邪道(土山しげる著、日本文芸社)は、人生を双六にたとえて、ラーメン業界から政界に進出を試みる青年の野望を描いた漫画です。名門大学で卒業間近だったのに、あっさり中退してしまうのは、ホリエモンなど起業家の意識した設定でしょうか。
『邪道』は、土山しげるさんが日本文芸社から上梓した漫画です。
全4巻完結です。
土山しげるさんの作品は、原作がある場合とストーリー含めて単独作品とがありますが、今回は後者です。
この記事は、Kindle版をもとにご紹介しています。
名門大学で、ボードゲーム(すごろく)愛好会の5人は、どうやらゲームを双六だけでなく自らの人生まで投影させたくなり、一流企業の就職先内定までフイにして大学を中退。
それぞれ、学歴に全く関係なさそうな業界の下働きに潜り込み、そこから天下を取ることを近いあいます。
勉強が出来すぎて、人生が退屈になってしまったのかもしれませんね。
主人公の兵藤新介は、元ヤンが一代で成功したラーメン店のスタッフからその実権を握り、さらに国会議員に立候補。
もうちょっとで、実業家と政治家として日本を動かせる「あがり」まで来ましたが……。
どうなんでしょう。
現代は、ホリエモンのように、東京大学を中退して起業する人もいますから、本作のような若者はいるのかもしれませんね。
でも、もし私がその立場であったとしたら、一流企業内定をけるのはともかくとして、せっかくだから大学の卒業だけはしておくと思いますけどね。
どんな人生になるかわかりませんが、卒業証書が役に立つことがあるかもしれないし、1ヶ月や2ヶ月で中退したのならともかく、就職内定までもらっているということは、もう卒業間近だったわけですよね。
いや、それですと、3年数ヶ月がもったいないですよ。
私は学生時代、ゼミの先生と合わなかったのですが、卒業のために我慢我慢と思ってましたからね。
ま、漫画だから、そんなに熱くならなくてもいいかな(笑)
本書は2023年5月5日現在、KindleUnlimitedの読み放題リストに含まれています。
人生双六はゴール寸前まで行くが……
名門帝都大学のボードゲーム(双六)愛好会の5人は、人生設計をすごろくに例えて、それぞれ大学を中退して諸分野の下働きから天下を取る約束をしました。
その中のひとり、主人公の兵藤新介は、元ヤンキー・上条竜也が一代で巨万の財を成した超人気ラーメン店・麺処天守閣のスタッフに応募。
上条竜也の突然の事故死でスタッフが抜けた混乱の時期で、大学の経営学中退の兵藤新介、ラーメン屋の跡取り息子・勝部、会社をリストラされた沢田の三人が採用されます。
その中で、志麻子夫人にも気に入られ、すぐに頭角を現したのは兵藤新介でした。
高校中退のヤンキーにはない、経営学の知識を実践に活かし、4店のうちの2店を任されるまでに昇進。
その後、いったんは失脚したかに見えましたが、ハプニングでまた復活。
天守閣の実権を握り、先輩の店長らや同期の2人も粛清。
ブラック企業と呼ばれながらも店を大きくして先代以上の成功を収めます。
そして、政権党から国会議員に担ぐ話が。
事業家と政治家で、政財界の実力者となり、人生双六はゴールできるものと思っていましたが、身内を過労死させられた婦人が短剣を持って……。
双六にたとえて、ラーメン業界を制覇すべく乗り込んだ青年のピカレスクラーメン道です。
麺処天守閣で、少しずつ力を付けるところは丁寧に描けていますが、いったん失脚後に復帰してからは駆け足で、他のライバルたちの粛清の経過がほとんど描かれていませんし、志麻子夫人の引退もあったりしたもの。
あっという間に国会議員に立候補することになっており、終盤はかなり駆け足です。
どうしたんでしょう。連載の打ち切りが決まって、予め決めていたストーリーを残った期間で慌てて詰め込んだのでしょうか。
そこがちょっと残念ですね。
食べ物だけでなく実業界の「闇」や「裏」もテーマに
土山しげるさん(1950年2月20日~2018年5月24日)は、生前からファンが多かったので、KindleUnlimitedの読み放題リストにはたくさんの作品が公開され、またこのブログでも多くをご紹介してきました。
『食キング』(日本文芸社)は、「B級グルメ店復活請負人」の主人公が、傾いた庶民向け飲食店を再建するストーリーです。
私は土山しげるさんというと、まず『食キング』が思い浮かびます。
『漫画版野武士のグルメ カラー版1st01』(久住昌之/原作、幻冬舎)は、定年を迎えた還暦男性がありふれた食堂を巡るストーリーです。
『男麺』(ゴマブックス)は、商社に勤める無類の麺好き主人公が、立ち食いそばや町中華の焼きそばなどで騒動を解決する話です。
『喰王スペシャル』(日本文芸社)は、食べることが好きなキャバクラ店長が、食べ物で問題を解決する日常を描く漫画です。
『シャケ』 (原作/津流木詞朗、ナンバーナイン) は、肩を壊したドラ1投手とブルペン捕手が球界の事件を解決します。
『どぶ』(日本文芸社)は、会社を謀議でリストラされた主人公が、風俗業界で失敗しながらものし上がる話です。
『蛮王(バンキング)』(漫画/土山しげる、原作/平井りゅうじ、ゴマブックス)は、家族を奪われた銀行員の復讐を描く社会派漫画です。
食べ物がテーマであることは多いのですが、必ずしもそれだけではなく、実業界の「裏」や「闇」をもテーマにしています。
どの作品も面白いので、ご一読をおすすめします。
以上、邪道(土山しげる著、日本文芸社)は、人生を双六にたとえて、ラーメン業界から政界に進出を試みる青年の野望を描いた漫画、でした。