職業治験 治験で1000万円稼いだ男の病的な日々(八雲星次著、幻冬舎) Kindle版
職業治験 治験で1000万円稼いだ男の病的な日々(八雲星次著、幻冬舎)は、「治験ボランティア」を繰り返している体験記です。治験とはヒトを対象とした新薬の試験であり、治験は「職業」ではないのですが、それを収入にするほど繰り返したという話です。
『職業治験 治験で1000万円稼いだ男の病的な日々』は、八雲星次さんが幻冬舎から、2013年12月13日に初版を上梓しました。
もちろん、10年経った現在も「治験」はあります。
では、治験ボランティアとはなにか。
そもそも治験とはなにか。
治験とは、新しい医薬品、治療法、医療機器、あるいは予防法が安全かつ有効であるかどうかを評価するための臨床試験のことです。
新薬は長い期間をかけて開発されます。
培養細胞や動物実験など、さまざまなテストを繰り返し、有効性の確認と安全性の評価を行うのです。
その上で、今度はヒトを対象に試験します。
それを治験といいます。
治験は、薬剤、医療機器、予防法、治療法などの新しい製品が市場に出る前に、それらが安全で効果的であることを確認するために実施されます。治験は、基本的には研究の一形態であり、倫理的な問題や法的規制を遵守する必要があります。
新薬の治験は通常、まず治験薬の安全性や体の中でのふるまいを調べ(第I相試験)、次に治療効果や副作用の出方などから最適と思われる使用方法や使用量を決めて(第II相試験)、最後に実際の医療に近い形で用いて有効性を調べる(第III相試験)といった順序で行われます。
治験は、通常、4つの段階から成ります。
第1相試験:健康なボランティアに新薬剤を投与して安全性を確認する試験です。
第2相試験:病気を持つ患者に新薬剤を投与して、治療効果と副作用を確認する試験です。
第3相試験:大規模な臨床試験で、病気を持つ患者に新薬剤を投与して、治療効果と副作用を確認する試験です。
第4相試験:市場に出てからの長期間にわたる投与による、副作用の発現率などを調査する試験です。
治験ボランティアが対象になるのは、第1相~第3相ですが、とくに第1相ということになります。
治験は、厳密なプロトコルに基づいて実施され、人体に対する安全性が最優先されます。
治験に参加する患者には、治験の目的、リスク、利益についての説明が行われ、自由意志による参加が求められます。
治験の結果は、当然医療分野に大きな影響を与えることがあります。
治験ボランティアは要するに人体実験
治験ボランティアとは、まあ、要するに人体実験です。
第1相の「健康な成人が実験台になる」ことをさします。
ボランティアがどうして「職業」になるのか?
ボランティアの本来の意味は、「志願者」「有志者」などであり、誰もが自分でできることを自分の意志で周囲と 協力しながら行う活動のことをいいます。
そこに、社会通念上、妥当な謝礼は認められます。
つまり、ボランティアというのは、一円も金を取らない行為、ということではありません。
ただし、治験を「給料」「日給」なんていう名目では出せませんから、「治験ボランティアの謝礼」という名目になるのでしょう。
時間と肉体を拘束し、侵襲性もあることから、その「負担」を補う意味で、「負担軽減費」と称する“謝礼”が被験者には渡されるのです。
つまり、治験ボランテイアの「数」と負担軽減費の「金額」次第では、まとまった「収入」になるわけです。
著者は、それを行っているわけですね。
だから、「職業治験」というわけです。
本書のプロフィールによると、「莫大な労力と精神力を使い就職した一部上場会社」をささいなことで退社。たった2カ月でやめたそうです。
ではその後は、何で食べてきたかというと、アルバイトなども一切せず、7年間治験者で生計を立ててきたとか。
トータル入院日数365日、採血数900回、日本だけに留まらず海外での治験も数多く体験といいますから、そりや、たしかに「職業治験」といえるだけの実績です。
本書は、治験で食っている人を「プロ治験者」と称し、その職業治験の具体的な内容や体験談などを記しています。
23歳~28歳までに1000万円は稼いだというが……
治験歴7年、トータル入院日数365日、採血数900回、報酬金額1000万円。割がいいのか、悪いのか。治験で1000万円稼いだ男の病的な日々を綴った『職業治験』、読み応えあります。こんな人生もあるんだなぁと。 pic.twitter.com/VxNAtSzggf
— バニコ?? (@BlackBunny_sp51) June 11, 2017
幻冬舎「職業治験 治験で1000万円稼いだ男の病的な日々」八雲星次(著) こういうヤバい人っているんだな。開発段階の訳の分からない新薬を飲みまくり。データをとる為に採血の連続。製薬会社からその見返りとして、お金をもらって生活。21歳から7年、トータル入院期間一年間、総採血回数1000回だって。 pic.twitter.com/FcpS2pERDz
— トラオTORAO(街歩きと読書と映画と洋楽とグルメとYouTu (@tiger_book_man) February 18, 2019
ネットを見ていると、治験モニター募集という広告がよくありますよね。
登録すると、たまに連絡が来ます。
「あー、ああいうので食べていくなら、自分にもできそう」
と、たとえばニートといわれるみなさんは思われますか。
まあ、「十五歳から三十四歳までの、家事・通学・就業をせず、職業訓練も受けていない者」(厚生労働省)と定義されるニートも含めて、誰でもできることは確かです。
しかし、その募集内容を見ると、通常の投薬や貼り薬、飲み薬などが主たる内容であり、その程度では、職業だの治験だのを名乗れるほど多額の「負担軽減費」が入るとは思えません。
もちろん、プロ治験者が参加する治験ボランティアは、そんな生易しいものではありません。
病院に1ヶ月、2ヶ月と長期入院。数えきれないほど採血され、おそらくはレントゲンやCTやMRIなども何度も撮られ、薬も服用する治験で、1回何十万という「負担軽減費」を得るのです。
まあ、レントゲンやCTなどは、別に被曝と言っても、痛みや苦しみはそのときは感じないでしょう。
でも、実際に「痛い」ものもあります。
本書によると、たとえば、骨の再生を早める薬の治験があると、治験者は、実際に何の問題もない自分の骨を折って、その薬の効き具合を確かめるのだ。
それで2ヶ月入院して80万円だって。
う~ん。
それ、折った慰謝料と入院拘束料に加えて、今後予期しないあらゆる後遺症が出ても文句言うなよ、という示談金込みですよね。
それで80万円が妥当かどうか。
どう思われますか。
いずれにしても、プロとして治験で食べていくには、そのようなロットの大きな治験を「核になる収入」にしなければならないのです。
ね、どんなことでも「楽して稼ぐ」なんてないんですよ。
本書によると、著者はそういう治験を繰り返して、23歳~28歳までに1000万円は稼いだといいます。
あ、でもそれは足掛け6年ですからね。
1年の収入とすると少ないですね。
ですから、プロとか職業とかいいますが、結局生活費全額は稼げず、親の扶養家族になっているニートが多いそうです。
えー、それで食えるわけじゃないのか。
会社の煩わしい人間関係も、仕事のノルマもなく、飲酒や喫煙は管理される、その店ではクリーンな日々を送れます。
ただ、治験で身体は痛めつけられるし、募集年齢は若い人が望まれるしで、いずれ引退しなければならない日もやってきます。
さて、この「職業」。どう思われますか。
以上、職業治験 治験で1000万円稼いだ男の病的な日々(八雲星次著、幻冬舎)は、プロとして「治験ボランティア」を繰り返している体験記、でした。