空腹はなぜいいか?(石原結實著、PHP文庫)は、「食べないこと」と「体温を上げること」によって健康を維持できると唱える書籍です。すべての病気、体の不調は血液の汚れにあるとし、その原因と対策についても詳しく解説されています。
著者の石原結實さんは、Dr.石原としてマスコミでもおなじみ。
初診受付は3年先まで埋まっているという、天文学的なスケジュールで診察されている医師です。
それほどの人気の理由が、本書に網羅されています。
「食べないこと」と「体温を上げること」
空腹はなぜいいか?(石原結實著、PHP文庫)は、結論から書くと、「食べないこと」と「体温を上げること」で、生体防御の機能を維持・回復させましょう、という話です。
人間の歴史は、300万年のうち299万9950年は飢餓に耐えてきました。
逆に、満腹に耐え得る防御機能はインスリンしかありません。
そのような人類の歴史と生体防御反応から、「食べないこと」、具体的には1食抜いて総カロリーを減らすことを唱えています。
そして、もうひとつは体温を上げること。
こう書くと、疑問を呈される方もおられるでしょう。
「食べないこと」と「体温を上げること」は矛盾しているのではないかと。
つまり、「食べないこと」によって、体温は下がってしまうと一般には言われているからです。
しかし、石原結實さんは、本書でそれを否定。
後に書きますが、石原結實さんの断食保養所で断食した人のデータを見ると、1週間の平均で0.3~0.5度上がっているといいます。
食べないことで、体は老廃物を使って細胞のリニューアルを行ったほうが、食べた栄養によるものよりも発熱効果が高くなるそうです。
体温が上がるということは、免疫力が上がるということ。
これは、こんにち西洋医学でも常識となっています。
発熱は、私が子供の頃はすぐに注射で解熱していましたが、今はある程度は様子を見るようになっています。
それはともかくとして、もし、私たちが腹いっぱい食べてしまうと、血液中の栄養が多くなってしまいます。
すると、ばい菌や悪い細胞を食べてしまう白血球もお腹いっぱいになってしまい、貪食な活動を行わなくなります。
つまり、お腹いっぱい食べると、免疫力が落ちてしまうわけです。
石原結實さんは、免疫力を上げるために、運動、サウナ、風呂、温泉など、を利用した1日1汗を推奨しています。
血液の汚れが万病のもと
本書によると、血液の汚れが病気を招くとしています。
がんや大腸性疾患も例外ではないといいます。
ところが、西洋医学は、原因ではなく症状を取り除くことに終始しているといいます。
たとえば、炎症性疾患は、ばい菌が原因だから抗生物質を使う。
石原結實さんによると、ばい菌は汚い所にしか存在しないのだから、炎症の本当の原因はばい菌ではなく、ばい菌が存在するような「血液の汚れ」なのだといいます。
では、血液が汚れる最大の原因はと言うと、それは食べ過ぎ、飲み過ぎにあるといいます。
特に動物性タンパク質の摂り過ぎが、血液を汚しているそうです。
適度な運動も不足しているといいます。
運動によって体温が上昇した結果、体内の老廃物や血液中のだぶついている栄養素が燃焼され、呼気や汗や尿からたくさん排出されるのです。
第三の原因には、ストレスも挙げています。
第四の原因は「冷え」です。
冷えると結構が悪くなり、体内の細胞の代謝が低下し、老廃物、余剰物の燃焼が妨げられるからです。
環境汚染物質や食品添加物、化学調味料、薬品なども挙げています。
それらの原因を解決するキーワードが、「食べないこと」と「体温を上げること」というわけです。
「食べない健康法」も様々
いずれにしても、結論としては、石原結實さんの説いていることは「食べない健康法」ということです、
これまで、「食べない健康法」については、何冊もの書籍をご紹介しましたが、過剰な栄養を摂取しないことで免疫力を高めるという点では一致するも、その方法論では微妙に違いがありますね。
テーマ | 食事 | |
青木厚 | 16時間断食 | 断食時間以外は何をどれだけ食べてもいい |
白澤卓二 | ケトン体健康法 | 完全糖質制限を2週間続けてケトン体体質にする |
宗田哲男 | ケトン体健康法 | 段階的糖質制限を行いケトン体体質にする |
石原結實 | 空腹健康法 | 60%を穀物から、25~30%を野菜や果物から、10%を動物性タンパク質から摂取。1食減らしたり食べたくない時は無理に食べないなど総カロリーを減らす。 |
石原結實さんの場合、1日3食である必要はない、カロリーを減らせといったことを提唱していますが、では、食事の中で具体的にどのくらい減らしたらいいかというカロリー数などで明らかにしてはいません。
ただ、メニューの例は本書で示しています。
そして、静岡伊豆高原のニンジン・リンゴジュース断食による断食道場を実践していることを紹介しています。
基本的には、1週間と10日間コースがあります。
1週間コースは、ジュース断食が5日間と補食期間が2日間。
10日間コースは、ジュース断食が7日間と補食期間が3日間だそうです。
ジュース断食というのは、1日3回のニンジン・リンゴジュースのみで1週間や10日を過ごす断食です。
捕食期間というのは、断食で休んだ胃腸をまたもとに戻すための助走期間として、味噌汁、大根おろし、おかゆなどを少しずつ食べます。
ネットには、参加した方々が体験談を書かれていますが、詳しくは本書をご覧ください。
「汚れた血」は弱っている患者に回すのか
本書には1箇所、ツッコミどころもあります。
上掲のように、「汚れた血」が万病のもとであるとし、ガンの吐血も悪い血を出す延命反応だと書かれています。
ここまではいいでしょう。
そして次に、女性は男性よりも約7年平均寿命が長いことを挙げています。
その7年の差は「生理」にあるとし、女性の生理が35~40年間、年13回、1回6日として計算すると2730日。
それが7.48年であるから、「自然の瀉血(しゃけつ)」である生理の日数だけ女性が長生きしていると指摘します。
ま、これも興味深い指摘です。
問題は、この後です。
「よって、私は生理のない男性には年に二、三回の献血をお勧めしています。」
えーーーっ、ちょ、ちょとまって、くーださーい(汗)
健康のじゃまになる「汚れた血」を、捨てるのではなくて、ケガや病気で血液を求めている患者さんに回すのですかーっ?
それはどうなんでしょうか。
そもそも、輸血を必要としている患者さんは全身状態だって弱っているでしょうに、そんな「汚れた血」を入れたら状態は悪くなりませんか。
ここだけは、倫理的にも大ーいに疑問が残ります。
ブラックユーモアをネタとする漫才や漫談ならともかく、石原結實先生は医師なんだから(笑)
まあ、石原結實さんもジョークで書かれているのかもしれませんし、ここの受け止め方は、読まれた方のお考えにおまかせしましょうか。
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以上、空腹はなぜいいか?(石原結實著、PHP文庫)は、「食べないこと」と「体温を上げること」によって健康を維持できると唱える、でした。