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若年性アルツハイマー認知症に苦悩する主婦を描いた『私がいなくなる』は、なかのゆみさんの『貧困の家 (1)』(ぶんか社)に収載

若年性アルツハイマー認知症に苦悩する主婦を描いた『私がいなくなる』は、なかのゆみさんの『貧困の家 (1)』(ぶんか社)に収載

若年性アルツハイマー認知症に苦悩する主婦を描いた『私がいなくなる』は、なかのゆみさんの『貧困の家 (1)』(ぶんか社)に収載されています。18歳~64歳までに発症するアルツハイマー型の認知症で、患者数は全国で10万人とも推定されています。

若年性アルツハイマー認知症を題材にしているのは、なかのゆみさんの『私がいなくなる』という漫画です。

『貧困の家 (1)』という単行本に収載され、ぶんか社から上梓しています。

ストーリーな女たち、というシリーズ名がついています。

同書は、「貧困」というテーマになっていますが、いじめや難病などをテーマとする物語も含まれており、たんに金銭的なことだけではなく、「心の豊かさ」が欠けた状態、という意味も含まれているように思われます。

目次です。

ということで、「借金」がテーマになったのは、「つぶされた心」ぐらいです。

タイトルに「大借金」とあっても、後半にちょろっと出てくるだけで、「負債」がストーリー全般を覆う展開はありません。

なかのゆみさんといえば、難病シリーズ全17巻の一部をご紹介したように、ある人の不幸をめぐって、周囲の家族や親類はどう向き合うか、というテーマの物語に実績のある方です。

化学物質過敏症の症状や苦悩を漫画化したのは、『難病が教えてくれたこと3~身近な毒物と現代病~2巻』(なかのゆみ)です。
化学物質過敏症の症状や苦悩を漫画化したのは、『難病が教えてくれたこと3~身近な毒物と現代病~2巻』(なかのゆみ)です。併せて、アナフィラキシー症候群、脳脊髄液減少症、食物アレルギーについても漫画化した全17巻の読み物です。
『人間やめますか』(薬物依存症)など、5作の漫画を収載したのが『難病が教えてくれたこと3~身近な毒物と現代病~1巻』です。
『人間やめますか』(薬物依存症)など、5作の漫画を収載したのが『難病が教えてくれたこと3~身近な毒物と現代病~1巻』です。人気レディースコミック雑誌『家庭サスペンス』で連載していた『知られていない難病シリーズ』の電子書籍版です。
『消えた記憶』は、交通事故の後遺症で高次脳機能障害になった夫を妻が支え、夫は障碍を残しながらも新しい職場に社会復帰する話
『消えた記憶』は、交通事故の後遺症で高次脳機能障害になった夫を妻が支え、夫は障碍を残しながらも新しい職場に社会復帰する話です。『難病が教えてくれたこと8~失われてゆく記憶~』(なかのゆみ著、笠倉出版社)に収載されています。

