今からでも大丈夫!知的障がい発達障がいは改善できる(鈴木昭平著、KKロングセラーズ)は、知的障害、発達障害は改善できる、とする書籍です。「希望が持てた」とする一方で、著者の主宰する事業の宣伝につながる体験談にすぎないと懐疑的な向きもあります。
『今からでも大丈夫!知的障がい発達障がいは改善できる』は、鈴木昭平さんがKKロングセラーズから上梓している書籍です。
著者は、エジソン・アインシュタインスクール協会という団体を立ち上げ、障害者療育を行っているといいます。
書籍はタイトル通り、知的障害や発達障害は改善できるというのです。
まず、知的障害は、一般的に治療や薬物治療では完全に改善することはできません。
ただ、「障害」に個人差はあり、早期に発見し、適切なサポートや介入を提供することで、生活の質を向上させたり、社会的なスキルを向上させたり、個人の潜在能力を最大限に引き出すことができます。
知的障害の治療には、個人に応じた個別化された治療が必要です。
治療の焦点は、個人の認知能力やコミュニケーション能力の向上、行動問題の改善、および社会参加の増進です。
特別支援教育プログラムや個人の能力に合わせた職業訓練など、適切な支援を提供することで、個人が自己決定、自立、そして社会参加を最大限にすることができます。
また、近年の研究では、神経可塑性の考え方から、知的障害の個人に対して、特定のタスクに対するトレーニングや練習によって認知機能を改善することができる場合があることが示唆されています。
ただし、これらのアプローチは、個人差があり、長期間かかることがあります。
総合的に言えば、知的障害は完全に改善することはできません。
ただ、早期に診断し、適切な治療や支援を提供することで、生活の質を向上させることができるといわれています。
次に、発達障害は、個人によってその程度や影響が異なるため、改善の度合いにも個人差があります。
専門家の支援や適切な治療、教育、訓練によって改善することが可能とはいわれます。
例えば、自閉症スペクトラム障害(ASD)の場合、早期に診断し、早期介入や行動療法、言語療法、社会的コミュニケーションのトレーニングなどを受けることで、症状を改善することができます。また、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の場合、薬物療法や認知行動療法、社会技能トレーニングなどが有効な治療法として知られています。
ただし、それは発達障害が治癒することを意味しているわけではありません。
脳の障害ですから、治療や支援を受けても、生涯にわたって症状が残ることがあります。
しかし、早期に適切な支援を受けることで、発達障害の影響を最小限に抑えることができる場合があるということです。
ということをお含みおきの上、以下をお読みいただきたい。
障害児教育の真の「闇」か……
上掲のことは、つまり、知的障害も発達障害も、段階と時期によって、生活の質をよりよくする対策は取れるが、障害だから、クリアに改善とは言い難い、障害そのものが治癒するわけではない、ということです。
つまり、なにをもって改善なのか、ということで、本書は物議を醸したわけです。
『知的障がい発達障がいは改善できる』の何が問題なのか。
本書はタイトル通り、ダウン症、自閉などの知的障害を伴った発達障害、ADHDやアスペルガーなどの情緒的な障がいなどは改善できるとし、その具体的な方法が述べられていますが、レビューを見ると、大きく、2つの問題がいわれています。
ひとつは、ネットを検索すると、著者の主宰するエジソン・アインシュタインスクール協会は、多額の会費を取り、サプリメントをすすめると指摘されていることです。
たしかに、本書にも、EPAや玄米を推奨しています。
そして、本書は、権威と信頼のある専門雑誌の論文は登場せず、もっぱら「体験談」で紙数が割かれています。
ひと頃逮捕まで出た、抗がん健康食品のバイブル本の手法すら思い出させてしまいます。
ということは、科学的なのか、エビデンスはあるのか、という立場からすると、否定しなければならない書籍ということになってしまいます。
そしてもうひとつは、実は重度障害者の親は、「改善」という啓蒙自体に批判的です。
このことこそが、障害児教育の闇なんですね。
そもそも今の医学は、それを認めていません。
つまり、少なくとも器質的には障害者が健常者並みに改善(回復)することはあり得ない、としています。
さすれば、改善しなければならないとする事自体、障害者に対するないものねだりの差別だというのである。
ま、重度障害者の親の、軽度障碍者に対する牽制と言うか、嫉妬みたいなもんでしょうね。
しかしですね。エビデンスというのは、「ここまでは客観的にわかっている」ことの裏付けにすぎません。
つまり、これからわかることではないのです。
まあたしかに本書は、徹頭徹尾、医学を否定しているのかもしれません。
本書の前提となる主張は、医師が「障害児が健常児並みに改善することはありえない」と決めつけているから、そんなものを聞いていたら、改善できる子どももできなくなる、親が諦めてはいけないんだ、といっています。
もう1度、『知的障がい発達障がいは改善できる』の内容について整理しましょう。
