食品の裏側ーみんな大好きな食品添加物(安部司著、東洋経済新報社)は、私たちの食卓にのぼる食品添加物がどう使われているかを解説している書籍です。著者は、食品添加物を全否定はしていませんが、添加物依存による「食文化の破壊」を心配しています。
『食品の裏側ーみんな大好きな食品添加物』は、安部司さんが東洋経済新報社から上梓したベストセラーです。
2005年に出版され、売上70万部を突破したかなり有名な書籍ですが、第26刷にもとづいて制作されたKindle版が読み放題リストに入ったので、改めて読んでみました。
安部司さんは、食品添加物評論家として、書籍を上梓したり講演活動を行ったりしています。
もともと山口大学で化学を専攻。
卒業後は総合商社の食品課に勤め、食品添加物のセールスマンをつとめていたそうです。
当時は、どの食品添加物をどう使えば、食材を商品として効率よく使えるようになるかを、メーカーにアドバイスして売上を伸ばしていたそうです。
が、あるとき、自分が添加物を指南したミートボールを我が子が食べていたことで、自分の子供たちに食べさせたくないものを自分が作っていたということに初めて気がつき、「売る側」としてだけでなく「消費者」としての立場を考えるようになり、トップセールスマンでありながら退社。
以後は、食品添加物の現状、添加物依存による「食文化の破壊」を唱える評論活動を行っているとのことです。
といっても、食品添加物をまるごと否定はしていません。
保存性やコストなどの合理性は認めています。
ただ、ほとんどの人は、自分が食べている食品が、どのように作られているか知りません。
メーカーによる添加物の使い方も知らずに、なんでもかんでも安くて見栄えが良ければいいとしている消費者の考え方は、食文化の崩壊につながると警鐘を乱打しているのです。
本書では、食品メーカーが、本来使い物にならない材料を、食品添加物を使って見栄えのいい商品にしあげていくの“手口”を次々に暴露しています。
著者は、自らを、食品の裏側を知る「生き証人」と述べています。
「魔法の粉」の光と影
安部司さん曰く、食品添加物は「魔法の粉」だそうです。
何しろ、食品添加物を使うことで、
- 食品を長持ちさせる
- 色形を美しく仕上げる
- 品質を向上させる
- 味をよくする
- コストを下げる
といったことが、面倒な工程・技術など不要で、一定の品質のものが簡単に実現するといいます。
安部司さんは、それらを食品添加物の「光」の部分といいます。
しかし、コインにも裏表があり、光には影がつきものです。
便利なものを使うのなら、その影の部分も引き受けなければいけないといいます。
それは、以下の様なことです。
- 人体への害悪・毒性
- それ以上に恐ろしいこととして、添加物が食卓を崩壊させる
食品添加物は、厚生労働省が許可していますが、どのように認可されているのか、多くの消費者はご存知ないかも知れません。
厚生労働省は、ひとつひとつ毒性のテストをして認可しています。
しかし、それですと、10種類もの「魔法の粉」で作られる明太子は、「添加物の複合摂取」が行われているわけですが、それによる毒性は、ひとつひとつの毒性だけを見ていてもわかりません。
そもそも、添加物の毒性や発がん性のテストは、ネズミを使ったもの。
疫学調査は、動物実験や試験管のテストで結果を出しても「話半分」に扱われ、ヒトを対象とした前向き調査を、その分野で査読が厳しい専門雑誌に晒されてやっと科学的・医学的に評価されます。
ところが、私たちが日常的に口にする食品の安全性は、動物実験だけというのは変な話です。
食品だって、私たちの健康に影響を与えているのではないでしょうか。
それでも、人体実験ができない以上、ネズミをもとにするしかない、と安部司さんは述べています。
要するに、国の基準だからといって完全に信頼できるものではない、ということなのです。
食品添加物は加工食品にこんなふうに使われている
では、具体的に食品添加物はどう使われているのか。
本書のキモの部分なので詳細はお読みいただくとして、一部をご紹介しましょう。
