『知っておきたい日本の神様』(武光誠著、角川学芸出版/角川書店)は、神社の成り立ちや系譜、信仰、ご利益など解説されています。あなたは神様は存在すると思いますか。著者は信仰の有無に関係なく、誰でも存在する普遍的な「神様」を指摘しています。
「八百万の神様」のエピソードは勿論、日本に10万社以上もある神社の系統や、そのルーツ。さらには神道全般について解説した本です。
本書の内容
『知っておきたい日本の神様』(武光誠著、角川学芸出版/角川書店)は、日本の歴史ともいえる神社の歴史や神道について解説。
全国にあるたくさんの神社について、その種類や祀られている神様、時の支配者・権力者とどのように関わってきたのかなど「そもそも」論とともに、そうした参拝の意味も解説しています。
~稲荷、~宮、~大社などの違い・意味・ご利益・歴史などもわかりやすく教えてくれます。
たとえば、神社では、お賽銭を払い、二礼二拍手一拝でお参りをします。
何拍手でもいいという説もありますが、二礼二拍手一拝で「間違い」とはいわれないでしょう。
そもそも私は、つい最近まで、そういうルールも知りませんでした。
何も知らないと、たとえば神社に行っても、どうしていいか振る舞いに迷っちゃう時ってありますよね。
いずれにしても参拝は、心の中の穢れを清める行為といわれています。
ちなみに、海の塩が、すべてのものを清めるとされています。
「清めの塩」というのは、そこからきているんですね。
そういった神事についての解説もされています。
神様とは各自の心の中にある拠り所
では、神道を啓蒙する宗教本かと言うと、そうではありません。
私自身には、神も仏も含め特別な信仰はありません。
ただ、宗教というのは、昔から人々の心の拠り所として長年の風雪に耐えた文化です。
物理的な真偽だけで否定することも、一面的なことだと思っています。
たとえば、神というものが、物理的に存在するかといえば、科学的に「ある」という論文は存在しません。
しかし、人々が信じ続け、それを励みに日々暮らしたり心の安寧を得たりするのは、たとえ科学的には存在を証明できなくても、心のあり方としてそこに大いに意味はあると思うのです。
著者はこう書いています。
「人間は神社に参拝して、願いごとを唱えることによって、その願望を実現するための努力をはじめるのである」
つまり、参拝というのは、神様に何かをしてくれと頼むようでいて、実は自分の心にがんばりを誓っているということです。
著者はこうも書いています。
「神様とは、私たちがもっている能力を最大限に引き出してくれる存在である」
神様は、私たち各々の心の中に存在する観念であり、自身を信じる最大の拠り所ということです。
要するに、特定の信仰がなくても、各自の心の中には、自分を支えてくれる「神様」が宿っているわけです。
宗教に縁のない私も、まったく何の抵抗もなく合理的に理解できる「神様の話」です。
具体的なご利益
本書では、具体的なご利益について紹介されています。
稲荷神社(商売繁盛)
冒頭の穴守稲荷神社もそうですが、我が国には赤い鳥居の稲荷神社が全国に2万社あるといわれています。
この稲荷神社は、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)という、稲に宿る精霊を祀っています。
つまり、もともとは農耕神だったのですが、室町時代になって商業がさかんになると、商売繁盛の神としての性格を持つようになったそうです。
八幡神社(家運隆盛)
八幡様にお参りに……、なんて言いますよね。
私がその昔、七五三の儀式を行ったのは八幡神社でした。
その頃はベビーブームで、一家族だけというわけにはいかず、20人ぐらいの子どもたちが一度にお祓いを受け、順番に名前を呼ばれて返事をしたのを覚えています。
それはともかくとして、八幡信仰は、九州の宇佐八幡から全国各地に広まったと書かれています。
八幡というのは、大漁旗が掲げられた船の景色をあらわす言葉です。
八幡神は源氏に崇敬され、国家鎮護や家運隆盛の神様として崇められるようになったそうです。
天神社(合格祈願)
これは有名ですね。各地の天神社、天満宮は、平安時代の学者・政治家である菅原道真を祀っています。
その才に嫉妬した藤原氏により、菅原道真は九州の大宰府に左遷されて亡くなりますが、怨霊が都で天変地異を起こしたことから、それを鎮めるために京都の北野天満宮が作られたといいます。
その後、地方の嵐や紙屋雷の神を祀っていた神社が、次々と天神社となり、全国的に天神信仰に。さらに江戸時代には、高名な朱子学者が何人も天神信仰をもつようになり、天神が学業成就の神様となったそうです。
「信仰」は宗教者でなくても普遍的な営み
知っておきたい日本の神様
武光誠日本の神社や土着信仰、国家神道についてザクッとまとめた本。良くも悪くもあまり深堀りはない感じ。
それぞれの神社や信仰の起源について簡単に復習出来る点は良いと思う。古代の人が何を恐れ、何に救いを求めたのかを知ることは無駄ではないと感じる。#読了 pic.twitter.com/SX65qfTS8Z
— KJ (@KinjiKamizaki) March 13, 2020
本書は、古事記、日本書紀をはじめ神話の時代から、東照大権現、明治神宮、東郷神社など、神様の体系やいわれが理解できます。
お稲荷さんはなぜキツネなのか、春日大社はなぜシカなのかなど、神社と動物との関係についても触れられています。
神様の存在を説明する箇所は、「信仰」が特別な教義に帰依することではなく、誰もが心の中にもっている普遍的なことであることもわかりました。
以上、『知っておきたい日本の神様』(武光誠著、角川学芸出版/角川書店)は神社の成り立ちや系譜、信仰、ご利益など解説されています、でした。