その意味で、今回も『私がいなくなる』をご紹介することにしました。

初出は、『恐怖の快楽』(2002年4月号)です。

本書は2023年2月18日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。

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認知症になっても母親は母親

「お母さん。味噌汁にみそが入ってないよ」

中学生の息子に注意されるお母さん、花坂友子。

最近、物忘れが多くなってきたと自覚しています。

それにしても、味噌汁に味噌が入ってなければ、色や香りでわかるでしょうに。

「今夜は鍋が良いな」とリクエストする夫。

友子は、物忘れの自覚症状があるので、「鍋料理」とメモしています。

息子はカツカレーがいいと言いましたが、それはメモしませんでした。

そして、夫と息子を送り出した後……

「あら、私、なにをするつもりだっけ。今日はお布団ほしちゃおう。あれ、息子は夕食なにがいいって言ってたっけ。まあ、いいか。後で思い出すこともあるし」

パートに出る友子。

「10年間、この会社でパートをしているけど、最近みんなの目が怖い。時々、私がミスしたり、仕事が遅いせいだと思うけど」

「花坂さん。これ、市川の鈴木さんに届けてきてくれないか」

ところが、友子は市川の場所もわからず、鈴木さんも思い出せません。

「もう仕事をするのは、限界かもしれない」

こういうことは初めてではないようで、上司はブチ切れます。

「今までお世話になりました」

10年働いた割には、あっけない最後でした。

もっと早く、自分から退職すべきだったと後悔する友子。

病院では、若年性アルツハイマー認知症と診断されます。

「若くても、病気になってしまう人がいます。今度、ご主人にもきてもらわないと」と医師に言われる友子。

息子がまだ中3なのに、私の脳が壊れていくなんて、いつか自分で自分がわからなくなってしまう日が来る。

私が生きていても、私の人格が消えてしまう。私がいなくなる。

どうしよう。怖いわ。これからどうすればいいの。

友子は、病院の先生から言われたように、名前と情緒をメモ書きし、「私はアルツハイマーです。この住所に連絡してください」と書き添えてかばんの中に入れます。

夕食は、なにを頼まれたのかも忘れてしまいました。

自分でも、どこを歩いているかわかりません。

歩道橋にいる中年男性に尋ねようと思ったところ、その人はそこから飛び降りようとしていました。

必死に止める友子。

「死なせてくれよ。リストラされて1年。どこも雇ってくれないんだ。家のローンや子供の教育費などで、もう借金だらけで。オレが死んだら保険金が入る。それしか方法がないんだ」