明太子と無着色たらこ
明太子のおおもとは、色の悪い低級品。
それが添加物の液に一晩つけるだけで、たちまち透き通って赤ちゃんのようなつやつや肌で、身も引き締まった硬いたらこになるといいます。
そのための添加物は、リン酸塩、亜硝酸、有機酸塩など。
安部司さんは、無添加明太子と、一般の明太子の添加物の違いを表示しています。
ここでは、材料名を引用します。
無添加明太子……スケソウダラの卵巣、自然海塩、純米みりん、純米酒、丸大豆醤油、昆布だし、かつおだし、水飴、唐辛子。
純米酒以降が、明太子に仕上げる材料です。
一般の明太子……スケソウダラの卵巣、食塩、合成着色料、ポリリン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、ニコチン酸アミド、亜硝酸ナトリウム、ソルビット、リンゴ酸ナトリウム、ミョウバン、乳酸カルシウム、酢酸ナトリウム、GDL、グリチルリチン、ステビオサイド、グルタミン酸ナトリウム、5′-リボヌクレオチドナトリウム、たんぱく加水分解物、アミノ酸液、ソルビトール、発酵調味料、唐辛子。
グルタミン酸ナトリウム以降が、明太子に仕上げる材料です。
たくさんの食品添加物を使っていることがわかります。
合成着色料なんて、いかにも不健康そうですね。
では、スーパーで売られている「無着色たらこ」にすればいいのか。
いいえ、それは合成着色料が使われていないだけで、ほかの添加物は使われています。
私がとくに気になるのは、「着色料」ではなく「発色剤」の亜硝酸ナトリウムです。
亜硝酸ナトリウムは、毒性が強いことで知られています。
食肉に含まれるアミンという物質と結びつくと、ニトロソアミン類という発がん性物質に変化するといわれています。
「無着色だから体に良い」などと誤解して「無着色たらこ」を買うのは、メーカーの思うツボと安部司さんは警告しています。
特売しょうゆのウラ
安部司さんは、スーパーで売られている特売しょうゆも解説しています。
昔ながらのしょうゆの原材料は、こうじから作られた酵素が、大豆や小麦のたんぱく質をアミノ酸に、でんぷんを糖分に変えます。
それが醤油の旨味と安部司さんいいます。
それが出来上がるには1年以上の月日が必要。
そこで、もっと早く、コストを掛けずに作られたものが、スーパーで安売りされるしょうゆ。
特売しょうゆは「しょうゆ風調味料」と、安部司さんはいいます。
しょうゆのうまみの素であるアミノ酸は、時間をかけて発酵させなくても、油を取ったしぼりかすの脱脂加工大豆を塩酸で分解。
それだけですと、しょうゆらしい味と香りが出ないので、添加物を使うといいます。
丸大豆しょうゆ……丸大豆、小麦、食塩。
新式醸造しょうゆ(特売しょうゆ)……脱脂加工大豆、アミノ酸液、ぶどう糖果糖液糖、グルタミン酸ナトリウム、5′-リボヌクレオチドナトリウム、グリシン、甘草、ステビア、サッカリンナトリウム、CMC-Na(増粘多糖類)、カラメル色素、乳酸、コハク酸、安息香酸メチル。
というように、各食品にはどんな食品添加物を、どういう目的で使っているか、ということを安部司さんは本書で解説しています。
まずは知ることが重要
安部司さんは言います。
どんな食品を選び、口にするかは私たち消費者です。
「そんなふうにつくられているなら、食べたくない」
「高いお金を出しても、無添加のものがいい」
「安全性も大事だけど、やっぱり安い方がいい」
「そもそも添加物に関心がないし、気にしない」
などなど、どう考えるかは消費者の自由です。
ただ、そのためにはまず事実を知ること。
そうでなければ、判断のしようがないのです。
にもかかわらず、現状では何も知らされていない。
ですから、まずは知ることが重要。
その上で、食品に対してどう向きあつていくかは、自分自身で判断すればいい、といいます。
みなさんも、本書を読んで知ってみませんか。
以上、食品の裏側ーみんな大好きな食品添加物(安部司著、東洋経済新報社)は、私たちの食卓にのぼる食品添加物がどう使われているかを解説、でした。