- 今の医学は、「障害者になった者は健常児並みに改善(回復)できない」という。
- しかし、本書は、そんなことはない、と否定している。
- ただし、その根拠には客観性がない
まあ、良識あるとされる人は、客観性のない主張よりは、「今の医学」を信用するでしょう。
ただ、私は、本書の「諦めてはいけない」という主張には賛同 します。
それは、『植物人間が歩いた!話した!ごはんも食べた!遷延性意識障害からの生還』(みおなおみ著、市井文化社)に書いたように、子ども専門の独立行政法人(国立)や、名門私立大学病院の医師らが、「植物人間(遷延性意識障害)」と断定した我が長男が、回復した経験を持っているからである。
植物人間が歩いた!話した!ごはんも食べた!遷延性意識障害からの生還(みおなおみ著、市井文化社)は、社会復帰リハビリの記録 #植物人間 #遷延性意識障害 #リハビリ #火災 https://t.co/aDxRjRzzpq
— 石川良直 (@I_yoshinao) March 2, 2023
論より証拠というやつです。
私の経験
我が長男は、5年前の火災でJCS300の昏睡が続き、遷延性意識障害(植物症)と診断されました。
大脳基底核を損傷したため、たんに植物人間であるだけでなく、自力呼吸すらままならず、喉に穴を開け、カニューレを差し込んで人工呼吸器を必要とする状態でした。
医師団の主治医は、「人工呼吸器だけははずせるよう頑張りましょう」と、涙が出てくるようなささやかな目標を掲げました。
もう一人の医師には、「本当は入院ではなく、家に帰ってご両親と過ごした方がいい」と、病院の措置は無意味であるととまで言われました。
つまり、「今の医学」では、「植物人間として余生が決定的です」と診断されたわけです。
ところが、小児治療では日本を代表する医師団の案に相違して、4ヶ月目から徐々に手足が動くようになり、回復の可能性が著しく低くなるといわれている6ヶ月を過ぎてから発語があり、1年4ヶ月目に、幽霊ではなく立って自分の足で歩いて登校。
そして、ほとんど著しい回復は見込めないとされている2年を過ぎてから、掛け算の九九をマスターしました(受傷前はまだ掛け算を知らない)。
つまり、我が長男の回復は、子ども専門の独立行政法人(国立)や、名門私立大学病院の医師らが、誰ひとりとして見込めなかったことであるとともに、「今の医学」の定説をことごとく覆しています。
ちなみに、私の妻も心肺停止でしたが、脳には何の異常もなく受傷28日後に社会復帰しました。
『臨死な人々・死のすぐそばで生きる人たち』(みおなおみ、市井文化社)は、火災による一酸化炭素中毒で、心肺停止から生還した体験談 。搬送された大学病院の第三次救命救急病棟に入院した32日間は、“今日元気だった人が明日にはいない”日々でした。#心肺停止 https://t.co/7R34YNTb1J
— 赤べコム (@akabecom) March 12, 2023
それはともかくとして、では我が長男は、黙っていても自然に回復したのかというと、口幅ったいが、そう簡単なものではありませんでした。
そりゃそうだ。植物人間だもの。
まあ、ネットに出ている、脳障害者の回復情報はほとんど目を通し、その施術者と連絡を取り、その多くを実践しています。
たとえば、遷延性意識障害時代には紙屋克子さん、高次脳機能障害の専門家である橋本圭司医師など、その分野の第一人者とすぐに連絡を取り、できることはすべて行いました。
そうした実績のある医師の施術には、必ずしもエビデンスがあるとはいえない民間療法的なものがたくさんあります。
脳は、わかっていないものであり、エビデンスという「わかっていること」だけ行っても改善(回復)は望めないから、試行錯誤と経験則で、未知の施術を行うのです。
もし、私が「今の医学」と「エビデンス」を金科玉条としていたら、我が長男は今頃、ベッドに寝たきりか、車椅子にくくりつけた生活だったでしょう。
私はそれを経験しているから、医師の言うことなんか聞かないで諦めるな、という冒頭のエジソン・アインシュタインスクール協会の言い分を全否定はできないのです。
できことはなんでもするという姿勢が重要
まあ、直感的であるが、EPAや玄米で、知的障害・発達障害が治るとは考えにくいです。
ただし、できことはなんでもやる、という姿勢が重要なのであり、そこまで徹底することで、結果的に改善(回復)に繋がる可能性はあります。
何もしなければ何も変わりませんが、何かすれば変わる可能性はあります。
同協会に入会しなくていいから、とりあえず本書に書かれていることを実践してみては如何でしょうか。
たとえば、入浴中は血流が良くなるので勉強にいいそうだから、風呂の壁には、覚えたい事柄のシートでも貼ったらどうでしょう。
本書は、侵襲性のあることは書かれていません。
家庭で実践できることばかりです。
本書を、エビデンスがないと誰でもわかる批判だけしても、何も変わりませんよ。
改善(回復)するかしないかは結果です。
論より証拠で、まずはやってみることです。
人生、明暗が分かれる契機は、やるかやらないかだけです。
諦めてはいけません。
以上、今からでも大丈夫!知的障がい発達障がいは改善できる(鈴木昭平著、KKロングセラーズ)は、知的障害、発達障害は改善できる、でした。