賢者の書(喜多川泰著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、人間は何度でも生まれ変われると確信できるファンタジー的自己啓発書です。ベストセラー『君と会えたから……』『手紙屋』の著者である喜多川泰さんのデビュー作です。
『賢者の書』は、喜多川泰さんがディスカヴァー・トゥエンティワンから上梓しています。
この記事は、Kindle版をもとにご紹介しています。
本書は、主人公の少年サイードが、おじいちゃんからもらった賢者の書を完成させるために、世界中を旅して9人の賢者の教えをそこに書き記していく物語です。
14歳の誕生日を機にスタートしたさまざまな冒険譚と、賢者たちから学んだ最高の賢者となるために必要なエッセンスがしるされています。
9人の賢者は、それそれ違った観点から人生を成功に導くために重要なことを教えてくれます。
本書は2023年1月28日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
人生観を8回見直した末に……
毎日の生活が思うようにならないアレックスは、ある日、子供の頃遊んでいた公園で、14歳の少年サイードと出会います。
サイードは、9人の賢者と出会う冒険の旅を続けていて、この公園で最後の賢者と会うことになっているというのです。
そして、旅を通じてまとめた『「賢者の書」』を最後の賢人が読んで、人々を幸せに導くことができると認めてくれた時、修行の旅は終わるのだと言います。
アレックスは、サイードの許しを得て、サイードの旅の集大成である『賢者の書』を読み始めました。
そこには、最後の賢者からの学びを残し、8人の賢者からの学びがまとめられていました。
内容は、サイードが14歳の誕生日を機にスタートしたさまざまな冒険の物語と、賢者たちから学んだ最高の賢者となるために、必要なエッセンスが書かれていました。
本書は、そんな生きる気力が蘇ってくるようなファンタジー的自己啓発書籍なのです。
出会う賢者ごとに、キーワードがあります。
- 第一の賢者の教え「行動」
- 第二の賢者の教え「可能性」
- 第三の賢者の教え「自尊心と他尊心」
- 第四の賢者の教え「目標」
- 第五の賢者の教え「今」
- 第六の賢者の教え「投資」
- 第七の賢者の教え「幸福」
- 第八の賢者の教え「言葉」
行動の結果として我々が手に入れるものは、成功でもなければ、失敗でもない。 我々が手にするものは、一枚の絵を完成させるために必要不可欠な、パズルのひとピース。
大切なのは、必要なピースを集めるためにできるだけ多くの行動を起こすこと、そして、行動の結果返ってきたものをよく見て、どうやってこれを使うのかを考えることだ。
人間には無限の可能性がある
不可能と思えるようなビジョンを実現する無限の可能性が自分にもあるということを正しく自覚することが、人生の成功につながる。
自らの人生を素晴らしいものにするためには、これ以上ないほど自尊心を高めなければならない。 自分がかけがえのない存在であり、無限の可能性を持った唯一無二の存在であると、絶えず自らに言い聞かせる必要がある。
それと同時に、自尊心と同じ高さにまで、他者を尊ぶ他尊心も高める必要がある。
人生における成功を、何になるかに求める人は多いが、これになれたら成功、幸せなどという職業は存在しない。 なぜなら、成功は職業についてくるものではなく、人についてくるものだからだ。
まず真剣に考えなければならないのは、どんな人間になりたいのかである。
人生というのは、一冊の伝記を完成させるようなものだ。そして、人生を成功に導くために今日一日のできることはただ一つ。
今日一日、成功者としてふさわしい過ごし方をするだけだ。
世の中の成功者と呼ばれる人のほとんどが、無一文からスタートして巨万の富を築き上げている。
ただし、彼らが投資したのは決して「金」ではない。 「自らの人生という貴重な財産」を、「時間という財産」を投資したのだ。
人間は何を探して生きるかという点において、2つに大別される。
ひとつは、自分を幸せにすることを探す人々。 もうひとつは、他人を幸せにすることを探す人々。 どちらを考えるかによって、自分の所属するオアシスが決まる。
世の中の成功者はすべて西のオアシスの住人。ただし、頭ではいいことだとわかっていても、なかなか行動できるものではない。
人生は、言葉によってつくられている。
その人に起こるすべての出来事は、その人が発したり、心の中で思い描いたりする言葉に起因する当然の結果に過ぎない。 そして人間が一番よく聞くのは、他の誰でもない自分の心の言葉である。
詳細を書いてしまうとネタバレになっしまうのですが、まあ、このキーワードをご覧になっただけでも、おおよそのことはわかるかもしれませんね。
ファンタジーなストーリーなので、これこれこうしなさい、と押し付けているわけではないのですが、物語を通してポイントとなる「教え」は、
- 自らの人生の時間という財産を投資する
- 自尊と同じぐらい他尊の精神も必要である
- 何になりたいかよりもどうなりたいかだ
- 人生は自分の心の中の言葉を聞く、つまり自分の言葉で人生は作られる
- 人間は何度だって生まれ変わることができる
といったところだろうと思います。
「自尊と同じぐらい他尊の精神も必要である」ですが、『他人の不幸を願う人』(片田珠美著、中央公論新社)なども併せて読まれるといいでしょう。
他人の不幸が「蜜」どころか、「主食」になった理由とその欲望の先に迫る興味深い書籍です。
歳を取ってからでも間に合う理由
まあ、「人間は何度だって生まれ変わることができる」とはいうものの、人生の時間は有限ですから、歳を取った人がこれを読んでも、ありがたみは減ってしまうと思われるかもしれません(笑)
生き方、考え方を変えても、今更定年すぎた年齢で、働くところはどこもないし、体力もないし、てなもんでね。
でも、それはまた、ゼロから人生をやり直そうと思うからなんで、私が読んだところでは、本書の眼目は少し違うと思うんです。
たとえばですよ、70歳の人が読んだとしましょう。
それまでの69年間が不遇だったとしても、そこから人生リセットしろ、ということではないのです。
その69年間のあれこれは、これからの新しい人生のためのピースにすぎない、というふうに発想を転換するための書籍ではないかなと思います。
だとすれば、70歳がスタートではなく、これまでの人生の経験に加上する形で、全体としての人生を完成していけばいいのです。
もちろん、ではどうすればいいのか、というのは人によって違いますし、なかなか実践はむずかしいかもしれまん。
でもとにかく、「今まで不遇だったから、もう人生だめだ」ではなく、今までを生かした人生の「やり直し」を提唱しているのではないかと思います。
いずれにしても、人生が順風満帆で完全に満足できる、という人はたぶんいないと思います。
「自分の人生これで良かったのだろうか」「自分は一体なにをしているんだろうか」なんて考えることってありません。
そんなときに、心の整理と、これからの道筋を掃き清める意欲のために、本書は参考になるかもしれません。
以上、賢者の書(喜多川泰著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、人間は何度でも生まれ変われると確信できるファンタジー的自己啓発書、でした。