのてんかん発作がある息子には、自分のペースで学習を進められる通信制がもっとも向いているのではと思い、自宅から通える場所に教室がある、通信制高校のオープンキャンパス、文化祭なども参加したり見学もしました。
1986年より、学年による教育課程の区分を設けず、決められた単位を修得すれば卒業が認められる高等学校が認められ、定時制・通信制課程において導入されています。
本書は、そうした動機と経過から、定時制高等学校、単位制高等学校、特別支援学校高等部などをリポートしています。
ですから、対象は、まず
高等学校の進学を希望していること
そして、
- 障碍や病気から、通年通学が困難な人
- 不登校経験があり、クラス授業にすぐに溶け込めるか不安な人。もしくしクラス授業を経験せずに卒業したい人
- スポーツや演劇等、すでに自分の社会的役割があり、それらを続けながら学業と両立したい人
などに該当する人のための情報です。
もちろん、そうでない人も、通信制高校や、支援学校高等部の実情を知っていただくことができるのではないかと思います。
以下が、訪問した学校がわかる「目次」です。
【東京都千代田区】N高等学校 御茶ノ水キャンパス
【神奈川県横浜市】飛鳥未来高等学校 横浜キャンパス
【東京都世田谷区】科学技術学園高等学校
【東京都世田谷区】東京都立久我山青光学園 視覚障害教育部門
【東京都板橋区】東京都立志村学園 就業技術科
【東京都大田区】東京都立城南特別支援学校
【東京都渋谷区】東海大学付属望星高等学校
【東京都港区】東京都立港特別支援学校 職能開発科
【東京都杉並区】明聖高等学校 中野キャンパス
【東京都品川区】明蓬館高等学校
【東京都新宿区】八洲学園高等学校 新宿キャンパス
【東京都渋谷区】ルネサンス高等学校 新宿代々木キャンパス
【知っておきたい学費の話】サポート校と通信制高等学校
通り一遍の学校案内とは違う、障害児の親だからこそ、感じることも含めてリポートしています。
本書は、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
きめ細かい指導やカリキュラム向上
詳細は、本書をご覧いただくとして、全体を通して言えるのは、通信制高校にしろ、支援学校高等部にしろ、きめ細かい指導という点では、確実に向上しているということです。
たとえば、通信制高等学校というと、民間の通信教育のように、何年も改訂していない教材をいっぺんに送りつけてほったらかし、なんてイメージされがちですが、もちろん、そんなことはありません。
文科省の一条校(高等学校)として認可を受けている以上、卒業すれば「高等学校卒業」になるのですから、決められた単位、試験などがあります。
また、一口に通信課程と言っても、年間4日の登校で良いほぼ家庭学習の場合もあれば、年間一定数登校してクラス授業で単位を取る場合もあります。
では、どのくらいをクラス授業にするかは生徒の選択です。
たとえば、身体が弱いから、通学は週に2回にとどめて、あとは家庭学習でまかないたい、という事情にも応えてくれるのが、通信課程の良いところです。
もちろん、制服や文化祭、修学旅行などもあります。
ですから、クラスメートもできるし、高校時代の思い出も作れますよ。
「でも、通信課程って、どんなものか不安だな」
「今まで不登校だったから、ちゃんと通えるのか」
「その学校のカラーに自分が合うかどうか」
などと、心配に思われる方も対応されています。
正式な学校ではないのですが、中学のうちからフリースクール、もしくは中等部の名目で、附属機関のようにして、格安の授業料で開校しているところもあります。
ですから、中学に籍を置きながら、塾に通うような感覚で、事実上の「お試し入学」ができるわけです。
オリンピックに出る未成年の選手が、通信制の高等学校出身というのは、最近ではよく聞く話ですね。
普通の高校ですと、授業にくらえて学園の行事がありますから、朝から夕方まで拘束されてしまい、それではなかなか学業とトレーニングの両立が難しくなります。
そこで、通信課程で、自分にとって選択しやすい履修形態で高等学校の単位を取得するというケースが増えているわけです。
進学や就職も指導があり、有名大学の進学実績もあるし、有名大学の付属高等学校の通信課程もあります。
支援学校高等部については、たとえば職業訓練に力を入れた課程や、知的、身体など縦割の支援学校ではなく、目に障害があり、かつ知的な支援も必要な場合でもサポートできる課程などもご紹介しています。
こうした学校には、学ぶ機会から誰一人こぼすものか、という意気込みが感じられます。
自分が支援学校に行くわけでなくても、読んでいて胸がいっぱいになると思いますよ。
今の時点で、全日制普通科の高校に進学する予定でも、本書をご覧になることで、選択肢が広がるかもしれません。
パンフレットや公式サイトだけではわからないことも書きました
本書は、障害や難病、不登校や引きこもりなどで通える高校がない、と悩んでいる人に、私が見てきたことが参考になればとの思いで、一冊にまとめることにしました。
実際に学校まで足を運び、学園の雰囲気、施設、生徒などを直接知ることで、パンフレットや公式サイトだけではわからないことがたくさんある、というのが実感です。
上掲の「目次」にある高等学校のうち、NHK学園高等学校だけは本校へもスクーリング会場へも行けなかったのですが、やはり放送利用を前提とした、日本最初の広域通信制高等学校である同校抜きに通信制高校を語ることはできないので入れました。
機会があれば学園祭なども行ってみたいと思います。
また、通信制高校との違いがわかりにくい、サポート校についてもまとめてあります。
中学までの義務教育とは違い、高校選びは人生の選択ともつながっています。思春期を迎え、心身ともに大人に近づくこの時期をどう過ごすか、迷い悩んでいる人たちの進路選択の一助になれば幸いです。
以上、発達障害も、不登校も、あきらめない高校探し(みおなおみ、市井文化社)は、広域通信制高校や支援学校高等部の訪問リポート、でした。