死ぬ気なら何でもできる、と諭す友子。

「私も今日、会社クビになったの。今、4万あるわ。奢ってあげる。飲もう」

後で書きますが、ここは私は眉をひそめました。

「そのかわり、私をこの住所まで送って欲しいの。そのお礼よ」

と、先程のメモを差し出します。

「えっ?あんたボケてんのかい?オレより若いのに…」

その日、友子は暴飲します。

そして、気がつくと裸で、その人とベッドをともにしていました。

おっぱいも出しています。

夜の3時。タクシーで帰らなくちゃ、いったい私、なにやってるのかしら。よく覚えてない。

帰ると、夫が寝ずに待っていました。

そりゃそうだよね。

「主婦が、こんな時間までなにしてたんだ」

当然のことながら、咎める夫。

「飯も作らず、冷蔵庫の中には殺虫剤や洗剤なんか入れて、殺す気か」

まあ、それは認知症のなせる過ちですから仕方ないですが……。

息子も出てきます。

「うるさいな。受験生がいるんだぜ。静かにしてよ。落ちたら恨んでやるからな」

パートにいくのに、布団を干してしまったために、夕方からの雨で布団もびしょびしょになってしまいました。

「私、病気なの。病院へ一緒に行ってほしいの」

次の日、医師は夫にも話します。

「家族で、この病気を理解して、支えてください」

「まだ若いのに」と憔悴する夫。

夫は、自分の母親に来てもらうことにしました。

姑は、ここぞとばかりに点数稼ぎ。

ごちそうを作り、息子と孫を喜ばせ、さっそくその夜は、息子に離婚を迫ります。

「このまま治らず死んでいくんだよ、これからたくさんの人に迷惑かけるんだよ」

それは友子に聞こえていました。

友子は、息子の受験が終わるまでは、なにを言われても我慢しようと考えます。

1ヶ月後、息子が高校に合格。

その夜、友子は離婚届を置いて家を出ました。

そして、寝た男に連絡を取ります。

「私のバッグの中に、困ったときは電話しろってメモを入れてくれてありがとう」

「あんたのおかげで、トラックの免許をとることができたよ。借金を返す目標ができて楽しいんだ。命を救ってくれたんだからお礼をしないとね」

「あの夜のこと、あまり私、覚えてないの」

「あんたは酔って、自分で服を脱いで寝ちゃったんだ。本当に何もなかったよ」

「うん、そんな気がしてたわ」

友子は、男に実家の秋田まで送ってもらいます。

「手紙読んだよ、かわいそうに」と実家で出迎える母親。

「ずーっと、ここにいていいからね、一緒に暮らそう」と父親。

一方、卒業式も、入学式も、母親不在の息子は、父親に迫ります。

「どうして、お母さんは帰ってこないの?」

「アルツハイマーなんだよ。ボケてしまって、悪くなるだけなんだ」

2人は友子のタンスから、日記や写真を見ます。

「お父さん見て。赤い丸が食事をした時、青い三角が薬を飲んだ時、黄色はトイレにいく時間なんだ。お母さんは、すごく努力していたんだ。知らなかった」

買い物も、洗濯も、何でも書いてありましたが、だんだんひらがなになっていました。

2人は、友子を迎えに行きました。

「今まで育ててくれた母を、今度はオレが面倒見よう。今まで自分のことばかり考えていたけど、人の気持ちをわかる人間になりたい」という息子のセリフで物語は終わっています。

男と「寝た」ことは隠したままなのか

ラストはいい形で終わってますが、やっぱり認知症よりも、他の男と寝たのが嫌だな(笑)

友子さんはよく覚えていないとか言ってますが、ひとつの布団で寝たことは覚えているくせに、夫には話してないですよね。

これは、夫婦のあり方としてはよくない。隠しているわけだから。

認知症だからと許せることではないと思います。

なにもなかったからいいじゃないか、ということではないのです。

形の良いおっぱいまで見せているんですよ。

私だったら、それだけで気が狂いそうだな(笑)

そもそも、「なにもなかった」ということだって、秋田に行くときに世話になって、そのときに男から言われて、はじめて確認できたことで、もし「一期一会」だったら、その真実を確認できず、「寝た」事実だけは残るわけですよね。

もしかしたら「シたかもしれない」というより、常識的に見て「シた」可能性ありという事実。

たまたま、男がシなかったからよかっただけで、もしシてたら、若年性アルツハイマー認知症の身でありながら、妊婦になってしまうかもしれないわけです。

しかも、父親は夫ではない。

姑じゃないけど、そんなことでは、夫婦生活を続けるのは難しいでしょう。

それというのも、見ず知らずの男と、酒席をともにする、というところから間違っていますよね。

自分が、認知症って診断も受けている「普通ではない身」であることもわかっているわけです。

送っていってもらう「お礼」にごちそうというのが本当なら、友子さんは少なくともアルコールは自重して、家に連絡を入れて事実を話すべきです。

「家がわからなくなった。迎えに来て」

「冗談はやめろ」と言われても……

「いえ、冗談なんかじゃないの。家に帰ったら詳しく話すけど、お医者さんに認知症と診断されたんです。もし、コレないというのなら、今知り合った男性に送ってもらいます。その方には、お礼としてお酒を少しごちそうさせていただくつもり。私も飲むわ」

そこまでいわれたら、普通の夫なら、迎えに来るでしょう。

そこで、「どーぞどーぞ。酒でもなんでもヤッてくれ」というような夫だったら、友子さんが寝ても文句は言えないはずです。

つまり、男とシなかったのは、たんに幸運だっただけであり、認知症問題とは関係なく、もともとこの奥さん、自分に対してユルい人なんじゃないか、という疑惑があります。

どちらかというと、この奥さんとは正反対に、自分を厳格にして追い詰めるほうが、ストレスが溜まって認知症になりそうですが、若年性というのは、老年性の認知症とは発病のきっかけが違うのかもしれませんね。

みなさんは、いかがお思いになりましたか。

以上、若年性アルツハイマー認知症に苦悩する主婦を描いた『私がいなくなる』は、なかのゆみさんの『貧困の家 (1)』(ぶんか社)に収載、でした。


貧困の家 (1) (ストーリーな女たち) – なかのゆみ

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