罪の余白(つみのよはく)は、娘をシに追いやったクラスメイトと復讐の炎を燃やす父親との攻防が描かれる芦沢央によるサスペンス小説です。第3回野性時代フロンティア文学賞受賞作。加筆・修正された上で単行本化され、2012年に角川書店から発売されました。
『罪の余白』(角川書店)は、芦沢央さんの小説です。
娘をシに追いやったクラスメイトに復讐の炎を燃やす父親と、そんな主人公を狡猾に翻弄していく邪悪な女子高生の攻防を描くサスペンス・ドラマです。
11年前に書籍化されましたが、2015年には映画にもなっています。
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— ジョニー (@jhonny1968) February 11, 2021
ただ、サスペンスとはいっても、大胆な結末にはなっていません。
謎を解くような心理「戦」でもなく、要するに鬼チク女子高生と、娘をシぬまで追い込まれて復讐の気持ちを募らせる父親の心理描写がなされています。
芦沢央さんについては、『目撃者はいなかった』という作品をご紹介したことがあります。
2023年11月22日現在、kindleunlimitedの読み放題リストに含まれていますが、いつ有料化されるかはわかりません。
安藤は咲の正体に気づき心理的な攻防
芦沢央
『罪の余白』
救いの無い終始。仕方ない、しょうがないじゃ現実には済まない。スクールカーストの中でもがく女子高生の悲しいストーリー。
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女子高生・加奈(吉田美佳子)が、校舎の4階から転落しながら、「辞世の句」を述べるショッキングなシーンより物語は始まります。
動物行動心理学が専門の大学講師である父親の安藤聡(内野聖陽)は、講義中のため、携帯を止めていて連絡を聞けず、一人娘のシに目にあえませんでした。
安藤家は父子家庭。
妻はナくなっています。
娘の弁当も安藤が作っていました。
転落した下は芝生だったため即シではなく、しかし木の枝に突き刺さったため内臓が破られ、苦しみながらナくなった娘のもとに駆けつけられなかった自分を責める聡。
一体、娘の身に何が起きたのか、自分はなぜ娘の思いに気づくことができなかったのか。
そんなことを考える日々を送っていた安藤の元に現れたのは、娘のクラスメイトの少女でした。
加奈の日記を見つけて、クラスメイトの木場咲(吉本実憂)と新海真帆(宇野愛海)によるいじめがあったことを知ります。
咲は容姿端麗で人気者でしたが、自分の孤独を紛らわすために周囲の人間を操る悪魔のような少女。
加奈を自殺に追い込んだ張本人でした。
咲は安藤に近づいて、証拠隠滅を図ろうとしますが、安藤は咲の正体に気づき、心理的な攻防を展開していきます。
こういう場合、娘を失い、罪を認めさせようとする側のほうが疲弊しがちです。
安藤は大学も休んでしまいますが、彼より年下の助教授である心理学者の小沢早苗(谷村美月)が、サポートします。
早苗は、よその大学から来た安藤と違い、生え抜きで出世も早かったのですが、自分がアスペルガー症候群ではないかと疑うほど、感情表現や場の雰囲気を読むことが苦手、というより全くできず、聡に相談したり、自分の感情を伝えたりすることで聡との信頼関係を深めていました。
早苗は、加奈の死の真相を探る過程で、咲や真帆の心理状態を分析したり、聡の行動に忠告したりしています。
早苗のような存在を登場させることは、作者が、良い方向に問題解決したいという意欲の現れだと思いました。
すでに映画化もされていて、ストーリーは公然としていますが、青空文庫に入っているわけではないので、一応「ネタバレ」となる結末の記述は行いません。
でも、サイトを検索すれば、あっちこっちに結末は出てますけどね。
「余白」の意味
罪の余白 芦沢央
色々考えてしまった。女子同士の関係でここまで酷くはないけどこんな空気はよく分かる。主犯は最後まで反省なし、ここまでいくと清々しい。復讐されていい気味だと思う。最後に父に寄り添う人がいてよかった #読書 #読了 #読書好きな人と繋がりたい pic.twitter.com/i6FaQk7rZT
— 莉月 読書&日常 (@misayochan8) May 3, 2022
タイトルの「余白」って、どういう意味なのかな、と考えてみました。
つまり、罪を認めない咲、罪を認めさせることで事件にけじめを付けたい安藤。
立場は対照的ですが、どちらも自分の立場を貫く心理的攻防の過程で、どんどん常軌を失っていきます。
つまり、2人の溝が「余白」ということなのかもしれません。
もちろん、善悪ということで言えば、いじめで「シ」まで追い込んだ咲を許せるはずはないし、被害者の父親と同列に並べるものでもありません。
ただまあ単純にね、こういうストーリーだと、「いじめたやつはけしからん。銃サツしろ」とか単純に怒る人もいるんですけどね。
そういう人、はっきり言って困っちゃうんです。
たしかに悪いですよ。
悪いけどさ、これはあくまで文芸作品なんでね。
不倫だろうがサツ人だろうが、いじめだろうが、法律や倫理を基準に、いいか悪いかを議論するものではないんです。
ていうか、そういう議論なら結論ははっきりしているし。
そうではなくて、往々にして人間は善悪や正誤がどうであれ、自分の立場を守ろう、自己正当化しよう、わかっちゃいめけどやめられないなどと、良くな方向にもがくことがあります。
物語を通して、そうせずにはおれない人間の「心の闇」とはなんだろう、ということを考えるためのものなんですよ。
そういう意味で、父子家庭に育つものの、父親に両親の揃った家庭以上の愛情を注がれて、いつも良い子でいようとする娘が「奴隷」になり、孤独から人格の何かが壊れて神のように崇められることを求めた「支配者」の関係が、切なさと悲しさと哀れみの表現として心に突き刺さるストーリーになっています。
無料リストに入っている間でも、ご一読をお勧めします。
以上、罪の余白(つみのよはく)は、娘をシに追いやったクラスメイトと復讐の炎を燃やす父親との攻防が描かれる芦沢央によるサスペンス小説、でした。
罪の余白 (角川文庫) – 芦沢 央
罪の余白 – 内野 聖陽, 吉本 実憂, 谷村 美月, 葵 わかな, 宇野 愛海, 吉田 美佳子, 堀部 圭亮, 利重 剛, 加藤 雅也, 大塚 祐吉, 大塚 祐吉